企業や組織で不祥事や重大なトラブルが発生した際、真相の解明と信頼回復を目的に「第三者委員会」が設置される機会が増えています。
近年は第三者委員会の調査結果がニュースやSNSなどで注目を集めるケースも多く、企業が不正にどう対応したのか、調査がどれだけ客観性・透明性を重視し行われたかが社会的な評価に直結するようになっています。
その流れを受けて、以前より注目を集めつつあるのが電子データの解析・調査を可能にする「フォレンジック調査」です。本記事では、企業不正の現場で起こりうる“証拠隠し”に対するフォレンジック調査の有効性と、第三者委員会での活用方法について解説します。
目次
フォレンジック調査とは何か
「フォレンジック調査」とは、パソコンやスマートフォンなどの電子機器に残る操作履歴や削除されたデータを専門的な方法で復元・分析することで、「誰が、いつ、何をしたか」といった事実を明らかにする技術です。
こうしたデータは、関係者の証言や紙の資料だけでは見えない“事実”を可視化し、第三者委員会が行う調査を客観的に裏付ける材料として大きな力を発揮します。

意図的に削除されたメッセージやファイルも、専門的な技術で調査
不正調査においては、関係者が証拠隠滅のためにメールやチャットの履歴、業務ファイルなどのデータを意図的に削除・改ざんするケースがあります。こうした操作の痕跡を解析・調査でき、復元できる可能性もあるのがフォレンジック技術の強みのひとつです。
特に改ざんや削除の対象になりやすいデータ
改ざんや削除の対象になりやすいデータには次のようなものが挙げられ、改ざん、削除により調査が難航することもあります。
- メールの送受信履歴
- USB機器の接続記録
- ファイルの更新履歴
こうしたデータの復元には、専門的な知識と正確な手順に基づいた対応が求められます。フォレンジック調査ではあらかじめ定められたステップがあり、「正当な手法で調査が行われたこと」を調査結果とともに示すことで、信頼性のある証拠として扱うことができるのです。

証拠として用いるなら「データ保全」というステップも重要
フォレンジック調査が重要視される理由のひとつとして、「デジタル証拠を安全な状態で残すことができる」という点です。
一般的なフォレンジック調査は、情報漏洩、不正行為やサイバー攻撃の全容を解明するために、次のような流れで証拠を収集・分析します。
- データの改ざんや削除が起こらないようデジタルデータの取得・保全をする
- 削除・隠ぺいされたデータを含む、抽出データを解析
- 各種データから、調査目的に応じた情報を抽出
- 調査結果をまとめた詳細な報告書を作成
デジタルデータの取得・保全をすることにより、「後から変更されていない、信頼できる証拠」として扱えるのです。単にデータを解析するだけでなく、証拠そのものの信頼性を守るという役割も担っているのがフォレンジック技術の特徴です。
不正の現場で実際に起こりうる「証拠隠し」の実態
悪意ある関係者が関わるケースでは、非常に高い確率で証拠隠滅が発生します。動機は「不正を隠蔽したい」という一点に集約され、ログやファイルなどのデジタル証拠を意図的に削除・改ざん・隠蔽しようとします。
証拠隠滅が行われやすいタイミングや状況には、以下のようなものがあります。
- 不祥事発覚直後、調査の初動が遅れた場合
内部通報や報道により不祥事が発覚してから、調査着手までの間に時間が空くと、その間に関係者が証拠となるメールやファイルを削除する可能性が高まります。 - ITリテラシーのある関係者・役職者が関与している場合
証拠となり得るデータ(メール、チャットログ、ファイルなど)を業務システムから削除したり、共有フォルダのアクセス権限を操作することで、意図的に記録を消去・改ざんできてしまいます。 - 調査対象者に対して事前通知があった場合
「ヒアリングを行います」といった事前連絡により、関係者が自らの関与を隠す目的で証拠を処分する時間的猶予が生まれるケースがあります。 - 外部ストレージや私用端末に証拠がある場合
業務に私物PCや個人のスマートフォンを使っていた場合、調査の手が届かない領域で情報が削除されてしまうリスクもあります。クラウドサービスの場合はログ機能が無効化されていたり、他リージョンに分散されていることで証拠保全自体が難しいケースもあります。
