Malloxランサムウェア(別名FARGO・TargetCompany)は、コンピュータ上のファイルを暗号化し、復号キーと引き換えに身代金の支払いを要求するマルウェアの一種です。
このランサムウェアは2021年から2022年にかけて確認されて以来、2023年以降、企業のWebアプリケーションやデータベースに対する襲撃活動と身代金の要求を続けています。
この記事では、Malloxランサムウェアの特徴を交えつつ、被害に遭った場合の対処法や、企業が対応すべき確認事項などを解説していきます。ぜひ参考にしてください。
目次
Malloxランサムウェアの特徴
Malloxランサムウェアは、システムに侵入後、ファイルを暗号化し、復号キーと引き換えに身代金の支払いを要求します。その特徴は次のように表すことが出来ます。
- MS-SQLサーバーをターゲットとする
- GPS関連のプログラムを停止する
- 現時点で復号ツールが提供されていない
Microsoft SQL Serverをターゲットとする
Malloxランサムウェアはセキュリティで保護されていないMicrosoft SQL Server(SQL)を攻撃します。SQLとは、マイクロソフトが開発・販売している関係データベース管理システムであり、Windows OS上で動作します。
SQLは組織で広く使用されており、顧客情報や財務データなど機密データが含まれていることが多いため、ランサムウェアの標的になりやすく被害が深刻化しやすい傾向があります。
出典:sekurak.pl
GPS関連のプログラムを停止する
Malloxランサムウェアは、GPS関連のプログラムを停止します。これは、このランサムウェアがインフラ分野に携わる組織を標的にしている可能性があることを示唆しています。
GPS関連のプログラムを停止されると、被害者は自分の位置情報やナビゲーション機能を使用できなくなり、制限された状況に置かれやすくなります。
現時点で復号ツールが提供されていない
いくつかのランサムウェアは、復号ツールが提供されており、被害者は自力で対処することができます。
しかし現時点でMalloxランサムウェアは復号ツールが提供されていません。
仮に復号ツールが提供されていたとしても、情報漏えいの観点から、感染経路や範囲を自力で調査するのには限界があります。ランサムウェアは高度で複雑な技術を使用しており、感染経路や漏えいの被害を特定するには専門知識や特殊な技術が必要になるからです。
したがって被害が確認された時点で、サイバーセキュリティ専門家や法執行機関に連絡し、早急な対応を行いましょう。サイバーセキュリティ専門家はランサムウェアにまつわる知見が豊富で、対応を依頼することで調査から復号、対策まで適切な対応を迅速に講じることができます。
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Malloxランサムウェアに感染するとどうなるのか
Malloxランサムウェアに感染すると、以下のような影響が生じる可能性があります。
- 「RECOVERY INFORMATION.txt」または「FILE RECOVERY.txt」というランサムノートが表示される
- 盗まれた情報がCommand&Control(C2)サーバーに送信される
- ビットコインで1000~2000ドル、またはそれ以上の身代金を要求される
- 暗号化されたファイルの拡張子が「.mallox」などに変わる
- 被害者が身代金の支払いを拒否した場合、データを公開すると脅迫される
- トロイの木馬などマルウェアがインストールされる可能性がある
- データが漏えいする・経済的損失が生じる
まずは起こった症状をもとに感染経路の分析や感染拡大防止などの対応を行いましょう。
「RECOVERY INFORMATION.txt」または「FILE RECOVERY.txt」というランサムノートが表示される
Malloxランサムウェアに感染すると、「RECOVERY INFORMATION.txt」または「FILE RECOVERY.txt」というファイルが表示されます。
これらはランサムノートと呼ばれ、身代金の支払いを要求するメッセージが記載されています。
身代金要求メッセージのテキストには、主に次のような内容が書かれています。
- PCのセキュリティ上の問題により、すべてのファイルが暗号化されました。
- 復号にはツールが必要です。復号ツールを使用するには、TORブラウザをダウンロードしてプライベートIDを入力してください。
- コンタクト先は「mallox.israel@mailfence.com」あるいは「mallox@tutanota.com」
出典:pcrisk.com
盗まれた情報がCommand&Control(C2)サーバーに送信される
Malloxランサムウェアは、感染したデバイスから盗まれたデータを攻撃者の指定するC2サーバーに送信する可能性があります。
C2サーバーとは、Command and Controlサーバーの略称で、感染したデバイスから盗まれた情報の受信などを行ったり、リモートでさまざまな攻撃を行うことができるため、データがC2サーバーに送信されると、個人情報や機密データの漏えいのリスクが高まります。
ビットコインで1000~2000ドル、またはそれ以上の身代金を要求される
攻撃者は復号化キーを提供する代わりに、被害者に対してビットコインなどの暗号通貨で身代金の支払いを要求します。要求される金額は一般的に1000ドル(14万円)から2000ドル(24万円)以上に及ぶことがあります。
ただし、支払いの成功に関わらず、セキュリティ侵害が発生している可能性があります。また攻撃者が復号キーを提供するかどうかは保証されません。
したがって、感染した場合は、どのようなケースであっても侵害の調査は必要不可欠です。
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出典:medium
暗号化されたファイルの拡張子が「.mallox」などに変わる
