MalasLockerは、2023年3月末に確認された、Windowsを標的としたランサムウェアです。
これは従来のランサムウェアと比較して、使用している暗号化をはじめ、脅迫手口が根本的に大きく異なります。相手側の巧妙な手口に騙されないためにも、まずは実態を深く知ることから始めましょう。
この記事では、MalasLockerランサムウェアの特徴を交え、被害に遭った場合の対処法などを解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
MalasLockerランサムウェアの特徴
MalasLockerは、2023年から急速な拡大を見せている新興のランサムウェアです。その攻撃手段は、他のランサムウェアとは異なり、非常に特徴的なものとなっています。
ここではMalasLockerランサムウェアのユニークな特徴を紹介します。
- Zimbra サーバーの脆弱性(CVE-2022-24682)を突く「クロスサイトスクリプティング(XSS)」
- 身代金の代わりに慈善団体に「寄付」を要求される
- 暗号化にAge暗号化ツールを使用
- 特定の国をターゲットにし他の国を除外する
- 身代金の金額を直接指定しない
Zimbraサーバーの脆弱性(CVE-2022-24682)を突く「クロスサイトスクリプティング(XSS)」
CVE-2022-24682とは、Webベースの電子メールソフト「Zimbra Collaboration Suite(以下ZCS)」にある脆弱性で、MalasLockerの主要な侵入経路とされています。
ZCSに関しては、2022年以降に判明した脆弱性だけでも、上記以外に「CVE-2022-24682」「CVE-2022-27924」「CVE-2022-27925」「CVE-2022-37042」「CVE-2022-41352」など6件が「すでに悪用が確認された脆弱性」として周知されています。
こうしたWebアプリケーションの脆弱性、ないしそれを悪用した攻撃は「クロスサイトスクリプティング(XSS)」と呼ばれます。
XSSが実行されると攻撃者はユーザーのブラウザに任意のスクリプトを実行でき、ユーザーのアカウントを乗っ取ったり、ランサムウェアを展開させたりすることが可能になります。
ZCS開発者としては、脆弱性を修正するために、常にセキュリティパッチをリリースしています。しかし、脆弱性は常に新しく見つかるため、ZCSを使用するユーザーは、常日頃からセキュリティパッチを適用し、最新の状態を保つことが重要です。
身代金の代わりに慈善団体に「寄付」を要求される
MalasLockerは、承認された非営利の慈善団体への寄付を要求します。
しかし、ランサムウェアが身代金の代わりに慈善団体への寄付を要求する意図はいったい何なのでしょうか?
こうした奇妙な脅迫には、彼らなりのブランディングが背景にあると考えられています。つまり、慈善団体への寄付を要求することで、自分たちの行動を「善意の行動」として広くアピールし、身代金の支払率を引き上げようとしていると考えられます。
ただし、慈善団体への寄付を要求するランサムウェア攻撃は一般的ではなく、そもそも攻撃者が本当に寄付を行うかどうかも不明で、寄付金が適切に使われる保証もありません。
仮に被害に遭遇した場合、サイバーセキュリティの専門家や法執行機関に連絡し、適切な対応を取りましょう。
暗号化にAge暗号化ツールを使用
MalasLockerは、「Age encryption」という暗号化ツールを使用しています。
これは高速な処理が可能な「Go言語」で書かれたツールで、少量のCPUとメモリさえあれ機能します。
通常、ランサムウェアに利用されることはなかったのですが、MalasLockerは「Age encryption」使用していることが報告されており、他の類似したランサムウェアとの関連性が指摘されています。
特定の国をターゲットにし他の国を除外する
MalasLockerの被害者は23年5月時点で173人にのぼり、その多くはヨーロッパ在住です。その他、ロシア企業を標的とする異例の攻撃を展開していることから、サイバーセキュリティ専門企業のBlack Kiteは「政治的動機にもとづく攻撃ではないか」と推察しています。
身代金の金額を直接指定しない
MalasLockerは、被害者に対して経済的なプレッシャーをかけるためか、身代金の金額を直接指定しません。では、どのような条件で決まるのでしょうか?
MalasLockerは「被害者の経済的能力と、盗まれたデータの機密性によって寄付額が決まる」と主張しています。これにより、被害者は不確実な状況に置かれ、団体との交渉を余儀なくされる可能性があります。
ただし、身代金を支払ったからといって、データが確実に復号される保証はありません。むしろ、支払いによって攻撃者が利益を得ることで、同様の攻撃が続く可能性があります。
したがってランサムウェア感染時は、サイバーセキュリティ専門家に相談することをおすすめします。専門家に相談することで、ランサムウェアがどのようにシステムに侵入し、どのように拡散したのかを特定することができます。これにより、脆弱性やセキュリティの不備を明らかにし、将来の攻撃を防ぐための対策を講じることができます。
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MalasLockerランサムウェアに感染するとどうなる?
