企業内での勤怠データの改ざんは、従業員の労働時間や賃金の不正操作に直結し、労働環境や企業の信頼性に大きな影響を与えます。特にPCログの解析は、こうした不正行為を特定するための強力なツールです。
しかし、PCログを証拠として利用する際には、正確で信頼性のあるデータ収集と適切な手続きが求められます。違法な手段や管理不備によるデータの不正使用は、さらなる法的リスクを生む可能性があります。本記事では、PCログを活用して勤怠改ざんを調査するための重要なポイントと、企業が取るべき対応策を解説します。
目次
勤怠改ざんが疑われる場合PCログの取得が有効
社内で勤怠の改ざんが疑われる場合、PCのログを調査し、改ざんの有無を調査することが有効です。PCのログを調べることで以下の内容がわかります。
- ユーザーのログイン・ログアウト時間
- システムへのアクセス履歴
- 使用されたアプリケーションの動作記録
- ファイルの変更履歴
- ネットワークアクセスの履歴
- システムエラーやクラッシュの履歴
勤怠管理システムのデータが不正に操作された場合、PCのログと比較することで、改ざんの痕跡を特定することが可能な場合があります。また、証言など他の証拠と組み合わせて従業員が実際に勤務していた時間を特定し、勤怠改ざんの有無を明らかにできることもあります。

勤怠改ざんの証拠収集でPCログを利用する際の注意点
企業内で勤怠改ざんによる懲戒処分や訴訟を考えている場合、PCログを証拠として取り扱う場面も出てきます。しかし、デジタルデータであるPCログは特性上、改ざんや削除が容易なため、証拠とする際は4つの注意点を守りましょう。
証拠保全を行わずにログを分析しない
PCログは証拠保全を行わずに直接ログを解析すると、データが改ざんされたり、上書きされるリスクがあります。故にデータの取得日時や方法を記録し、後からその証拠が信頼性を持っていることを証明できるようにしておく必要があります。これにより、法的な証拠としても活用できるログを確保することが可能です。
タイムスタンプの整合性を確認せずに証拠としない
タイムスタンプとは、データやイベントに関連する「日時情報」を記録したものです。内容はファイルの作成・変更・アクセスされた日時や、システムで発生したイベントの発生時刻などです。タイムスタンプをいつデータや操作が行われたかなどを追跡・管理することが可能です。
システムの時間設定がずれていると、ログの記録自体が無効とされる可能性があります。勤怠システムとの時刻の整合性が取れているか確認し、必要に応じてタイムゾーンの設定やサーバー時間の同期を確認します。PCログのタイムスタンプが正確であることを確認しないまま、証拠として使用することは避けましょう。
機密情報や個人情報の管理に注意する
ログには、機密情報や個人情報が含まれていることがあるため、その取り扱いには細心の注意が必要です。ログの収集や分析を行う際には、情報漏洩のリスクを回避するために、暗号化やアクセス制限を設けておきましょう。
また、ログを取り扱う担当者を限定し、情報が不適切に外部に流出しないようにするための管理体制を整える必要があります。情報の適切な管理が、企業の信頼性を守るためにも不可欠です。
専門家を介さずにログを取得・分析してはいけない
PCログの取得・解析には専門的な知識が必要です。ログの中にはPCがシャットダウンされると削除されるものや、PCの故障、証拠隠滅によってログが意図せず改ざんされてしまう可能性があります。
特に訴訟などの法的措置を視野に入れている場合は、証拠能力のあるPCログの用意が必要になることがあります。このような場合は社内で調査を完結させるのではなく、専門家であるフォレンジック調査会社に相談しましょう。
フォレンジック調査とは、電子端末内のデータを証拠として保全・解析する調査です。第三者が調査にあたることで、調査と証拠に客観性を持たせることができます。調査会社によってはそのまま公的機関に証拠として提出できる調査報告書の作成まで可能なところもあります。
勤怠改ざんの証拠を企業で収集する方法
企業内で勤怠改ざんが疑われる場合、以下の紹介するものが証拠として有効な場合があります。また、証拠の収集は正確かつ法的に適切な方法で行う必要があります。
勤怠管理システムのアクセスログ・変更履歴の確認
勤怠管理システムには、ユーザーのアクセス履歴やデータ変更履歴が記録されています。これらのログを確認することで、勤怠データが誰によって、いつ変更されたのかを特定できます。
特に、管理職やシステム管理者が不正に勤怠データを操作した場合、変更履歴が重要な証拠となります。システム設定により、変更ログの保持期間が短い場合は、速やかに確認し、保存しておくことが必要です。
監視カメラやセキュリティシステムの映像記録
社内の監視カメラやセキュリティシステムは、従業員の出退勤時刻を確認するための物的証拠として活用できます。勤怠データとカメラ映像を照合することで、実際の出勤時刻や退勤時刻と勤怠システムの記録が一致しているかを確認できます。
これにより、代理打刻や不正な出勤記録の有無を証明することが可能です。映像記録の保持期間が限られている場合、早めに取得・保存しておくことが重要です。
メールや社内チャットの履歴を確認する
業務中にやり取りされたメールや社内チャットの履歴も、勤怠データ改ざんの証拠として有効です。特に、勤務時間外に送信されたメールや、勤務時間内でのチャット履歴は、従業員が実際に業務を行っていたことを証明する証拠になります。これらの履歴を取得し、勤怠システムの記録と比較することで、データの改ざんが行われたかどうかを確認できます。
従業員に聞き取りを行う
従業員に直接聞き取りを行うことも、有効な証拠収集手段の一つです。特に、代理打刻や不正な勤怠操作に関与していた従業員や、それを目撃した同僚からの証言は、証拠として重要です。
聞き取り調査を行う際には、証言内容を詳細に記録し、後で法的な証拠として活用できるように準備します。証言は書面で取得し、できる限り客観的な内容にすることが望ましいです。
PCやサーバーの操作ログを取得する
PCやサーバーには、ユーザーがシステムにアクセスした際のログや操作履歴が記録されています。これらのログを確認することで、従業員が実際に勤務していた時間や、勤怠データが変更された時間帯を特定することができます。操作ログをエクスポートし、必要な情報を抽出することで、勤怠データの改ざんを明確にすることが可能です。

