Cactusランサムウェアは、ファイルの拡張子を「.CTS0」「.CTS1」に変更した上で、ネットワーク上にある端末やファイルを暗号化するマルウェアの一種で、復号キーと引き換えに身代金を要求し、支払わなければ情報をWeb上に公開すると脅迫します。
Cactusランサムウェアに感染するとネットワーク上で感染が拡大し、対応が遅れると、データの消失や業務の停止など会社に大きな被害を与える可能性があります。大企業の事例では、数億円の対策費用が発生し、中小企業では倒産の可能性もあることから、インシデント時は適切かつ迅速な初動対応が求められます。
この記事では、Cactusランサムウェアの特徴と対処法を解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
Cactusランサムウェア(「.CTS0」「.CTS1」)の特徴
Cactusランサムウェア(「.CTS0」「.CTS1」)の特徴は以下のとおりです。
- 「.CTS0」「.CTS1」拡張子がファイルに追加される
- データが暗号化され、ランサムノート「cAcTuS.readme.txt」が表示される
- Windowsを標的にしている
「.CTS0」「.CTS1」拡張子がファイルに追加される
Cuctusランサムウェアは「.CTS0」「.CTS1」 拡張子をファイル名に追加します。たとえば、以下の画像を見ると、”1.jpg”という写真のファイル名に「.CTS1」という拡張子が追加されていることが分かります。
また、Cactusランサムウェアは暗号化するファイルを準備する際、Cactusは拡張子を.CTS0に変更し、暗号化後に.CTS1に変更します。
出典:PCrisk
データが暗号化され、ランサムノート「cAcTuS.readme.txt」が表示される
攻撃が行われた後、攻撃者は「ランサムノート」と呼ばれるテキストファイルを被害者に表示します。このノートの内容を要約すると以下の内容が含まれています。
- Cactusによってデータが暗号化されたこと
- データの復元には身代金を払うこと
- cactus787835@proton.me 宛てに電子メールで攻撃者に連絡すること
- Toxチャットでも連絡をすること
ただし、Cactusランサムウェアに感染した時点で個人情報や機密情報などは流出している可能性が高いため、身代金の支払いは推奨されません。身代金を支払ったとしても復号キーで暗号化が解除されるとは限らず、身代金が犯罪の資金となって企業のステークスホルダーを攻撃する可能性があるためです。
出典:PCrisk
このとき優先すべきことは、どのシステムやデータが影響を受けたかを明確にすることです。支払ったとしてもデータが復元される保証はないので、 IT部門や外部のセキュリティ専門家に連絡し、攻撃の調査と対処を依頼しましょう。
特にランサムウェア感染の被害を最小限に抑える場合、被害に遭った時点ですぐにランサムウェアの侵入経路や被害の範囲を把握し、情報漏えいの有無を特定できる「フォレンジック調査」の専門家に対応を依頼することが重要です。
被害に遭った場合、速やかにフォレンジック調査を実施し、被害を最小限に抑えましょう。
マルバタイジングを行っている
マルバタイジング(malvertising)とは、「マルウェア」と「アドバタイジング」を組み合わせた造語で、悪意ある広告を介してマルウェアを配布するサイバー攻撃手法を利用しています。
マルバタイジングでは、アドネットワークを利用して不特定多数のWebサイトに悪意ある広告を掲載し、マルウェアを拡散したり不正なサイトにリダイレクトさせたりします。感染した広告を検知することが難しく、バナー広告をクリックしなくても広告を表示しただけで感染するケースもあります。
出典:JPCERT
Cactusランサムウェア感染時に有効なフォレンジック調査とは
ランサムウェアに感染し、適切な対処ができる企業はほとんどありません。むしろ自社だけで対応を判断するのが一番のリスクです。ランサムウェアに感染した場合、情報漏えいや更なるサイバー攻撃被害が疑われるため、まずはサイバーセキュリティの専門家と提携して感染原因の究明や被害範囲の特定を行うことが重要です。
この際、有効なのが「フォレンジック調査」です。
フォレンジック調査とは、コンピュータやネットワークに保存されたデータやログを分析し、インシデントの原因や経緯、影響範囲を解明する調査手法です。ランサムウェアの感染調査では駆除・隔離に加えて、侵入経路や情報漏えいの有無を確認することができます。
私たちデジタルデータフォレンジックは、官公庁、上場企業、捜査機関等を含む幅広いインシデントに対応経験があり、攻撃に使用された侵入経路や漏えいデータを迅速に特定します。ご相談や詳細な情報については、いつでもお気軽にお問い合わせください。
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フォレンジック調査の詳細については下記の記事で詳しく解説しています。
