デジタルフォレンジックは、サイバー犯罪の捜査や社内不正の調査、訴訟対応など、あらゆる場面で求められる高度な調査技術です。本記事では、初心者にもわかりやすく、最新のテクノロジーや手法を交えて、デジタルフォレンジックの全体像を徹底解説していきます。
目次
現場で活用されるデジタルフォレンジック技術の詳細
このセクションでは、デジタルフォレンジックにおける具体的な「技術」に絞って解説します。法的証拠を保つために必要な保全手法から、最新のAI解析、自動化ツール、IoT・クラウド対応まで、実務で使用されている技術体系を体系的に紹介します。
証拠保全:ハッシュ値とChain of Custody
証拠性を保つために最も重要なのが「データの改ざんが行われていない」ことを証明する技術です。
その際に使われるのがハッシュ値による改ざん検知と、Chain of Custody(証拠管理履歴)の文書化です。
- 対象のデバイスからイメージ(bit単位の完全コピー)を取得
- 取得したデータにハッシュを計算し、原本と照合して整合性を確認
- 関与した調査員・日時・取得手順をChain of Custody文書に記録
裁判に提出する場合、この手順がなければ証拠として却下されるリスクがあります。

データ復元:削除データの再構築技術
ユーザーが削除したファイルでも、ディスク上のデータ構造を解析することで復元できる場合があります。
復元には以下のようなテクノロジーが使用されます:
- NTFS/MFT解析:Windowsのマスターファイルテーブルを分析し、削除ファイルのパスや作成日時を取得
- 未割り当て領域のサルベージ:ファイルシグネチャ(PDF, JPEGなど)をもとに断片化されたデータを復元
- タイムライン分析:復元したファイルの使用履歴を時系列で並べて視覚化
これにより、「削除して隠したはずのファイル」が証拠として復元されるケースが多くあります。
ログ解析:イベントログ・通信ログの追跡
不正アクセスやマルウェア活動の痕跡を追うには、ログ解析が不可欠です。
対象となるログの例:
- OSログ(Windowsイベントログ、Linux syslog)
- ネットワークログ(ファイアウォール、プロキシ)
- クラウドログ(Google Workspace Audit Log、AWS CloudTrail)
- 関連するログを時系列順に収集
- 不審な操作(深夜のログイン、権限昇格など)をフィルタリング
- 侵入経路や攻撃対象を特定
特にログは改ざんのリスクがあるため、リアルタイム収集やミラーログの取得が推奨されます。
AIによる異常検知と行動パターン分析
従来のログ解析や手動調査では、正規アクセスに見える内部不正を見逃すリスクがあります。
AIを用いることで、以下のような分析が可能です:
- 通常と異なる時間帯のログインを自動で検出
- アクセス先の変化や異常なファイル操作を機械学習で判断
- 個別ユーザーの「いつもと違う動き」を数値化
たとえば、AIが「異常行動スコア80以上」のアクティビティを即時アラートし、管理者が確認後に証拠保全へ移行する、という運用が現実的になっています。
IoT・クラウド対応の解析技術
スマートロック、IPカメラ、クラウドストレージなどの「エッジ端末」も今やフォレンジックの対象です。
- デバイス固有の通信プロトコル(MQTT, CoAP)に対応した取得ツールを使用
- サーバーログと時刻同期し、操作履歴をタイムライン化
- 端末のログ、映像、温度センサー、GPS等を複合的に照合
特にクラウドでは証拠が「一定期間で自動削除される」こともあるため、リアルタイム対応が極めて重要です。
自動化と統合解析ツールの活用
フォレンジック調査は膨大なデータと作業工数が伴います。そこで近年は、自動化や統合ソリューションの導入が進んでいます。
- 対象デバイスを接続し、データを抽出
- キーワード、日付、ファイル種別で高速フィルタ
- 調査レポートを自動生成し、証拠提出へ
こうした自動化により、従来1週間かかっていた調査が1〜2日で完了するケースもあります。
デジタルフォレンジックの最新技術とトレンド
デジタルフォレンジックの世界では、技術革新が日進月歩で進んでおり、AIやクラウド、IoT対応など、新たな課題とともに対策も進化しています。ここでは、現場で導入されている最先端の技術と、それによって可能となる高度な解析手法について解説します。
