フォレンジック(デジタル・フォレンジック)は法医学の一分野です。これはサイバー犯罪の捜査に使用されますが、刑事捜査や民事捜査にも役立ちます。
近年、サイバー攻撃の増加、事件や各期間の不正、芸能人のスキャンダルなどの報道の影響で耳にする機会が増えていると思います。こちらの記事では、そのフォレンジック(デジタル・フォレンジック)について解説します。
不正アクセスや情報漏えい、社内不正などで法的責任が問われる可能性がある場合、証拠保全や初動対応を誤ると、企業側の不利な結果を招くおそれがあります。フォレンジック調査の必要性を感じている法人様は、できるだけ早くフォレンジック調査の専門会社にご相談ください。
目次
フォレンジック(forensic)とは?
フォレンジック(forensic)とは、コンピューターやネットワーク内の情報を収集し、犯罪の法的な証拠を見つけるための調査です。
フォレンジック(forensic)の意味と語源
「フォレンジック(forensic)」は英語で「法廷の」「法的な」という意味を持ち、その語源はラテン語の「forum(フォーラム/公共の場)」にあります。もともとは古代ローマで裁判が行われていた場所を指し、現代では「裁判で使われる証拠」や「司法に関わる調査・分析技術」を意味するようになりました。
フォレンジックとは?わかりやすく解説
日本語では「フォレンジック」または「フォレンジックス」と表記されることがありますが、どちらも意味は同じです。ITやセキュリティの分野では、コンピュータやスマートフォンなどのデジタル機器に残されたデータを調査・解析し、法的な証拠として活用できる形に整える技術を指します。
この技術は、企業内での不正や情報漏えい、サイバー攻撃といったトラブルの原因を明らかにし、再発防止や訴訟対応に活かされる重要な手段として注目されています。
フォレンジックが注目される背景と社会的役割
近年、サイバー攻撃の手口が巧妙化・高度化しており、企業や自治体、医療機関などに深刻な被害をもたらすケースが急増しています。これに伴い、「何が起きたのかを明らかにする能力=事後対応力」が求められるようになりました。
フォレンジックは、単なる技術ではなく「証拠をもとに事実を明らかにする調査手段」として、社会的な役割を担うようになっています。たとえば、情報漏えいが起きた際にその原因を正確に把握し、責任の所在を明らかにすることは、企業の信頼を守るうえでも不可欠です。
フォレンジックはセキュリティ事故後の真相究明だけでなく、今後の対策設計や社内の再発防止体制の構築にも欠かせないプロセスとなっており、企業のリスクマネジメントにおいて重要な役割を果たします。
フォレンジックの実際の利用シーン(社内不正、情報漏えい、事故調査)
デジタルフォレンジックは、日常的に起こりうるさまざまな情報セキュリティインシデントに対して有効に機能します。たとえば、社内での従業員による機密情報の持ち出しや、顧客データの外部漏えい、未知のマルウェア感染などが起きた際、どのような経路で、誰が関与し、どんな被害が発生したのかを正確に突き止めることができます。
こうした事実確認に基づいて、被害の拡大防止や法的責任の追及、さらには今後のセキュリティ体制強化にもつながる施策を立てることが可能になります。
実際の利用例としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 社内での従業員による情報持ち出しの調査
- ランサムウェア攻撃後の原因究明
- 訴訟や調停に向けた証拠資料の収集
不正調査の詳細については、こちらの記事をご覧ください。

フォレンジックの主な種類
フォレンジックには、主に下記のような種類があります。
ファストフォレンジック
ファストフォレンジックとは、セキュリティインシデントが発生した直後の初動対応として、迅速かつ簡易的に行うフォレンジック調査のことです。通常のフォレンジックに比べてスピード重視で実施され、現場の状況把握や証拠の一次取得、被害範囲の推定などを短時間で行います。
限られた時間とリソースの中で、後続の本格調査や復旧方針に役立つ最低限の情報を得る目的で活用され、特にインシデント対応体制の一部として注目されています。
ファストフォレンジックの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