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企業の情報漏えいインシデント対応が義務化されています
2022年4月から改正個人情報保護法が施行されました
2022年4月に施行された「改正個人情報保護法」では、個人データの漏えい、あるいは漏えいが発生する可能性がある場合、報告と通知が法人に義務付けられました。違反した企業には最大1億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
もし、マルウェア・ランサムウェア感染、不正アクセス、社内不正、情報持ち出しのような情報セキュリティ上の問題が発生した場合、まずは感染経路や漏えいしたデータの有無などを確認することが重要です。
ただ、調査を行うには、デジタルデータの収集・解析などの専門技術が必要です。これは自社のみで対応するのが困難なため、個人情報の漏えいが発生した、もしくは疑われる場合は、速やかにフォレンジック専門家に相談し、調査を実施することをおすすめします。
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ランサムウェア感染時の対応
ランサムウェアに感染した場合は、以下のフローで被害を最小限に抑える必要があります。
感染時は慌てずに、過不足のないフローで適切な対応を取りましょう。 ランサムウェアに感染した場合の対応は次のとおりです。
- 端末をオフラインにする
- リストアする(バックアップから感染前のデータを復旧する)
- ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時、企業がとるべき対応については下記でも詳しく解説しています。
①端末をオフラインにする
まずは、ネットワークから感染した端末を切り離す必要があります。これにより感染が広がることを防ぐことができます。
②リストアする(バックアップから感染前のデータを復旧する)
さらに、感染したサーバーのバックアップを確認し、最新のバックアップからデータを復元することができます(これをリストアと言います)。これにより、被害を回復することができます。
ただし、ランサムウェア感染時は、復旧だけではなく、攻撃経路の特定や、再発防止策の検討が必要となります。攻撃に遭った場合は「フォレンジック調査」を検討しておきましょう。
③ランサムウェア感染調査に対応した専門業者を利用する
ランサムウェア感染時は、感染経路を特定し、再発防止策を講じる必要があります。
たとえば「脆弱性」を悪用した攻撃を受けた場合、再攻撃を受けないよう、適切な対応を行うとともに、どの端末の、どのデータが被害に遭ったのかを確認する必要があります。
特に法人の場合、個人情報の漏えいが疑われる際は、関係各所に向けた「被害報告」が必要ですが、自社調査だけでは客観性や正確性が担保できないことがあります。セキュリティツールはマルウェアを検知・駆除できますが、感染経路や情報漏えいの有無を適切に調査することはできないからです。
したがって、ランサムウェア感染時は、感染経路調査に対応した「フォレンジック調査」を利用することが有効です。
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Cactusランサムウェア(「.CTS0」「.CTS1」)の感染経路
ランサムウェアの感染を防ぐためには、感染ルートを理解し、適切な対策を取ることが重要です。ランサムウェア全般でよくある感染経路は下記のとおりです。
- マルバタイジングを使った侵入
- 「Qlik Sense」の脆弱性からの侵入
- VPN機器からの侵入
- RDPからの侵入
マルバタイジングを使った侵入
前述したように、Cactusランサムウェアはマルバタイジングを行い、機器に侵入され感染します。
攻撃者はマルバタイジングを行い、クリックなどの動作を行った人に対し機器に保存されている認証情報を、攻撃者が管理するサーバーに送信します。その認証情報を用いて、不正に機器に侵入し、Cactusランサムウェアに感染させるという手法を用いています。
「Qlik Sense」の脆弱性からの侵入
攻撃者がターゲット環境への初期アクセスを取得するための主な手段として、Qlik Sense の脆弱性を利用した侵入を行っていると考えられています。CactusランサムウェアはQlik Sense Schedulerに侵入し、Cactusランサムウェアを展開します。攻撃者はPowerShellとBackground Intelligent Transfer Service(BITS)を使用して永続性を確立し、リモートアクセスを提供するツールをダウンロードします。更に、情報を盗み出し、データを暗号化して被害者を脅迫する手法を採用しています。