MalasLockerランサムウェア感染時の症状は次のとおりです。
- 身代金を要求するテキストファイル「README.txt」が開く
- ファイルを暗号化されデータにアクセスできなくなる
身代金を要求するテキストファイル「README.txt」が開く
画像出典:blackkite.com
MalasLockerランサムウェアに感染した場合、被害者は「README.txt」というファイルが表示され、Torブラウザを介して身代金を支払うように要求されます。
全文英語ですが、日本語翻訳で抜粋すると次の内容が書かれています。
従来のランサムウェアグループとは異なり、私たちはあなたにお金を送ることを要求しているわけではありません。私たちは、企業や経済的不平等が嫌いなだけです。私たちが認める非営利団体への寄付をお願いしているだけです。これはWin-Winの関係で、あなたが望むなら、あなたはおそらく税控除と寄付による良いPRを得ることができます。
ただし、サイバーセキュリティ専門企業のBlack Kiteは、「ハッカーたちの行動は悪質であることに変わりない」として、その有害さを強調しています。
なぜなら機密データを盗み出し、ファイルを暗号化して、大きな混乱とデータ漏えいのリスクを引き起こす以上、MalasLockerが悪質な存在であることに変わりないからです。
そもそも倫理的な観点から、慈善団体がハッカー集団による「汚れた寄付」を受け取ることは、非常に考えにくく、誰にとっても迷惑な行為であるといえるでしょう。
自力で復元を試すとデータが失われると恐喝される
これはランサムノートに書かれた脅迫文で、かつ復号を自力で試すことを禁じた恐喝文です。
ご連絡いただければ、安全かつ迅速にファイルを復元する復号化装置を提供します。それ以外の方法でファイルを復元しようとしても、時間とお金の無駄であり、永久にデータが失われる危険性があります。
ただし、攻撃者に身代金を支払うことは推奨されません。支払いを行っても、被害者が本当にデータを復元できるか保証されず、むしろ再攻撃を受けやすくなるリスクがあります。
この場合、ランサムウェアによって暗号化されたファイルがバックアップに含まれている場合、攻撃前の状態にファイルを復元することができますが、それだけでは不十分です。
ファイルが暗号化された時点でセキュリティ侵害の可能性が高い
データやファイルが暗号化された場合、個人情報保護の観点から、データ漏えいの有無はもちろん、攻撃者がどのようにシステムに侵入したのかを特定することが重要です。これにより、セキュリティの脆弱性や攻撃手法を把握し、今後の防御策を強化することができます。
ただし、暗号化された端末で、感染経路や脆弱性、被害範囲の把握を自力でおこなうのは極めて困難です。そこで有効なのがフォレンジック調査です。これはコンピューターからデジタル証拠を収集し、インシデントの詳細を解明する科学的手法です。
ランサムウェアの解析や調査に精通したフォレンジック調査の専門家と協力することで、正確かつ適切に、感染経路や脆弱性、被害範囲の把握をおこなうことができます。
私たちデジタルデータフォレンジックは、これまで官公庁、上場企業、捜査機関等を含む幅広いインシデントに対応経験があり、攻撃に使用された侵入経路や漏えいデータを迅速に特定します。ご相談や詳細な情報については、いつでもお気軽にお問いあわせください。
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MalasLockerランサムウェア感染時の対応
MalasLockerランサムウェア感染時、誤った対応を取ると、再感染やデータ漏えいなどのインシデントに遭遇する恐れがあります。
よって過不足のないフローで適切な対応を取りましょう。 MalasLockerランサムウェアに感染した場合の対処法は次のとおりです。
- 端末をオフラインにする
- バックアップから感染前のデータを復旧する
- ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時、企業がとるべき対応については下記でも詳しく解説しています。
①端末をオフラインにする
まずは、ネットワークから感染した端末を切り離す必要があります。これにより感染が広がることを防ぐことができます。
②リストアする(バックアップから感染前のデータを復旧する)
さらに、感染したサーバーのバックアップを確認し、最新のバックアップからデータを復元することができます(これをリストアと言います)。これにより、被害を回復することができます。
ただし、ランサムウェア感染時は、復旧だけではなく、攻撃経路の特定や、再発防止策の検討が必要となります。攻撃に遭った場合は「フォレンジック調査」を検討しておきましょう。
③ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時は、感染経路を特定し、再発防止策を講じる必要があります。
特に「脆弱性」を悪用した攻撃を受けた場合、再度、攻撃を受けないよう、適切な対応を行うとともに、どの端末のどのデータが詐取されたのかを確認する必要があります。
法人の場合、個人情報の漏えいが疑われる際は、関係各所に向けた「被害報告」が必要ですが、自社調査だけでは客観性や正確性が担保できないことがあります。
たとえば、セキュリティツールはマルウェアを検知・駆除できますが、感染経路や情報漏えいの有無を適切に調査することはできません。したがって、MalasLockerランサムウェア感染時は、感染経路調査に対応した「フォレンジック調査」を利用することが有効です。
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フォレンジック調査は、DDF(デジタルデータフォレンジック)までご相談ください。