管理部門や役職者など、特権アカウントを持つ従業員による不正行為では、犯人自身がアクセス権限を使ってログやファイルを削除することが可能です。
また、管理職以上になると行動履歴の記録や監視が甘くなる傾向があり、内部監査やシステム管理の「チェック対象」から外れている・形式的な監査で済まされる場合もあります。
- メールの一括削除を「容量削減のため」と説明する
- 資料を差し替えて「最新版に更新した」と伝える
など、形式上は不自然ではなく部下からも指摘しづらい状況だが、実は意図的な証拠隠しだったというケースも実在します。
したがって、第三者委員会による調査では、役職の高低に関わらず同等の調査対象とし、操作ログやファイル履歴などの客観的証拠を基に判断する視点が欠かせません。
フォレンジック調査のメリット
フォレンジック調査は、企業や組織が直面する不正行為や法的トラブルに迅速かつ正確に対応するための強力なツールです。以下では、フォレンジック調査がもたらす具体的なメリットについて説明します。
操作履歴や削除データなど、証拠としての裏付けが得られる
フォレンジック調査では、デジタル機器に残された操作履歴や不正行為の痕跡などを解析・調査を行い、デジタル証拠として活用することができます。例えば、スマートフォンやパソコンから削除された電子メールや文書ファイルなどを復元することで、不正行為や犯罪の証拠を収集できます。
関係者の証言とデジタル証拠を照合し、正確性を向上できる
フォレンジック調査で得られたデジタル証拠は、関係者の証言と照合することで事実関係の正確性を高める役割を果たします。メールやログなどの客観的な記録と関係者の供述内容を比較することで、不一致や矛盾点を洗い出せます。証言の信頼性が検証されるだけでなく、不正行為や事件の真相解明が進みます。
事実関係を明確化することで、再発防止策の具体性を高められる
フォレンジック調査によって得られた事実関係は、不祥事やインシデントの原因分析に役立ちます。原因が明確になることで、具体的かつ実効性の高い再発防止策を策定することが可能です。
例えば、社内システムにおけるアクセス権限が適切に管理されていない場合、不正が発生しやすくなります。退職者や異動者のアカウントが削除されず、依然としてシステムにアクセスできる状態が続いている事実が判明した場合、改善するための具体的な対策を講じることができます。
第三者委員会でフォレンジック調査が有効活用される場面
第三者委員会でフォレンジック調査が以前より重視されつつあるのは、客観性と透明性が求められるという点で相性が良いためです。
第三者委員会とは、企業や組織において不祥事や重大な問題が発生した際に、当該事案の関係者と利害関係を持たない中立的な立場の専門家によって構成される調査機関です。
参考:JFBA
とくに、下記のようなケースでは第三者委員会が設置されることが多いとされています。
- 上場企業やそれに準ずる大企業
投資家・株主・取引先など多くのステークホルダーが関与する企業では、社内調査だけでは信頼回復が困難な場合も多く、独立性の高い第三者委員会による報告が求められる傾向があります。 - 社内調査の信頼性に疑義が生じている場合
「調査の範囲が不十分」「調査結果に偏りがある」といった声が上がった場合、客観的な視点から再検証を行う手段として第三者委員会の設置が検討されます。 - 報告書の公表やマスコミ対応を想定している場合
企業の姿勢を明確に示す必要がある場面では、ステークホルダーへの説明責任を果たすためにも、第三者委員会による調査と報告が有効です。
フォレンジック調査専門業者の強み
第三者委員会の調査は、法的・倫理的な判断を要し、極めて繊細なものです。取り扱う情報には、社外に簡単に開示できない機微情報も含まれるため、外部と連携する際には、守秘性と柔軟な対応力が求められます。フォレンジック調査専門業者は、こういったニーズに対しても対応可能です。
- 日頃からサイバーインシデントや社内不正に関する対応経験が豊富であり、高い情報管理体制が実現できている
- 調査の目的や委員会の意向に応じて、調査手法や分析範囲を柔軟に設計できる
「絶対に外部に漏らせない」「調査対象を限定したい」といったニーズにも応えられる柔軟さと信頼性を兼ね備えていることから、第三者委員会とフォレンジック企業が連携することで、より適切な対応を実現できるのです。