※永続性とは、感染したパソコンの設定を変更して次回起動時にマルウェアを自動的に起動させる仕組みのこと
Qlik Senseの主な脆弱性は以下の3つです。
- CVE-2023-41265 (CVSSスコア: 9.9):HTTPリクエスト・トンネリングの脆弱性
- CVE-2023-41266 (CVSSスコア: 6.5):パストラバーサル脆弱性
- CVE-2023-48365 (CVSSスコア: 9.9):承認不要のリモートコード実行脆弱性
VPN機器からの侵入
警察庁の調査によると、2023年上半期においてはランサムウェアの感染経路は「VPN」からの侵入が最も多く、全体の71%という結果になっています。
Cactusも同様に、Fortinet VPN機器の脆弱性を悪用し、イニシャル・アクセスを行い侵入していると考えられています。
企業は感染を防止するためにも、テレワークでVPNを使用する際には、適切なバージョンアップを行うことが重要です。またVPN以外のセキュリティ対策としてファイアウォールやアンチウイルスソフトウェアを導入し、強力なパスワードの使用や、適切なアカウント管理をおこなう必要があります。
RDPからの侵入
警察庁の調査によると、RDP(リモートデスクトップ)は、ランサムウェアの侵入経路として10%を確保しています。
RDPもVPNも、組織におけるシステム上重要な役割を担っていますが、重大な脆弱性も報告されており、ここから攻撃者はIDやパスワード情報を割り出し、不正ログイン、感染拡大を図っています。
被害を未然に防ぐためにも、パスワード更新、定期的なセキュリティチェックなどが必要です。またVPNも同様に、機密情報の暗号化や不正アクセスの監視などが必要です。
Cactusランサムウェア(「.CTS0」「.CTS1」)感染時、感染経路調査を行うメリット
ランサムウェアに感染した場合、感染経路を調査することで、攻撃者の侵入方法を特定し、将来の攻撃から身を守るために対策を講じることができます。
ランサムウェア感染の調査を行う方法として「フォレンジック調査」を挙げることができます。フォレンジック調査とは、電子機器から証拠を収集・分析して、インシデントの詳細を解明する手法で、たとえば攻撃者がどのようにランサムウェアを侵入させたか、どのような手法や脆弱性が悪用されたかなど、感染経路や情報漏えいの特定に役立ちます。
ランサムウェア感染時の対処におけるフォレンジック調査のメリットは次のとおりです。
- 被害範囲を特定できる
- 感染経路や攻撃手法の解析・証拠が確保できる
- 専門エンジニアの詳細な調査結果が得られる
- セキュリティの脆弱性を発見し、再発を防止できる
①被害範囲を特定できる
フォレンジック調査は、感染したシステムやネットワーク内での攻撃の拡散範囲を特定するのに役立ちます。これにより、被害を受けたシステムやデータ、ネットワークの一部を迅速に特定し、対処を開始することができます。
②感染経路や攻撃手法の解析・証拠が確保できる
フォレンジック調査では、ランサムウェアの攻撃手法や感染経路を解析し、証拠を確保できます。また、証拠の確保は、法的な措置や法執行機関との連携に役立つだけでなく、被害の評価や保険請求のためにも重要な要素となります。
③専門エンジニアの詳細な調査結果が得られる
フォレンジック調査の専門会社には、正確にハッキング被害の実態を確認するために必要な高度な技術を持つ専門エンジニアがいます。
自社調査だけでは不適切な場合がありますが、フォレンジックの専門業者と提携することで、調査結果をまとめた報告書が作成でき、公的機関や法廷に提出することができます。
④セキュリティの脆弱性を発見し、再発を防止できる
フォレンジック調査では、マルウェアによる被害の程度や感染経路を特定することで、今後のリスクマネジメントに貢献することが出来ます。弊社では、解析調査と報告書作成の他に、お客様のセキュリティを強化するためのサポートも提供しています。
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Cactusランサムウェア(「.CTS0」「.CTS1」)による被害の調査を行う場合、専門業者に相談する
マルウェア・ランサムウェア感染、不正アクセスのような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。しかし、自力で調査を行うと、調査対象範囲が適切でなかったり、意図しない証拠データの消失が発生しやすく、不完全な結果になる恐れがあります。
このような事態を防ぎ、適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。フォレンジック調査では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
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