ネットワークフォレンジック
ネットワークフォレンジックとは、ネットワーク上の通信データを収集・解析し、サイバー攻撃の痕跡や情報漏えいの経路を明らかにする技術です。パケットキャプチャやログの解析を通じて、不正アクセスの証拠やデータ送信の履歴を特定します。
特に、侵入経路の特定やマルウェアの通信先の検出などに活用され、企業のインシデント対応や訴訟対策において欠かせない調査手法のひとつとされています。
ネットワークフォレンジックの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

メモリフォレンジック
メモリフォレンジックとは、PCやサーバーの「揮発性メモリ(RAM)」上に残された情報を解析する手法です。通常、電源を切ると消えてしまうこのメモリ内のデータには、実行中のプログラムや通信の履歴、ログイン情報、暗号鍵などが含まれることがあり、貴重な証拠となります。
特にマルウェアの挙動や常駐型の不正プログラムを追跡する際に効果的で、一般的なストレージ解析では得られない「リアルタイムの動き」を補足できる重要な手法として注目されています。
メモリフォレンジックの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

コンピュータフォレンジック
コンピュータフォレンジックとは、パソコンやサーバーなどの記憶媒体(HDD、SSDなど)に保存されたデータを対象に、削除されたファイルの復元やアクセス履歴の調査、操作ログの解析などを行い、証拠となる情報を抽出・保存する手法です。
使用されたアプリケーション、操作日時、ファイルの移動や改ざんなどを時系列で再構築し、不正行為の有無やその経緯を明らかにするために用いられます。特に社内の不正調査や情報漏えいの調査などで活躍する基本的かつ重要な技術です。
コンピュータフォレンジックの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

モバイルフォレンジック
モバイルフォレンジックとは、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末からデータを抽出・解析し、不正アクセスや情報漏えいの証拠を明らかにする手法です。
スマホには、通話履歴、SMS、LINE、メール、写真、位置情報など、プライベートかつ詳細な行動履歴が蓄積されています。これらのデータを復元・分析することで、社内不正や詐欺行為、情報漏えいなどの真相究明に役立ちます。
また、削除されたデータの復元や、暗号化されたアプリ内情報の解析など、専門技術を要する調査が多いため、モバイル機器特有のノウハウが求められる分野です。
モバイルフォレンジックの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

