近年、頻繁に発生する企業の不正や不祥事。企業では以前にも増してコンプライアンスの強化が求められるようになりました。これらの問題が一度でも発生すると、企業の社会的信用の失墜のみならず、企業の存続自体が危ぶまれるなど取り返しのつかない事態になりかねません。
この記事では、企業の不正取引である架空取引が手口や発覚した際の注意点、調査方法について解説します。
目次
架空取引とは
架空取引とは、取引の実態や実効性がないにも関わらず、取引を行ったように見せかける会計処理のことを指します。
架空取引には次の2種類があります。
- 当事者間で売買を往復させる循環(往復)取引
- 取引の間に第三者を介入させる取引
多くの架空取引は後者にあたります。この場合は、第三者に手形払いなどの金融機能の役割を担わせ、最終的には第三者の不良債権が膨らむというケースが大半です。
架空取引の目的
架空取引は様々な目的をもって行われます。以下は代表的な目的として考えられるものです。
- 信用度向上
- 資金調達
- 粉飾決算(ノルマ達成)
- 利益圧縮
- 金銭搾取目的
- 礼金目的
架空取引の背景
架空取引は違法な行為ですが、企業や従業員の状態によっては発生しやすくなります。以下に紹介する3つの背景全てに該当する場合は、架空取引をはじめとする不正が発生しやすい環境となっている可能性が高いため、何らかの改善を図る必要があります。
個人的な動機
経済的な理由や、昇進、評価に対するプレッシャー、または上司との対立など従業員の個人的な動機が原因となって架空取引が発生する恐れがあります。
ただし、従業員個人が架空取引を考えても、職場環境や社内制度などが整備されていれば、不正を防止することが可能です。
不正ができる職場環境
従業員の管理体制が不十分で、監視が行き届いていない職場環境の場合、架空取引などの不正が発生しやすくなります。よくある手口としては、一人の従業員に権限が集中し、チェックが最小限にとどまることで、架空取引をはじめとする不正行為が常習化することがあげられます。
特に、中小・零細企業やスタートアップ企業など、内部監査が行われない企業や、企業内で不正が常態化している場合、架空取引などの不正が見逃されることがあります。このような職場では、不正行為を報告する制度が存在していなかったり、十分に機能していないため、架空取引などの不正が組織規模で行われる可能性があります。
内部統制の弱さ
内部統制とは、企業の業務運営や財務報告の信頼性を確保し、不正行為を防止するための仕組みです。内部統制が弱い企業では、第三者による内部監査が行われず、架空取引がすぐに発覚しない可能性があります。
また社内のセキュリティ体制が不十分である場合も、不正アクセスやデータの改ざんが容易となり、架空取引の証拠隠滅が行われる可能性があります。
架空取引の罰則
架空取引(循環取引)が発覚した場合、「詐欺罪」「背任罪( 特別背任罪)」などに抵触する恐れがあります。
罪状名 | 内容 | 量刑 |
詐欺罪 | 人を欺いて財物を交付させた者(刑法第246条) | 10年以下の懲役 |
背任罪 | 他人の事務を処理する者が、自己または第三者の利益を図る目的で、または本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えた(刑法第247条) | 5年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
従業員に架空取引を行った疑いが発生し、社内で調査や法的対応を考えている場合は、以下の記事も参考にしてください。
架空取引の手口
架空取引では以下のような手口が用いられることが多いです。
- 売上金の架空計上
- 融通手形を振り出す
- 業者間で同じ製品を繰り返し取引する
- 製品を倉庫に隠し売上を立てる
- 形式のみの業務委託契約を結ぶ
売上金の架空計上
売掛金の架空計上は行いやすく、その事実が明るみに出ることも少ないのが問題です。会社の規模が大きければ取引の数も比例して膨大になるため、数千万単位の取引の実態を一つずつ確認することは監査法人でも難しいとされ、架空売上の手続きは案外容易に行われてしまいます。
融通手形を振り出す
実際の商取引がないにも関わらず、資金調達のために振り出される手形のことを融通手形といいます。この手口は、資金繰りが苦しい企業同士が互いに融通手形を振り出し合い、金融機関で換金するか裏書きをして支払先に譲渡するなど、当座の運転資金の調達に使われるケースが大半です。
