日本のアニメ映画に由来する「Akira」ランサムウェアは、2023年3月に出現しました。Akiraランサムウェアは業種を問わず感染し、暗号化されたファイルの末尾には「.Akira」拡張子が追加されます。
この記事では、Akiraランサムウェアの特徴や、被害に遭った場合の対処法などを解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
Akiraランサムウェアの特徴
Akiraは、コンピューター上の保存ファイルを暗号化し、暗号を解除する復号キーと引き換えに身代金の支払いを要求するランサムウェアです。その特徴には以下のものが挙げられます。
- LinuxやWindowsを標的にしている
- VPNの脆弱性をついて感染する
- ごみ箱内のデータや.exeなど一部のファイルは感染しない
- Conti ランサムウェアと類似している
- Akiraランサムウェアは教育機関や投資会社など幅広い企業を標的にしている
LinuxやWindowsを標的にしている
Akiraランサムウェアが主に標的にしているのは、WindowsPCとLinuxサーバです。
Akiraランサムウェアが確認された当初はWindowsPCが標的にされていましたが、2023年6月には、アメリカの企業を中心にLinuxサーバにも感染していることが確認されています。
VPNの脆弱性をついて感染する
VPNとはパソコンとインターネットの通信を暗号化し、セキュリティを強化できる機能です。
ブラウザがVPNサーバーにアクセスすると通常はVPN認証が行われますが、Akiraランサムウェアの攻撃者はシステムの脆弱性の検知や認証情報の窃取を実行し、認証を行わずに侵入します。
ネットワークに侵入後、攻撃者はセキュリティソフトを弱体化・無効化する動きをみせることが報告されています。Akiraランサムウェアの場合は、標的とするWindowsの標準セキュリティソフトである「Windows Defender」を事前に無効化していることが報告されています。
その後リモートツールで機密情報を事前に窃取した後にAkiraランサムウェアが実行され、ファイルの暗号化と身代金の要求が行われます。
ごみ箱内のデータや.exeなど一部のフォルダーは感染しない
Akiraランサムウェアは、.accdbや .nvramといったデータベース関連の拡張子に感染する一方で、一部のフォルダーやシステムファイルには感染しないことが判明しています。感染しないフォルダーの例は以下の通りです。
- ごみ箱のフォルダー
- システムボリューム情報
- ブート情報
- ProgramDataフォルダー
- Windowsフォルダー
またAkiraランサムウェアが感染しないWindowsシステムファイルは以下の通りです。
- .exe
- .lnk
- .dll
- .msi
- .exe
- .sys
ただしAkiraランサムウェアがアップデートされることで、感染するファイルの種類が増加する可能性があります。VPN/RDPのパスワードを複雑なものに変更する、不審なメールを開かないように、メールアドレスをチェックするなど、セキュリティ体制を強化しておきましょう。
出典:pcrisk.com
Contiランサムウェアと類似している
Akiraランサムウェアは、2020年に確認されたContiランサムウェアと類似性があることが判明しています。
Contiランサムウェアと類似している点は以下の通りです。
- Akiraランサムウェアが感染しないファイル
- 暗号化アルゴリズム
- ファイル末尾の構造
Contiは、2020年に医療機関のシステムを標的にしたことで話題になったランサムウェアです。Akira・Contiランサムウェアに類似性がみられることから、同一グループが作成したか、グループメンバー同士に何かしらの関連性があることが推測されています。
出典:avast.io
Akiraランサムウェアは教育機関や投資会社など幅広い企業を標的にしている
Akiraランサムウェアの被害に遭った企業は、デイケアサービスから、教育機関、投資会社など多岐にわたります。以下はリークサイトから判明した、Akiraランサムウェアに感染した企業の一部です。
- アメリカの投資会社:従業員の個人情報、取引先情報、契約書、会計情報、その他機密情報が流出したとリークされました。
- アメリカの施工管理会社:個人情報が流出したとリークされました。