ネットワークログを解析する
ネットワークログを解析できるツールを使用して、不正アクセスやリモート操作の痕跡を確認することができます。例えば、外部から勤怠システムにアクセスしてデータを変更した場合、ネットワークログを分析して、改ざんのタイミングや操作を行ったIPアドレスを特定します。

フォレンジック調査会社に相談する
PCログから勤怠を調査するにあたり、企業内部での調査が難しい場合、フォレンジック調査会社に依頼することが有効です。調査会社によっては削除されたデータの復元や、取得が困難なログの分析、法的な証拠として活用できる報告書の作成まで行うことがあります。
このようにフォレンジック調査会社に調査を外注することで、訴訟などの法的手続きに必要な証拠をスムーズにそろえられる場合もあります。
社内不正調査をしたい場合は、専門業者に相談する

サイバー攻撃、不正アクセス、マルウェア感染のような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。
特に、法的手続きが絡むケースや被害が広範囲に及ぶ場合は、専門家の力を借りることで被害の最小化と信頼性の高い証拠の収集が可能です。
>情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務とは?詳しく解説
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調査後に勤怠改ざんが発覚した後の企業の対応
PCのログ調査や端末のフォレンジック調査が完了した結果、勤怠の改ざんが明らかとなった場合、その後の企業の対応は以下の通りです。
内部監査を実行する
勤怠データの改ざんが発覚した場合、まず最初に企業は内部監査を実行する必要があります。内部監査では、勤怠管理システムや関連するログの精査を行い、どのデータがどのように改ざんされたのかを特定します。
内部監査では、改ざんの規模、影響範囲、関与者を明らかにするために行われます。また、勤怠システム全体の運用が適切かどうかも確認し、今後同様の問題が発生しないよう、管理体制の改善策を検討します。監査結果は社内の上層部に報告し、適切な対応を迅速に取るための基盤となります。
関係者へのヒアリングと懲戒処分の実施
内部監査の結果を基に、勤怠データ改ざんに関与した可能性がある関係者へのヒアリングを行います。ヒアリングでは、改ざんの理由や指示がどこから来たのか、改ざんに至った経緯を詳細に調査します。特に管理職やシステム管理者の関与が疑われる場合は、適切な処分を検討します。
懲戒処分の範囲は、口頭注意から減給、場合によっては解雇などに及ぶことがあります。ただし懲戒処分を行う際は、労働基準法に基づいた手続きが必要です。関係者全員にヒアリングを行い、再発防止策を講じます。
改ざんされた勤怠データを修正する
勤怠改ざんが確認された場合、改ざんされたデータを正しい内容に修正することが不可欠です。これは、改ざん前の正確な勤怠データに基づき、適切な労働時間や残業時間を再計算するプロセスです。
勤怠管理システムにおける変更履歴やバックアップデータを参照し、正しいデータに修正します。また、データの修正が完了したら、その内容を関係者に説明し、承認を得ることが大切です。さらに、今後の勤怠データの管理体制を強化するため、定期的な監査を導入することが望ましいです。
未払い残業代の支払いを行う
勤怠データの改ざんにより未払いとなった残業代が発生した場合、企業は速やかにその支払いを行わなければなりません。正しい勤怠データに基づいて、未払いの残業時間を正確に計算し、労働基準法に基づいた適切な割増賃金を支払います。
労働基準監督署との連携
勤怠データの改ざんが発覚した場合、労働基準監督署との連携も必要です。労働基準監督署は、企業の労務管理を監視・指導する機関であり、未払い残業代や労働時間に関する問題について助言や指導を行います。改ざんが法的問題に発展する場合、企業は監督署の指示に従い、適切な対応を行う必要があります。
また、労働基準監督署に報告することで、今後の監査体制や労働管理の改善点についての指導を受けることができ、企業はコンプライアンスを守りつつ健全な労働環境を構築できます。
よくある質問
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