業者間で同じ製品を繰り返し取引する
仕入期と販売期のずれを埋めるため、業者が仕入れた商品を買い取り、一定期間経過後に売り戻す「預かり在庫取引」によって、同じ商品を業者間で繰り返し取引することを指します。仕入先では商品の在庫を抱えず、確実に販売できるというメリットがあり、業者間に貸し借りをする相補関係が生まれ、長期にわたって不正取引が継続されていることが多いです。
製品を倉庫に隠し売上を立てる
会計上では架空売上を立て、販売したはずの製品を外部倉庫などに隠し、在庫がバレないようにする手口です。在庫調整は自社で会計処理ができてしまうため、売上の水増しによく利用されます。この手口は、投資家からの出資を得るため、大手企業よりも、高い成長性を演出しようとするベンチャー企業に多いといわれています。
形式のみの業務委託契約を結ぶ
業務委託契約とは会社が外部の企業や個人に業務を委託する際に行う契約を指します。通常の請負契約は成果物と納期が決められており、発注者は成果物が期日通りに納品されれば請負人に請負額を支払います。しかし、業務委託契約は受けた側は労働力ではなく仕事の成果を提供するというものなので、不正が行われやすくなります。この手口はグループ会社同士で行われ、特に実態がない請負契約や委任契約をするIT業界で多く見られます。
架空取引の事例
ここでは、実際の架空取引の事例について解説します。
ブックオフの架空買取
2024年6月25日、「複数の店舗において、従業員による架空の買い取り、在庫の不適切な計上および現金の不正取得の可能性があることが発覚しました」とブックオフグループHDの発表がありました。
架空買取の影響により、ブックオフグループHDでは特別調査委員会が設置され、6月27日から7月1日まで調査の一環で棚卸が行われます。一部店舗では既に営業時間の変更や休業が行われています。
さらに架空買取の事案を受けて、7月16日に予定されていた2024年5月期決算発表が延期となっています。
架空取引の調査を行う際の注意点
架空取引が発覚し、調査を行う場合、証拠隠滅を防止し、円滑に調査をすすめるために以下の点に注意しましょう。
調査の事実を知られないようにする
架空取引の調査を行う前提として、実態調査の過程では、不正に関与した疑いのある人物が不正に関わる証拠資料・データの廃棄や隠滅を行うリスクがあります。ですので、調査の事実を知られないように細心の注意を払う必要があります。同時に対象人物の行動も監視するのが賢明です。
仮に該当者に調査の事実を悟られ、証拠の破棄・隠蔽が行われた場合も、データ媒体であれば証拠が復元できる可能性が残っています。このような場合、データ復旧を専門としている業者であれば、データを復元することができます。
パソコンやスマホなど電子端末の取り扱いに注意する
パソコンやスマートフォンのデータも架空取引の証拠となり得る場合がありますが、取り扱いには注意が必要です。
デジタルデータは人為的に削除や改ざんが簡単にできてしまいます。単に別のUSBメモリなどにデータをコピーしても、データの同一性を表す「ハッシュ値」が異なるため、同一データとはみなされません。
またデータの更新や端末の使用、復旧ソフトを利用することで、意図しないデータの上書きが発生し、結果的に証拠が上書き削除される恐れがあります。
デジタルデータを法的な証拠として利用したい場合は、専門家に相談して適切な証拠保全作業を行い、データに改ざんがないことを証明しておくことをおすすめします。
架空取引の調査方法
「架空取引」を証明するには、以下の手順に沿って適切な対処を行わなくてはなりません。
すでに証拠隠滅が図られ、社内調査ではデータ復元を含めた証拠獲得が困難という場合、調査会社に依頼することで架空取引の実態調査を委託できるため、まずは一度問い合わせてみることをおすすめします。
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①証拠保全
証拠保全とは、証拠となりうる資料やデータが、改ざん・隠蔽されないよう、「裁判で使う証拠をあらかじめ確保すること」を指します。なおデジタルデータの場合は、証拠となるデータや資料をただコピーしただけでは、それ自体が改ざんされていると思われる可能性もあり、法的効力が認められない場合があります。
②書類・データの徹底的なチェック