フォレンジックの主な調査対象機器
フォレンジック調査は、単に「どんな手法で調べるか」だけでなく、「どこを対象に調べるか」も非常に重要です。近年のIT環境は多様化しており、証拠が残る場所も多岐にわたっています。
具体的には、以下のような対象が主に調査の焦点となります。
- PCやノートパソコン:業務で使用される端末には、ファイル操作履歴やアプリ利用ログ、USB接続履歴など、重要な証拠が多数残ります。
- スマートフォンやタブレット:通話記録、メッセージアプリ、位置情報、アプリ内データなど、個人と業務の両方に関わる情報源です。
- ネットワークログ:ルーターやスイッチの通信ログ、ファイアウォールの記録から、不審な通信や外部とのやり取りを把握します。
- クラウドサービス:Google WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウド利用履歴も調査対象になります。クラウドにアップロードされたファイルや共有履歴なども追跡が可能です。
これらの対象を総合的に分析することで、事件やトラブルの真相解明につながる重要な手がかりを得ることができます。
フォレンジック調査が必要になる主なインシデント事例
フォレンジック調査では、情報セキュリティ上の問題を引き起こすさまざまな行為を対象に、証拠の収集と原因の特定を行います。以下は代表的な調査対象の例です。
不正アクセスや情報漏えい
外部からのサイバー攻撃や内部の設定ミス、脆弱性を突かれた侵入などが原因で、機密情報が流出してしまうケースがあります。フォレンジックでは、アクセスログ、通信履歴、デバイス利用履歴などをもとに、不正アクセスの経路や漏えい範囲を明らかにします。結果として、再発防止のための具体的な対策立案にもつながります。
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内部不正や従業員による持ち出し
内部関係者による情報の不正取得・持ち出しは、組織にとって深刻なリスクです。フォレンジック調査では、USB使用履歴、メール送信ログ、ファイル操作履歴、外部ストレージの接続記録などを解析し、証拠を収集。誰が・いつ・どのデータにアクセスし、どのように持ち出したのかを時系列で再構成します。
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ランサムウェアなどマルウェア感染の解析
ランサムウェアやトロイの木馬などのマルウェアが端末に侵入した際は、被害状況を正確に把握することが重要です。フォレンジックでは、感染経路の特定や、暗号化されたファイルの範囲、C2サーバーとの通信履歴などを解析し、今後のセキュリティ対策に活用できる実態調査を行います。
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もしも今、情報漏えいや社内不正、マルウェア感染などに心当たりがあるなら、フォレンジック専門業者に相談することを強くおすすめします。
なぜなら、こうした事案は単なるトラブルにとどまらず、法的責任・損害賠償・信用失墜につながる重大なリスクをはらんでおり、調査の進め方ひとつで結果が大きく変わるからです。
第三者による中立かつ専門的な調査でなければ、証拠の信頼性が保てず、裁判や警察対応において証拠能力を否定される可能性もあります。逆に、初期対応で証拠を正しく保全できていれば、加害者の特定、被害範囲の明確化、再発防止までつなげることが可能です。
デジタルデータフォレンジックでは、相談から初期診断・お見積りまで24時間365日体制で無料でご案内しています
よくある質問
セキュリティ診断は、システムに脆弱性や問題点が存在しないかを事前にチェックする「予防的な施策」です。一方でフォレンジックは、実際にトラブルや事件が発生した後に、「何が起こったのか」を証拠に基づいて解明する「事後対応」の調査です。
つまり、セキュリティ診断は「起きないようにする」、フォレンジックは「起きたことを明らかにする」という違いがあります。
対応内容・期間などにより変動いたします。
詳細なお見積もりについてはお気軽にお問い合わせください。
専門のアドバイザーがお客様の状況を伺い、概算の見積りと納期をお伝えいたします。
可能です。当社は特定の休業日はございません。緊急度の高い場合も迅速に対応できるように、365日年中無休で対応いたしますので、土日祝日でもご相談下さい。調査結果についても法的効力のある証拠データをご納品いたします。
もちろん可能です。お客様の重要なデータをお取り扱いするにあたり、当社では機密保持誓約書ををお渡しし、機器やデータの取り扱いについても徹底管理を行っております。また当社では、プライバシーの保護を最優先に考えており、情報セキュリティの国際規格(ISO24001)およびPマークも取得しています。法人様、個人様に関わらず、匿名での相談も受け付けておりますので、安心してご相談ください。
まとめ
フォレンジック(デジタル・フォレンジック)は、単なる技術や専門的な調査手法ではありません。それは「なぜ事件が起きたのか」「誰が関与していたのか」「どのような影響が出たのか」といった証拠を「真実」に基づいて明らかにする、現代の組織にとって不可欠なリスク対応の中核です。
これからの社会においては、サイバー攻撃や内部不正のリスクがなくなることはありません。むしろ技術の進化とともに、その手口はより複雑化し、発覚しづらくなっていきます。
だからこそ、トラブルが起きた「その後」にどう向き合うかが企業の信頼と持続性を左右します。フォレンジックは、そんな「もしもの時」に備え、被害の最小化と再発防止を支える力です。
いま必要なのは、「起きないようにする」だけでなく、「起きたときにどう動けるか」を整えておくこと。その第一歩として、フォレンジックという選択肢を知っておくことが、これからの企業に求められる新しい常識です。