関係者のヒアリング内容などに対し、事実関係を補強・検証する材料として、電子メールやログデータ、SNSのメッセージ履歴などを解析し、不正行為の証拠を収集する技術が活用されます。削除されたデータの復元も可能性があり、証拠隠滅を試みた当事者に対抗するために有効です。
当社のフォレンジック調査では、委員会の調査の精度と説得力をさらに高めるために、デジタルデータの保全から調査、報告まで柔軟に対応可能です。委員会の構想段階でもまずは一度ご相談ください。
第三者機関としてのフォレンジック調査は当社にご相談ください

社内不正・横領・情報持ち出し・職務怠慢のような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。第三者委員会の調査に限らず、第三者機関による客観的な調査が求められる際には、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。
特に、法的手続きが絡むケースや被害が広範囲に及ぶ場合は、専門家の力を借りることで被害の最小化と信頼性の高い証拠の収集が可能です。
>情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務とは?詳しく解説
当社ではインシデント事後対応に強みを持ち、初動対応から削除データの復元、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会までご対応することにより問題の解決を徹底サポートします。
フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
デジタルデータフォレンジックの強み
デジタルデータフォレンジックは、迅速な対応と確実な証拠収集で、お客様の安全と安心を支える専門業者です。デジタルデータフォレンジックの強みをご紹介します。
累計相談件数39,451件以上のご相談実績
官公庁・上場企業・大手保険会社・法律事務所・監査法人等から個人様まで幅広い支持をいただいており、累積39,451件以上(※1)のご相談実績があります。また、警察・捜査機関から累計395件以上(※2)のご相談実績があり、多数の感謝状をいただいています。
(※1)集計期間:2016年9月1日~
(※2)集計機関:2017年8月1日~
14年連続No.1のデータ復旧技術との社内連携
当社ではデータ復旧専門業者14年連続データ復旧国内売上No.1のデータ復旧サービス(※)も保有しており、証拠隠滅のため削除されたデータや破壊された機器も含めて高い復旧実績があります。フォレンジックエンジニアとデータ復旧エンジニアはワンフロアの作業環境で常に技術連携できる環境を整えています。
※データ復旧専門業者とは、自社及び関連会社の製品以外の製品のみを対象に保守及び修理等サービスのうちデータ復旧サービスを専門としてサービス提供している企業のこと。
※第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく(算出期間:2007年~2020年)
国内最大規模の最新設備・技術
自社内に40名以上の専門エンジニアが在籍し、フォレンジック技術でお客様の問題解決をサポートできます。多種多様な調査依頼にお応えするため、世界各国から最新鋭の調査・解析ツールや復旧設備を導入しています。
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ご相談から最短30分で初動対応のWeb打合せを開催・即日現地駆けつけの対応も可能です。(法人様限定)自社内に調査ラボを持つからこそ提供できる迅速な対応を多数のお客様にご評価いただいています。
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まとめ
社内コミュニケーションや業務がデジタル化し、PCやスマートフォン、クラウドサービスなど多様なデバイスや媒体が利用されるようになったことで、証拠の所在や完全な把握が難しくなってきています。
第三者委員会の調査においても、デジタル証拠の取得・解析を行うフォレンジック技術の重要性が高まりつつあり、今後さらに活用されていくことでしょう。
デジタルデータの調査を検討している場合は、フォレンジック調査の専門業者までご相談ください。