スマホや匿名通信アプリを悪用した巧妙な犯行が増える中、従来の捜査手法だけでは関係性の特定や証拠収集が難しくなっています。特に「闇バイト」など、指示系統が分断された犯罪では調査の手がかりが限られることも少なくありません。
初動を誤ると、スマートフォン内の通信履歴や操作ログといった証拠が消失する恐れがあるため、専門的な解析と適切な保全手順が必要です。
本記事では、実際に警視庁がスマホ750台を解析し、犯行指示役を特定した事件を例に、フォレンジック調査が果たした役割とその限界、今後の活用可能性について解説します。
目次
首都圏で相次いだ強盗事件と合同捜査の動き
2023年8月から約3カ月間、東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で連続して発生した18件の強盗事件において、いわゆる「闇バイト」と呼ばれる違法な求人に応募した実行犯グループが犯行に加担していたことが明らかになりました。被害額は総額2,000万円を超え、押し込み・暴行・窃盗など悪質性の高い手口が多く確認されています。
実行犯は、SNSなどに掲載された「高額報酬」「即日現金支払い」などの文言に誘導され、秘匿性の高い通信アプリを通じて指示を受けていました。応募時に身分証の画像提出などを強要され、後に脅迫材料として利用されたケースも報告されています。
2023年10月、警視庁を中心に1都3県の警察が合同捜査本部を設置。100人以上の捜査員を投入し、これまでに実行役・回収役など延べ74人が逮捕されました。
そして2024年6月、千葉県市川市で発生した強盗傷害事件の指示役として、福地紘人容疑者ら4人を逮捕。闇バイト事件で「指示役」が逮捕されたのは初めてであり、捜査の大きな節目となりました。
合同捜査本部では、事件に使用されたスマートフォンを解析し、通信アプリ「シグナル」での指示内容や偽名アカウントの実態を精査。今後も金の流れや共犯者の特定を進める方針を示しています。
出典:テレ朝NEWS
モバイルフォレンジック調査で特定された手口と証拠
実行役と指示役に面識がない中、警視庁などの合同捜査本部は約750台のスマートフォンを押収し、通信アプリや位置情報などを地道に解析しました。
指示には秘匿性の高いアプリ「シグナル」が使われており、容疑者らは50を超えるアカウントを使い分けていました。一部には他人名義の携帯や北米の電話番号も利用されていたとされています。
解析では複数の端末から共通の通信履歴が確認され、指示役4人の関与が浮上。また、防犯カメラをつなぎ合わせる「リレー捜査」によって金品の流れも追跡され、裏付けが進みました。
警視庁の幹部は「一つひとつの情報を丁寧に重ね、全体像の解明につなげた」と話しています。
モバイルフォレンジックとは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末から、通話履歴・メッセージ・位置情報などのデジタルデータを解析する技術です。
個人情報や行動履歴が多く含まれるため、犯罪や不正調査、情報漏えいの原因特定などにおいて重要な証拠となることがあります。
闇バイトや匿名犯罪の背後にあるリスク
SNSで「即金」「ホワイト案件」といった投稿により、若年層が違法行為に巻き込まれるケースが後を絶ちません。今回の事件でも、犯行に加担した実行犯は指示役と直接の面識がなく、構造的に責任の所在が不明確になりやすい特徴があります。
このような匿名・分断型の犯罪は、従来の人間関係を前提とした捜査では解明が難しいとされています。デジタルフォレンジックによる通信履歴や操作ログの解析によって、誰が何を指示したか、どの情報が共有されていたかを客観的に特定することが、関与の立証には不可欠です。
「ルフィ事件」でも使われた分断型犯行の共通点とスマホフォレンジックの限界
今回の事件で使用された通信アプリ「シグナル」は、2022年〜2023年にかけて発生した「ルフィ」広域強盗事件でも犯行指示に利用されていたことが確認されています。
出典:NEWSポストセブン
両事件に共通するのは、匿名性が高く、メッセージが自動消去されるアプリを使い、指示役と実行犯が直接つながらない「分断型犯行」の構造です。この構造が、関係性の立証を困難にしています。
警視庁は、通信アプリの履歴を復元するためにモバイルフォレンジックを実施し、スマホの状態や保全タイミングによっては、削除された通信の一部を復元し、証拠として活用することに成功しました。
解析の成否は初動で決まると言われるほど、端末の扱いや保存環境が結果に大きく影響します。
ただし、スマホフォレンジックは万能ではなく、端末が初期化されていたり、アプリ側で通信ログが残らない設計の場合、復元できるデータは限られます。証拠の取得は、バックアップやキャッシュなど一部の痕跡に依存するケースもあります。
このように、フォレンジック調査の有効性は状況に左右されるため、不正や被害の疑いがある場合は、できるだけ早く専門業者に相談することが重要です。
デジタル証拠から何がわかるのか?