このようにAkiraランサムウェアは中小企業を標的にし、身代金は50,000$から500,000$(日本円で約700万〜7000万円)を請求していることが判明しています。侵入された中小企業の業種は千差万別ですが、セキュリティの脆弱性やフィッシングメールを利用して感染させているため注意が必要です。
Akiraランサムウェアに感染し、個人情報や機密情報が漏えいした場合、個人情報保護法が適用され、「当該個人情報の本人に対して通知すること」を義務付けています。
しかし、この条項に違反し、措置命令を無視した場合、組織は最大で1億円の罰金を科せられる可能性があります。これにかぎらず、顧客が組織との取引を停止するなど、風評被害による経済的損失をともないます。
ランサムウェアによる損失を最小限に抑えるには、フォレンジック調査が有効です。フォレンジック調査とは、ランサムウェア感染時に被害状況の把握や報告用レポートの作成を第三者である専門家が行うため、そのまま外部への報告に使用することが可能です。
ランサムウェア感染時に有効なフォレンジック調査とは
フォレンジック調査とは、不正アクセスされたコンピューターのログ調査や、デジタルデータの証拠保全を行い、情報漏洩や不正アクセス等のインシデント原因を特定する調査です。
ハッキングやマルウェア感染、従業員の不正や犯罪の調査などに利用され、変質しやすいデジタルデータを適切に収集し、裁判などの証拠としても取り扱えるようにすることができます。
ランサムウェアの場合は、ネットワーク全体をスキャンし、ランサムウェアに感染した端末を全て特定します。次に、ランサムウェアに感染した端末をスキャンし、感染経路や感染日時などを明らかにします。次に、機密情報や個人情報の不正取得や、ダークウェブ上に漏洩していないか解析し、調査結果を調査報告書にまとめます。
デジタルデータフォレンジックなら、感染経路・被害状況の特定だけでなく、記憶媒体から故意に消去されたデータの復旧や、社内セキュリティの強化もご提案可能です。さらに法人様限定で専門の技術員による出張対応も受け付けておりますので、まずはご相談ください。
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Akiraランサムウェアに感染するとどうなるのか
Akiraランサムウェアに感染すると以下の手順で暗号化が行われ、情報漏洩や業務停止といった被害が発生します。
- 「.akira」拡張子がファイルに追加される
- データが暗号化され、ランサムノート「akira_readme.txt」「fn.txt」が表示される
- データが漏洩する
- 二重恐喝される
「.akira」拡張子がファイルに追加される
悪意のあるファイルをダウンロードし、実行することで、Akiraランサムウェアはデータを暗号化します。この時、暗号化されたデータやファイルの末尾には「.akira」拡張子が追加されます。例えば、「1234.jpg」というファイルであれば、Akiraランサムウェアに感染すると「1234.jpg.akira」とファイル名が変更され、データにアクセスできなくなります。
データが暗号化され、ランサムノート「akira_readme.txt」「fn.txt」が表示される
Akiraランサムウェア実行可能ファイルが実行されると、ファイルは、バイナリ内に文字列として含まれるランサムノート(身代金メモ)を表示させます。
「akira_readme.txt」「 fn.txt 」と題されたAkiraランサムノートには以下の内容が記載されています。
- Akiraサイトのリンク
- 連絡用のメールアドレス
- 脅迫文
脅迫文には「身代金を支払わなければ、情報を公開する」といった内容と、連絡用のURLが記載されています。内容を要約すると以下の通りです。
これを読んでいるということは、会社の内部インフラが完全または部分的に停止し、すべてのバックアップが完全に削除されていることを意味します。さらに、当社は暗号化する前に大量の企業データを取得しました。
現時点では、次のことを知っておく必要があります。
1. 私たちはお客様の財務、銀行および損益計算書、貯蓄、投資などを徹底的に調査し、合理的な要求をお客様に提示します。アクティブなサイバー保険に加入されている場合は、お知らせください。適切な使用方法をご案内します。また、交渉プロセスが長引くと合意の失敗につながります。
2. 身代金を支払うと、約24時間以内にシステムを元に戻すことができます。自身で回復する場合は、一部のファイルに永久にアクセスできなくなったり、誤ってファイルを破損したりする可能性があることに留意してください。この場合、私たちはサポートできません。
