近年、USBメモリやクラウド、私用メールを使った退職者によるデータ持ち出しが多発しています。データ持ち出しの行為を放置すれば、企業の機密情報や顧客データが外部に漏れ、重大な情報漏洩リスクを引き起こすだけでなく、信用失墜や経営への深刻な影響にもつながりかねません。
本記事では、実際の調査事例を交えながら、データ持ち出しが発覚した際の対応手順と、よくある動機や端末別の持ち出し傾向について、わかりやすく解説します。
退職者によるデータ持ち出しの疑いがある場合は、事実関係を正確に調査するためにも、データの持ち出し調査の専門会社へ早めに相談することをおすすめします。
目次
退職者によるデータ持ち出しの動機
退職者が企業の情報を持ち出す背景には、さまざまな動機があります。以下に代表的なケースを紹介します。
- 転職先や競合他社で自分の価値を高めたい
現職で得た技術情報や顧客リストを「手土産」として持ち出し、転職先での待遇や評価を有利にしようとするケースです。
- 独立・起業のために活用したい
同業種での起業や事業立ち上げを目的に、営業秘密やノウハウを社外に持ち出すケースです。
- 情報の販売や不正利用
持ち出した情報を第三者に売却したり、不正な目的で利用する悪質なケースです。 - 個人的な勉強や資料としての持ち出し
今後の参考やスキルアップの目的で情報を保存することがありますが、企業にとっては重大なリスクです。
- 過失による持ち出し
故意ではなく、私物と一緒に社内データを誤って持ち出したり、管理体制の甘さによって情報が漏れることもあります。
こうした動機に基づく情報持ち出しは、企業の競争力低下・損害賠償リスク・社会的信用の失墜といった深刻な被害につながる恐れがあります。早期の対策と従業員への情報管理教育が不可欠です。
なお、転職先に顧客情報が持ち出された場合の具体的な対応方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

退職者によるデータ持ち出しが企業に与えるリスク
退職者が持ち出す情報は、技術資料・顧客リスト・営業秘密など多岐にわたり、企業が事前に想定していない方法で漏洩するケースも少なくありません。
以下には、情報持ち出しによって企業が被る可能性のある主なリスクを紹介します。
- 機密情報・ノウハウの流出
技術情報や顧客リストなどが競合他社に渡ることで、競争優位性が失われ、市場シェアや利益が減少するリスクがあります。 - 顧客情報・個人情報の漏洩
大規模な流出は損害賠償請求や集団訴訟を招き、企業に多大な金銭的負担をもたらします。 - 法令違反
個人情報保護法や不正競争防止法に違反すれば、企業や経営者が刑事罰や行政処分を受け、罰金や懲役が科されることもあります。 - 顧客・取引先の流出
信頼低下により既存顧客や取引先が離れ、売上減少や契約解除につながる恐れがあります。 - 企業イメージ・信用の失墜
情報漏洩が公になると、ブランド価値が損なわれ、新規取引や採用にも影響を及ぼします。 - 業務の中断・停止・倒産
機密情報が業務の中核に関わる場合、業務停止や営業不能となる可能性も。信用失墜・損害賠償・顧客離脱が重なれば、企業存続が脅かされるケースも現実に発生しています。
実際の退職者による情報持ち出し事例3選
実際に発生した代表的な情報持ち出し事件を紹介します。いずれも不正競争防止法違反で立件・有罪判決となった事例です。
- ソフトバンク・楽天モバイル事件
元社員が5Gに関する営業秘密を私用メールで送信し、転職先に持ち出した事案。有罪判決(懲役2年・執行猶予4年・罰金100万円)。 - 積水化学事件
元社員が中国企業に技術情報を3度にわたり漏洩。損害や報酬は確認されなかったが、懲役2年・執行猶予4年・罰金100万円の判決。 - はま寿司・かっぱ寿司事件
はま寿司の元役員が商品原価等の営業秘密を不正取得し、かっぱ寿司へ転職。有罪判決(懲役3年・執行猶予4年・罰金200万円)。
このように、退職者による情報持ち出しは、深刻な経営リスクにつながる可能性があるので、データ持ち出しの疑いがある場合は、事実関係を正確に調査するためにも、データの持ち出し調査の専門会社へ早めに相談することをおすすめします。
退職者によるデータ持ち出し発覚時の対応フロー