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第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく。(集計期間:2007年~2020年)
※2 累計ご相談件数32,377件を突破(期間:2016年9月1日~)
ランサムウェア感染時、感染経路調査を行うメリット
ランサムウェアに感染した場合、感染経路を調査することで、攻撃者の侵入方法を特定し、将来の攻撃から身を守るために対策を講じることができます。
ランサムウェア感染の調査を行う方法として「フォレンジック調査」を挙げることができます。フォレンジック調査とは、電子機器から証拠を収集・分析して、インシデントの詳細を解明する手法で、たとえば攻撃者がどのようにランサムウェアを侵入させたか、どのような手法や脆弱性が悪用されたかなど、感染経路や情報漏えいの特定に役立ちます。
ランサムウェア感染時の対処におけるフォレンジック調査のメリットは次のとおりです。
①被害範囲が特定できる
フォレンジック調査は、感染したシステムやネットワーク内での攻撃の拡散範囲を特定するのに役立ちます。これにより、被害を受けたシステムやデータ、ネットワークの一部を迅速に特定し、対処を開始することができます。
②感染経路や攻撃手法の解析・証拠の確保ができる
フォレンジック調査では、ランサムウェアの攻撃手法や感染経路を解析し、証拠を確保できます。また、証拠の確保は、法的な措置や法執行機関との連携に役立つだけでなく、被害の評価や保険請求のためにも重要な要素となります。
③専門エンジニアの詳細な調査結果が得られる
フォレンジック調査の専門会社には、正確にハッキング被害の実態を確認するために必要な高度な技術を持つ専門エンジニアがいます。
自社調査だけでは不適切な場合がありますが、フォレンジックの専門業者と提携することで、調査結果をまとめた報告書が作成でき、公的機関や法廷に提出することができます。
④セキュリティの脆弱性を発見し、再発を防止できる
フォレンジック調査では、マルウェアによる被害の程度や感染経路を特定することで、今後のリスクマネジメントに貢献することが出来ます。弊社では、解析調査と報告書作成の他に、お客様のセキュリティを強化するためのサポートも提供しています。
私たちデジタルデータフォレンジックは官公庁、上場企業、捜査機関等を含む幅広いインシデントに対応経験があります。お電話またはメールでお問合せいただくと、状況のヒアリングと対応方法、お見積りを無料でご案内いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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ランサムウェア感染による企業の情報漏えいインシデント対応が義務化されています
2022年4月から改正個人情報保護法が施行されました
2022年4月に施行された「改正個人情報保護法」では、個人データの漏えい、あるいは漏えいが発生する可能性がある場合、報告と通知が法人に義務付けられました。違反した企業には最大1億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
もしMalasLockerに感染した場合、まず感染経路や漏えいしたデータを確認することが重要です。しかし、調査を行う場合、法知識や専門技術が必要です。これは自社のみで対応するのが困難なため、フォレンジック専門家と提携して調査を実施することをおすすめします。
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MalasLockerランサムウェアによる被害の調査を行う場合、専門業者に相談する
マルウェア・ランサムウェア感染、不正アクセスのような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。しかし、自力で調査を行うと、調査対象範囲が適切でなかったり、意図しない証拠データの消失が発生しやすく、不完全な結果になる恐れがあります。
このような事態を防ぎ、適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。フォレンジック調査では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
デジタルデータフォレンジックでは、お電話またはメールでお問合せいただくと、状況のヒアリングと対応方法、お見積りを無料でご案内いたします。法人様の場合、ご相談から最短30分で初動対応のWeb打合せも開催しておりますので、お気軽にご相談ください。
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【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
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インシデントが発生した際、フォレンジック調査を行うか決定していない段階でも、今後のプロセス整理のために、まずは実績のある専門会社へ相談することを推奨しています。
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インシデント時は、第三者機関に調査を依頼し、情報収集を行うことを検討しましょう。
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