デジタルフォレンジック調査では、表面上は消されて見えない通信履歴や操作の痕跡を科学的に復元・分析することで、犯人の行動や共犯関係を明らかにすることができます。
実際に今回の事件でも、750台を超えるスマートフォンから削除されたシグナルのやりとりの一部を解析・復元し、犯行指示の内容や関係者のハンドルネームを特定したと報じられています。
通信履歴の復元と指示系統の把握
消去されたメッセージアプリの履歴や通話ログを復元し、「誰が」「いつ」「誰に」「何を指示したか」を時系列で明らかにできます。今回の事件でも、50以上の偽名アカウント(例:「夏目漱石」「JOJO」など)を用いた指示役の存在が浮かび上がりました。
アカウントの実行ログと行動履歴
スマートフォン内の操作履歴、位置情報、アプリ使用状況などを調査することで、実行犯がどのような動線で行動したか、犯行に使われたツールやタイミングまで把握できます。
消されたメッセージの復元とデータ照合
シグナルのような自動消去機能を持つアプリであっても、バックアップファイルや端末キャッシュ、メモリ上の断片データなどから一部の証拠を復元できる可能性があります。これにより、関与を裏付ける具体的な証拠を得ることができます。
スマホフォレンジック調査は匿名犯罪にも対応可能です
スマホやクラウド、匿名通信アプリを悪用した犯行は増加しており、操作の誤りや自己対応によって証拠が消失する恐れも高くなります。
専門のフォレンジック調査では、端末の操作ログや通信履歴を客観的に解析することで、犯行の手口や関与の有無、被害範囲を明らかにすることが可能です。匿名性の高いアプリや偽装工作にも対応できる技術が揃っており、初期段階での相談が被害の抑止につながります。
デジタルインシデント発生時に求められるフォレンジック調査
今回のような事件が起きた場合、企業でも同様に、社内システムへの不正アクセスや情報漏えいといったインシデントが発生する可能性があります。
その際、最優先で行うべきは、原因の特定と被害範囲の把握です。フォレンジック調査を活用することで、操作履歴・通信ログ・データ痕跡をもとに事実を科学的に検証し、再発防止や法的対応に備えることができます。
フォレンジック調査とは、サイバー攻撃、情報漏えい、データ改ざんなどのセキュリティ関連インシデントが発生した際に、その原因を特定し、被害の範囲や影響を明らかにするための詳細な調査手法です。
もともとフォレンジック調査は、犯罪や事件が起きた時、その現場から犯行の手掛かりとなる「鑑識」を指していました。特にデジタルデータからの証拠収集・分析は「デジタル鑑識」あるいは「デジタル・フォレンジック」とも呼ばれます。
特に法人の場合、影響が自社内にとどまらず、取引先や委託先、顧客、監督機関への説明責任が発生するケースも少なくありません。
個人情報が関係する場合には、個人情報保護委員会などへの報告義務が法律で定められており、内容不備や対応の遅れが再提出・行政指導・取引停止・信用毀損といったリスクに直結するおそれがあります。
フォレンジック調査は、その根拠となる事実や証拠を第三者性をもって構築する手段であり、社外説明・法的対応・監督官庁への報告にも活用可能です。
被害発生時にフォレンジック調査が有効な理由は次の通りです。
- 侵入経路の特定:攻撃者がどこから侵入したかを明確にする
- 被害範囲の可視化:影響を受けたデータやシステムを把握する
- 証拠となるデータ保全:法的対応や保険請求に備えて証拠データを安全に保存する
- 再発防止策の策定:調査結果を基にセキュリティ体制を強化する
このような調査を中立的な第三者が実施することで、調査の客観性が担保され、社内の是正措置と社外への信頼確保の両立が可能になります。
弊社デジタルデータフォレンジック(DDF)では、情報漏えい調査(ダークウェブ調査)、ランサムウェア、サイバー攻撃や不正アクセスの原因特定、被害範囲調査などを実施しています。官公庁、上場企業、捜査機関など、多様な組織のインシデント対応実績があり、相談や見積もりは無料、24時間365日体制でご依頼を受け付けています。
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まとめ
スマホや匿名通信アプリを使った犯行は、指示役と実行犯の関係が断絶された構造的な犯罪へと変化しつつあります。従来の聞き取りや人間関係ベースの捜査では限界がある中、通信履歴や操作ログを科学的に復元できるフォレンジック調査は、今後ますます重要になると考えられます。
特に初動での対応を誤ると、証拠が消失する恐れがあるため、確実な保全と解析体制を確保することが不可欠です。実例に学びながら、自社のセキュリティ体制や初動対応手順も見直しておくことをおすすめします。
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よくある質問
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