退職者による情報持ち出しが発覚した場合、まず行うべきは被害の全体像を正確に把握することです。何が、いつ、どのように持ち出されたのかを明らかにし、法的・社内的に適切な対応を進めていく必要があります。
①情報漏えいの事実確認と持ち出されたデータの特定
退職者による情報持ち出しが発覚した場合は、まず漏えいした情報の種類や範囲を正確に把握することが重要です。将来的に法的措置を検討する場合でも、事実関係と持ち出されたデータの特定が、適切な対応の出発点となります。
また、調査会社へ正式に依頼する前に、証拠となるデータを誤って上書き・削除してしまうと、調査自体が不可能になる恐れもあります。調査前に「やってはいけない行動」を把握しておくことが非常に重要です。
② フォレンジック調査によるデータ保全と解析
フォレンジック調査とは、デジタル機器に残されたログや操作履歴を専門技術で解析し、不正アクセスや情報持ち出しの経路を科学的に特定する調査手法です。
のちに詳しく解説しますが、調査では、端末の初期化や上書きが行われる前に、HDDや記録デバイスの複製(イメージ保全)を実施し、証拠となるデータを正確に保全します。その後、削除されたファイルの復元や操作ログの解析を通じて、情報漏えいや不正の有無、持ち出しの経路などを客観的に明らかにします。
これにより、損害賠償請求や刑事・民事の法的対応にも活用できる証拠資料を取得することが可能です。
③ 内容証明郵便による警告と通知
持ち出しの事実が確認された場合は、内容証明郵便を用いて損害賠償請求や刑事告訴の意思を正式に通知することが効果的です。転職先企業や身元保証人にも送付を検討し、必要に応じて警察・監督官庁・IPA・取引先など、関係機関への報告も行うべきです。
通知文は、社内規程に沿い、フォレンジック調査結果などの客観的な根拠をもとに作成することで、法的効力や説得力が高まります。
④ 損害賠償請求をおこなう
企業は、不正行為によって損害を受けた場合、退職者に対して損害賠償請求を行うことが可能です。ただし、請求には適切な証拠と論理的な立証が不可欠であり、感情的・場当たり的な対応は避けるべきです。
以下の4点が、損害賠償請求成立のための主な立証要件です。
- 不正行為により企業に損害が発生していること
- 損害と不正行為との間に因果関係があること
- 不正行為が退職者本人によって行われたこと
- その行為が企業の権利を侵害していること
賠償請求は最終的に法的手段へ発展する可能性が高く、調査段階から法的証拠力を意識した対応が求められます。詳細については、以下の記事でも解説しています。

⑤ 刑事・民事での法的対応
損害が重大、または退職者の行為が不正競争防止法や個人情報保護法に違反している場合には、刑事・民事の両面から法的対応を検討する必要があります。
悪質なケースでは、警察への被害届や検察への告訴による刑事罰の追及が有効です。一方で、差止請求や損害賠償を目的とした民事訴訟によって、被害の回復と再発防止を図ることも可能です。
これらの法的対応を適切に進めるには、フォレンジック調査による信頼性の高い証拠の確保が不可欠です。証拠保全の手順やデータの改ざん防止など、専門的な対応の有無が訴訟結果に直結することもあります。
さらに、個人情報保護法への違反が疑われる場合は、法令を順守して対応することも重要です。詳細は下記をご参照ください。

⑥協力者への懲戒処分
退職者による不正行為に社内協力者が関与していた場合は、事実確認と証拠の収集を十分に行ったうえで、懲戒処分を検討する必要があります。処分の判断にあたっては、協力者が実際に不正を行ったかどうか、その行為が企業の就業規則やコンプライアンスに違反しているかどうかを慎重に見極め、公正な手続きに基づいて対応することが重要です。
退職者のデータ持ち出し調査はフォレンジック調査を行う
退職者による情報の持ち出しが疑われる場合、社内で不用意に端末を操作すると証拠データが上書き・消去されるリスクがあります。さらに、自社での調査では証拠能力を満たせず、損害賠償請求や刑事告訴に不利になる可能性もあります。
こうしたリスクを回避するためには、専門のフォレンジック調査によって、証拠となるデータを正確に保全・解析することが不可欠です。
フォレンジックとは?