AIと機械学習によるパターン分析
膨大なログデータやネットワークトラフィックから異常検知を行う上で、AIは不可欠な技術となりつつあります。人間が見逃すような微細なパターンや行動の兆候を学習・認識し、不正アクセスやマルウェアの侵入経路を即時に検出可能にします。
- AIエンジンにログや通信データを取り込む
- 機械学習モデルが通常パターンとの乖離を分析
- 異常と判定された箇所をピンポイントで可視化
特に、内部犯行のような「正規権限を持った攻撃者」の分析には、AIによる振る舞い検知が非常に有効です。
ビッグデータ解析で広範囲な証拠を発見
大規模なITインフラを持つ企業では、収集するログの量も膨大になります。その中から事件と関連するデータを抽出するには、HadoopやElasticsearchといったビッグデータ処理基盤の導入がカギを握ります。
たとえば、以下のような活用が可能です。
- 大量のアクセスログから特定のIPアドレスの動きを抽出
- 時間軸で連続する不審な操作を視覚化
- ファイル操作、アカウント使用、通信履歴を横断的に検索
これにより、従来では「調査対象から外されていた」ような周辺データまで解析対象に含められるようになります。
クラウド環境への対応
近年はSaaSやクラウドストレージの利用が一般化していますが、これに伴い「クラウド上の証拠保全」も急務となっています。特にMicrosoft 365、Google Workspace、AWSなどの利用環境では、専用のフォレンジックツールが必要です。
代表的なクラウドフォレンジックの技術。
- APIログの自動取得
- クラウド上の削除済みファイルの復元
- ユーザーの操作履歴ログの抽出
クラウドはリアルタイムで証拠が改ざん・削除されやすいため、迅速な保全と専門知識が不可欠です。
IoTデバイスのデータ分析
スマートロック、監視カメラ、ウェアラブルデバイスなど、IoT機器は事件現場の「新たな目撃者」になりつつあります。
- 対象となるIoT機器を物理的に確保
- 通信プロトコル(MQTTなど)で内部ログを取得
- 時刻同期を行い、他の証拠と照合
特に防犯用途で用いられているIoT機器は、ログや映像を通じて事件の前後関係を明らかにする「動かぬ証拠」となります。
自動化ツールによる作業効率化
デジタルフォレンジックは細かい分析作業が多く、調査時間が長期化する傾向があります。これを改善するため、最近ではオープンソースや商用の自動化ツールが導入され始めています。
ツールを適切に活用することで、調査スピードと精度を同時に向上させることが可能です。
量子コンピューティングの可能性
現時点では実用化には至っていないものの、将来的に量子コンピュータはフォレンジックの解析速度を飛躍的に向上させる可能性があります。とくに暗号解読やハッシュ解析の分野では革命的な変化が見込まれています。
ただし、量子耐性を持ったセキュリティ技術も同時に進化しており、調査者と攻撃者の「いたちごっこ」はこれからも続くと予測されます。
フォレンジック調査はデジタルデータフォレンジックに依頼

適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。特に、法的手続きが絡むケースや被害が広範囲に及ぶ場合は、専門家の力を借りることで被害の最小化と信頼性の高い証拠の収集が可能です。
当社では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
デジタルデータフォレンジックの強み
デジタルデータフォレンジックは、迅速な対応と確実な証拠収集で、お客様の安全と安心を支える専門業者です。デジタルデータフォレンジックの強みをご紹介します。
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(※1)集計期間:2016年9月1日~
(※2)集計機関:2017年8月1日~
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(※3)第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく。(2007年~2017年)
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