次に、不正が疑われる帳票類(取引の配送伝票や請求書、出張申請書、会計伝票、納品書、入・出庫履歴、売掛金滞留明細等の関係帳票類など)やデータなどを徹底的にチェックし、不正の事実を明らかにします。
その後、在庫数量の不自然な増減がないか、サービス提供の有無など事実確認を十分に行い、不正につながる実態がないか、在庫・サービス提供の事実確認を行います。この際、証拠となる重要資料やデータが犯人によって改ざん・隠滅されないように安全な場所に移して保管するようにしましょう。
証拠となりうる書類やデータが膨大な場合や早急な調査を行わなくてはならない場合、個人や自社で行うのではなく、不正調査を専門としている会社へ相談するのがおすすめです。
③関係者への聞き取り調査
状況を把握するために、不正に関与した疑いのある人物の関係部署や取引先などで聞き取り調査を実施します。これは、職場環境を把握することに加え、架空取引がなぜ起こったのかという原因を明らかにするために行われます。
④鑑識調査やPCのフォレンジック調査
不正取引の法的証拠を見つける場合、鑑識調査やフォレンジック調査を行う必要があります。
鑑識調査とは通常、各都道府県の警察本部に所属している鑑識官によって行われます。鑑定調査を行うには、警察が事件・事故と判断しなければいけないため、被害届の提出・受理が必要となります。
またフォレンジック調査とは、パソコンやスマートフォンといった電子媒体に残されているデータや操作履歴等から必要な情報を抽出・解析する手法のことです。この手法はサイバー攻撃以外にも、不正行為の調査に対しても活用することができます。
デジタルデータの適切な証拠保全やログの解析調査などは、フォレンジック技術に対する専門知識があれば、社内で調査することが可能ですが、架空取引などの不正行為は組織ぐるみで行われることもあります。
よって、デジタルデータを証拠として法的利用するのであれば、第三者機関に相談し、客観的な調査を行うことを推奨します。なお、フォレンジック調査会社によっては、法的利用可能な報告書作成サービスを行っているところもあります。法廷でも調査報告書をそのまま証拠として使用することができるため、業務量を削減したいときは相談・見積もりの段階で調査報告書について相談しておきましょう。
フォレンジック調査会社への相談方法
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また、証拠利用の場合、法廷資料としても活用できる報告書の作成も承っております。詳細については、まず専門アドバイザーまでご相談ください。
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社内でインシデントが発生した際、フォレンジック調査を行うかまだ決定していない段階であっても、一度専門会社へ相談するのをおすすめします。なぜなら専門的なノウハウを持たない中で自社調査を行っても、信憑性が疑われやすく、正確な実態把握ができなかったり、証拠となるデータが故意に改ざん・削除されている可能性も想定されます。
調査の実施が未確定の場合であっても、今後のプロセス整理のためにもまずは実績のある専門会社へ相談することを推奨しています。
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架空取引が行われた疑いがあり、従業員の懲戒解雇や刑事告訴などを考えている場合は、客観的な証拠が必要です。企業で調査をするにあたり、領収書の取得などは可能ですが、他社との電子メールの文面や、デジタルデータの請求書など、電子データ上の証拠は犯人によって隠滅される可能性が高いです。
加えて、運よくデジタルデータを取得できた場合でも、機器の使用を継続したことにより、データの改ざんや消去が発生する可能性もあります。改ざんされたデジタルデータは同一性を証明できず、証拠として取り扱われない可能性があるため、デジタルデータを証拠として取得し、法的に活用するにはフォレンジック技術が必要になります。
更に裁判でデジタルデータを証拠とするには客観性を証明する必要があるため、社員による調査だけではデータの改ざんが疑われてしまいます。したがって、外部のフォレンジック専門業者と連携して証拠集めを行うことをおすすめします。
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