Malloxランサムウェアは、感染したデバイス上のファイルを暗号化し、元の拡張子を変更して「.mallox」「.malox」「.maloxx」などの拡張子を追加します。
これにより、被害者はファイルにアクセスできなくなります。
被害者が身代金の支払いを拒否した場合、データを公開すると脅迫される
支払い期限を守らずに身代金の支払いを拒否した場合、攻撃者は被害者に対してデータの公開を脅迫することがあります。これにより、被害者の機密情報が第三者に公開されるリスクが生じます。
トロイの木馬などマルウェアがインストールされる可能性がある
Malloxランサムウェアは、感染したデバイスに対して他のマルウェアやトロイの木馬をインストールすることがあります。これにより、データの盗難や漏えい、マルウェア感染など、さらなるセキュリティ上のリスクや被害が生じる可能性があります。
データが漏えいする・経済的損失が生じる
Malloxランサムウェアに感染すると、企業のシステムが停止し、業務が停止する可能性があります。また感染データが漏えいすると、企業はプライバシー侵害のリスクに直面し、風評や賠償などにより、多大な経済的な損失が発生することがあります。
このような状況では、感染経路や脆弱性の特定、被害範囲の把握が不可欠です。例えば、感染したデバイスのログファイルを調べることで、攻撃者が使用したマルウェアの種類や攻撃手法などを明らかにすることができます。また、感染したデバイスのハードディスクやメモリなどから攻撃の痕跡を収集し、復元することで、攻撃の詳細を解明することができます。
この際、有効なのがフォレンジック調査です。
フォレンジック調査とは、コンピューターから証拠を収集・分析し、インシデントの詳細を解明する手法です。フォレンジック調査により、被害の拡大を防ぐための対策や、将来の攻撃を予防するための情報収集・分析などが可能になります。
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Malloxランサムウェアの感染経路とは
Malloxランサムウェアの感染経路としては次のものが挙げられます。
- セキュリティで保護されていないMS-SQL
- VPN/RDP(リモートデスクトップ)の脆弱性
- 悪意のある電子メールの添付ファイル
- 悪意のある広告
- 違法なトレントサイト
- クラック版(割れ)ソフトウェア
ランサムウェアの感染経路を確認する方法は、下記の記事でも詳しく解説しています。
セキュリティで保護されていないMS-SQL
MS-SQL(Microsoft SQL Server)は、Microsoftによって開発されたデータベース管理システムですが、Malloxランサムウェアの感染経路として悪用されています。
例えば、推測しやすいパスワードが設定されている場合、ブルートフォース攻撃によって不正アクセスされる可能性が高まります。
また、パッチやアップデートの適用が遅れると、既知の脆弱性が悪用される可能性があります。いずれにせよ、セキュリティを強化するためには、強力なパスワードの適用や定期的なアップデート、パッチの適用が必要不可欠です。
VPN/RDP(リモートデスクトップ)の脆弱性
Malloxランサムウェアは、VPN(Virtual Private Network)やRDP(Remote Desktop Protocol)といったリモートアクセス機能に存在する脆弱性を悪用して感染します。
たとえば攻撃者は脆弱な認証情報を入手したり、セキュリティパッチが適用されていないシステムにアクセスしてランサムウェアをインストールすることがあります。
VPN/RDP(リモートデスクトップ)の脆弱性については下記の記事でも詳しく解説しています。
悪意のある電子メールの添付ファイル
Malloxランサムウェアは、悪意のある電子メールの添付ファイルを介して感染することがあります。一般的な手法は、巧妙に作成されたフィッシングメールに添付された添付ファイル(実行可能なexeファイル、officeファイル・マクロファイル)が開かれたり実行されたりすると、ランサムウェアがデバイスに侵入する仕組みとなっています。
またランサムウェアの送信元は、一般的な組織や信頼できる企業、銀行などのように見せかけることが多く、大抵、送信元のアドレスが本物の組織や企業と同様に偽装されています。
悪意のある広告
Malloxランサムウェアは、ウェブサイト上に表示される悪意のある広告(アドウェア)やポップアップを通じて感染することがあります。
これら広告はクリックするだけでランサムウェアが自動的にダウンロードされるように設計されています。一度クリックすると、デバイスは感染し、ランサムウェアが展開されます。
違法なトレントサイト
Malloxランサムウェアは、違法なトレントサイト(ファイル共有ソフトであるBitTorrentを使用してファイルをダウンロードまたはアップロードするためのウェブサイトです)や、違法ダウンロードサイトを通じても感染することがあります。
このような違法サイトには、しばしばランサムウェアが設計上偽装されていることがあり、ダウンロードしたファイルがランサムウェアに汚染されているケースは少なくありません。
クラック版(割れ)ソフトウェア
Malloxランサムウェアは、クラック版ソフトウェアをダウンロードしたりインストールしたりすることによっても感染することがあります。クラック版(割れ)とは、商用ソフトのコピーガード(著作権保護)を回避した非公式バージョンであり、非合法なコンテンツであることからランサムウェアが組み込まれている場合があります。
Malloxランサムウェア感染時の対応
Malloxランサムウェア感染時、誤った対応を取ると、再感染やデータ漏えいなどのインシデントに遭遇する恐れがあります。
よって過不足のないフローで適切な対応を取りましょう。 .Malloxランサムウェアに感染した場合の対処法は次のとおりです。
- 端末をオフラインにする
- バックアップから感染前のデータを復旧する
- ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時、企業がとるべき対応については下記でも詳しく解説しています。
①端末をオフラインにする
まずは、ネットワークから感染した端末を切り離す必要があります。これにより感染が広がることを防ぐことができます。
②リストアする(バックアップから感染前のデータを復旧する)
さらに、感染したサーバーのバックアップを確認し、最新のバックアップからデータを復元することができます(これをリストアと言います)。
これにより、被害を回復することができますが、ランサムウェア感染時は、復旧だけではなく、攻撃経路の特定や、再発防止策の検討が必要となります。攻撃に遭った場合は「フォレンジック調査」を検討しておきましょう。
③ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時は、感染経路を特定し、再発防止策を講じる必要があります。
特に「脆弱性」を悪用した攻撃を受けた場合、再度、攻撃を受けないよう、適切な対応を行うとともに、どの端末のどのデータが詐取されたのかを確認する必要があります。
法人の場合、個人情報の漏えいが疑われる際は、関係各所に向けた「被害報告」が必要ですが、自社調査だけでは客観性や正確性が担保できないことがあります。
たとえば、セキュリティツールはマルウェアを検知・駆除できますが、感染経路や情報漏えいの有無を適切に調査することはできません。したがって、.Malloxランサムウェア感染時は、感染経路調査に対応した「フォレンジック調査」を利用することが有効です。
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※2 累計ご相談件数32,377件を突破(期間:2016年9月1日~)
ランサムウェア感染時、感染経路調査を行うメリット
ランサムウェアに感染した場合、感染経路を調査することで、攻撃者の侵入方法を特定し、将来の攻撃から身を守るために対策を講じることができます。
ランサムウェア感染の調査を行う方法として「フォレンジック調査」を挙げることができます。フォレンジック調査とは、電子機器から証拠を収集・分析して、インシデントの詳細を解明する手法で、たとえば攻撃者がどのようにランサムウェアを侵入させたか、どのような手法や脆弱性が悪用されたかなど、感染経路や情報漏えいの特定に役立ちます。
ランサムウェア感染時の対処におけるフォレンジック調査のメリットは次のとおりです。
①被害範囲を特定できる
フォレンジック調査は、感染したシステムやネットワーク内での攻撃の拡散範囲を特定するのに役立ちます。これにより、被害を受けたシステムやデータ、ネットワークの一部を迅速に特定し、対処を開始することができます。
②感染経路や攻撃手法の解析・証拠が確保できる
フォレンジック調査では、ランサムウェアの攻撃手法や感染経路を解析し、証拠を確保できます。また、証拠の確保は、法的な措置や法執行機関との連携に役立つだけでなく、被害の評価や保険請求のためにも重要な要素となります。
③専門エンジニアの詳細な調査結果が得られる
フォレンジック調査の専門会社には、正確にハッキング被害の実態を確認するために必要な高度な技術を持つ専門エンジニアがいます。
自社調査だけでは不適切な場合がありますが、フォレンジックの専門業者と提携することで、調査結果をまとめた報告書が作成でき、公的機関や法廷に提出することができます。
④セキュリティの脆弱性を発見し、再発を防止できる
フォレンジック調査では、マルウェアによる被害の程度や感染経路を特定することで、今後のリスクマネジメントに貢献することが出来ます。弊社では、解析調査と報告書作成の他に、お客様のセキュリティを強化するためのサポートも提供しています。
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ランサムウェア感染による企業の情報漏えいインシデント対応が義務化されています
2022年4月から改正個人情報保護法が施行されました
2022年4月に施行された「改正個人情報保護法」では、個人データの漏えい、あるいは漏えいが発生する可能性がある場合、報告と通知が法人に義務付けられました。違反した企業には最大1億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
もし、Malloxに感染した場合、まず感染経路や漏えいしたデータを確認することが重要です。しかし、調査を行う場合、法知識や専門技術が必要です。これは自社のみで対応するのが困難なため、フォレンジック専門家と提携して調査を実施することをおすすめします。
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Malloxランサムウェアによる被害の調査を行う場合、専門業者に相談する
マルウェア・ランサムウェア感染、不正アクセスのような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。しかし、自力で調査を行うと、調査対象範囲が適切でなかったり、意図しない証拠データの消失が発生しやすく、不完全な結果になる恐れがあります。
このような事態を防ぎ、適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。フォレンジック調査では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
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インシデントが発生した際、フォレンジック調査を行うか決定していない段階でも、今後のプロセス整理のために、まずは実績のある専門会社へ相談することを推奨しています。
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