3. 身代金を支払わないなど、こちらが看過できない行動をとった場合、個人情報/企業秘密/データベース/ソース コード (一般的に言えば、ダークウェブ上で価値のあるものはすべて) を一斉に販売し、その一部始終をブログで公開いたします。
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ただし、Akiraランサムウェアに感染した時点で個人情報や機密情報などは流出しているため、身代金の支払いは推奨されません。身代金を支払ったとしても復号キーで暗号化が解除されるとは限らず、身代金が犯罪の資金となって企業のステークスホルダーを攻撃する可能性があるためです。
出典:pcrisk.com
データが漏えいする
Akiraランサムウェアは、感染したシステムからデータを盗み出します。これにより、機密情報や個人情報が漏えいするリスクが生じます。
ランサムウェアで機密情報や個人情報が漏えいした場合、組織は個人情報保護法に違反したとして罰金を科せられる可能性があります。たとえば、個人情報保護法では「個人情報を取り扱う事業者に対して、個人情報の漏えいなどの事態が発生した場合、当該個人情報の本人に対して通知すること」を義務付けています。
しかし、この条項に違反し、措置命令を無視した場合、組織は最大で1億円の罰金を科せられる可能性があります。これにかぎらず、顧客が組織との取引を停止するなど、風評被害による経済的損失をともなう場合もあります。
二重恐喝される
Akiraランサムウェアに感染すると、犯人からランサムノート(身代金メモ)が送られます。一度身代金の支払いを断ると、「データをダークウェブ上で公開する」などの脅迫文が再度送られる場合があります。
身代金の支払いとは関係なく、ランサムウェアに感染した時点で個人情報などは流出しています。感染後は速やかに事実関係と再発防止策を個人情報保護委員会まで報告しなければなりません。
ランサムウェアによる個人情報の流出後、対応を怠ると国から是正勧告が行われます。これに従わない場合は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金刑が科されるため、感染調査は念入りに行う必要があります。
フォレンジック調査会社であれば、ランサムウェア感染時に専門家による被害状況の把握や外部への報告用レポートを作成できるため、ランサムウェアやその他マルウェアに感染した場合は速やかにご相談ください。
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Akiraランサムウェア感染時の対応
ランサムウェアに感染した場合は、以下のフローで被害を最小限に抑える必要があります。
感染時は慌てずに、過不足のないフローで適切な対応を取りましょう。 ランサムウェアに感染した場合の対応は次のとおりです。
- 端末をオフラインにする
- リストアする(バックアップから感染前のデータを復旧する)
- ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時、企業がとるべき対応については下記でも詳しく解説しています。
①端末をオフラインにする
まずは、ネットワークから感染した端末を切り離す必要があります。これにより感染が広がることを防ぐことができます。
②リストアする(バックアップから感染前のデータを復旧する)
さらに、感染したサーバーのバックアップを確認し、最新のバックアップからデータを復元することができます(これをリストアと言います)。これにより、被害を回復することができます。
ただし、ランサムウェア感染時は、復旧だけではなく、攻撃経路の特定や、再発防止策の検討が必要となります。攻撃に遭った場合は「フォレンジック調査」を検討しておきましょう。
③ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時は、感染経路を特定し、再発防止策を講じる必要があります。
たとえば「脆弱性」を悪用した攻撃を受けた場合、再攻撃を受けないよう、適切な対応を行うとともに、どの端末の、どのデータが被害に遭ったのかを確認する必要があります。
特に法人の場合、個人情報の漏えいが疑われる際は、関係各所に向けた「被害報告」が必要ですが、自社調査だけでは客観性や正確性が担保できないことがあります。セキュリティツールはマルウェアを検知・駆除できますが、感染経路や情報漏えいの有無を適切に調査することはできないからです。