フォレンジックとは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に残されたログや操作履歴を専門技術で解析し、不正アクセスや情報持ち出しの経路を科学的に特定する調査技術です。
退職者による情報持ち出しに関するフォレンジック調査では、以下のような項目を調査・解析することができます。
- Webブラウザの閲覧履歴
クラウドストレージや外部サービスへのアクセス記録 - データの消去・改ざんの有無と復元
削除ファイルの復旧と不正操作の痕跡解析 - USBメモリなど外部記録媒体の使用履歴
接続された外部デバイスの履歴や使用状況
- ヒアリング: 問題の整理と調査対象・優先順位を明確化
- 証拠保全: 端末のデータをコピー・保全し、改ざんを防止
- 調査・解析: 削除データの復元や操作ログの解析
- 報告書提出: 法的利用可能な調査報告書を作成・提出
フォレンジック調査によって取得されたデータは、裁判所・警察・行政機関への正式な提出資料として活用できます。調査結果は、専門エンジニアが報告書として体系的にまとめ、法的根拠としての信頼性を備えた形式で提供されます。
個人情報の漏えいや社内データの持ち出しが疑われる段階で、できるだけ早くフォレンジック調査会社に相談することをおすすめします。
端末別に見るデータ持ち出しの手段と調査可能な内容
退職者が持ち出すデータの種類や手段は多岐にわたります。企業として対策しているつもりでも、想定外の方法で情報が持ち出されるケースは少なくありません。
ここでは、退職者が利用しやすい端末ごとに、主な情報持ち出し手段とフォレンジック調査できる内容をまとめました。
業務用PC
業務用PCは日常的に使用される機器であり、USBやクラウドなどさまざまな外部接続手段を通じて、データが持ち出されやすい代表的な端末です。
また、業務で個人所有のPCを使用している場合は、証拠品としての提出を求める対応が必要になるケースもあります。
- USBメモリや外付けHDDなど外部記憶媒体へのコピー
- 個人メールアドレスへのファイル送信
- クラウドストレージ(Google Drive、Dropbox等)へのアップロード
- スマートフォンやタブレットへの直接転送
- 印刷による紙媒体での持ち出し
- 画面キャプチャやスクリーンショットの保存
- ファイルのアクセス・コピー・削除履歴
- 外部デバイス(USB等)の接続履歴・利用状況
- メール送信履歴(送信先・添付ファイルの有無)
- クラウドストレージへのアップロード履歴や同期状況
- 印刷履歴(日時・ファイル名・プリンタ名)
- スクリーンショットや画像ファイルの作成・保存履歴
- 削除ファイルの復元や隠蔽操作の痕跡
スマートフォン・タブレット
スマートフォンやタブレットは持ち運びやすく、個人用アプリ経由でのデータ持ち出しが容易なため、見落とされやすいリスク端末です。
- 業務データのクラウドストレージアプリへのアップロード
- メールやチャットアプリでのファイル送信
- カメラによる画面や資料の撮影
- BluetoothやWi-Fi経由でのPCからのデータ転送
- アプリの利用履歴(クラウド・メール・チャット等)
- ファイルのダウンロード・アップロード履歴
- カメラロールや画像フォルダ内の写真・スクリーンショット
- 通信履歴や端末内のデータ復元
- クラウドストレージアプリのログイン・同期履歴
クラウドサービス
クラウドは社内外からアクセス可能で利便性が高い反面、個人アカウントへのアップロードや不正共有が発覚しづらく、管理が難しい領域です。
- 業務データを個人のクラウドアカウントにアップロード
- ファイル共有リンクの発行・第三者との共有
- 退職後も残ったアカウント権限での不正アクセス
- アクセスログ(日時・IPアドレス・利用端末)
- ファイルのアップロード・ダウンロード・共有履歴
- 共有リンクの発行状況やアクセス権限の設定
- 不審なアカウント操作や外部アクセスの有無
USBメモリ・外付けHDDなど
USBメモリや外付けHDDは、物理的に簡単に接続・取り外しが可能なため、情報の持ち出し手段として依然として多く使われています。
- 業務PCからUSBメモリや外付けHDDへファイルをコピー
- 複数の端末間でデータを移動・複製
- PCのUSB接続履歴や外部デバイスの利用状況
- コピー・移動されたファイルの履歴やタイムスタンプ
- デバイスごとのシリアル番号や利用者情報
- 削除・隠蔽されたファイルの復元や痕跡
このように、退職者による情報持ち出しが疑われる場合は、使用していた端末を専門調査会社に依頼し、フォレンジック調査を通じて証拠データを正確に確認することが重要です。
確かな証拠を得ることで、損害賠償請求や法的対応など、次のステップに進むための判断材料が整います。まずはお気軽にご相談ください。
退職者の情報持ち出し調査を行う場合、専門業者に相談する

社内不正・横領・情報持ち出し・職務怠慢のような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。
特に、法的手続きが絡むケースや被害が広範囲に及ぶ場合は、専門家の力を借りることで被害の最小化と信頼性の高い証拠の収集が可能です。
>情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務とは?詳しく解説
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