したがって、ランサムウェア感染時は、感染経路調査に対応した「フォレンジック調査」を利用することが有効です。
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Akiraランサムウェアの感染経路とは
ランサムウェアの感染を防ぐためには、感染ルートを理解し、適切な対策を取ることが重要です。主要なランサムウェアの感染経路は下記のとおりです。
- VPN機器からの侵入
- RDP(リモートデスクトップ)からの侵入
- フィッシングメールや添付ファイル
ランサムウェア感染の被害を最小限に抑えるためには、被害に遭った時点ですぐにランサムウェアの侵入経路や被害の範囲を把握し、情報漏えいの有無を特定できる「フォレンジック調査」の専門家に対応を依頼することが重要です。
被害に遭った場合、速やかにフォレンジック調査を実施し、被害を最小限に抑えましょう。またランサムウェアは、アンチウイルスソフトを無効化して暗号化を行うため、EDR等で対策が必要です。
ランサムウェアの感染経路、症状・被害事例の詳細については下記の記事でも詳しく解説しています。
VPNの脆弱性
警察庁の調査によると、ランサムウェア感染において、VPN機器からの侵入は全体の71%を占めています。
企業は感染を防止するためにも、テレワークでVPNを使用する際には、適切なバージョンアップを行うことが重要です。またVPN以外のセキュリティ対策としてファイアウォールやアンチウイルスソフトウェアを導入し、強力なパスワードの使用や、適切なアカウント管理をおこなう必要があります。
出典:警察庁
RDP(リモートデスクトップ)の脆弱性
警察庁の調査によると、RDP(リモートデスクトップ)は、ランサムウェアの侵入経路として10%を確保しています。
RDPもVPNも、組織におけるシステム上重要な役割を担っていますが、重大な脆弱性も報告されており、ここから攻撃者はIDやパスワード情報を割り出し、不正ログイン、感染拡大を図っています。
被害を未然に防ぐためにも、パスワード更新、定期的なセキュリティチェックなどが必要です。またVPNも同様に、機密情報の暗号化や不正アクセスの監視などが必要です。
出典:警察庁
Akiraランサムウェア感染時、感染経路調査を行うメリット
ランサムウェアに感染した場合、感染経路を調査することで、攻撃者の侵入方法を特定し、将来の攻撃から身を守るために対策を講じることができます。
ランサムウェア感染の調査を行う方法として「フォレンジック調査」を挙げることができます。フォレンジック調査とは、電子機器から証拠を収集・分析して、インシデントの詳細を解明する手法で、たとえば攻撃者がどのようにランサムウェアを侵入させたか、どのような手法や脆弱性が悪用されたかなど、感染経路や情報漏えいの特定に役立ちます。
ランサムウェア感染時の対処におけるフォレンジック調査のメリットは次のとおりです。
- 被害範囲を特定できる
- 感染経路や攻撃手法の解析・証拠が確保できる
- 専門エンジニアの詳細な調査結果が得られる
- セキュリティの脆弱性を発見し、再発を防止できる
①被害範囲を特定できる
フォレンジック調査は、感染したシステムやネットワーク内での攻撃の拡散範囲を特定するのに役立ちます。これにより、被害を受けたシステムやデータ、ネットワークの一部を迅速に特定し、対処を開始することができます。
②感染経路や攻撃手法の解析・証拠が確保できる
フォレンジック調査では、ランサムウェアの攻撃手法や感染経路を解析し、証拠を確保できます。また、証拠の確保は、法的な措置や法執行機関との連携に役立つだけでなく、被害の評価や保険請求のためにも重要な要素となります。
③専門エンジニアの詳細な調査結果が得られる
フォレンジック調査の専門会社には、正確にハッキング被害の実態を確認するために必要な高度な技術を持つ専門エンジニアがいます。
自社調査だけでは不適切な場合がありますが、フォレンジックの専門業者と提携することで、調査結果をまとめた報告書が作成でき、公的機関や法廷に提出することができます。
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Akiraランサムウェアによる被害の調査を行う場合、専門業者に相談する
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