社内不正・労働問題

業務上横領・着服を認めない場合の証明に必要な証拠例・調査方法を徹底解説

  • 横領が疑われた従業員を事情聴取したが、横領を認めない
  • 内部告発でキックバックが発覚したが、証拠が不十分
  • 退職者の横領が発覚し裁判中だが、第三者から見て横領の証拠になるものが必要と言われた

業務上の横領・着服は、民事・刑事ともに不法行為です。放置していると、会社の経営に大きな影響を及ぼしかねないので、法的な手続きを踏んで迅速に対応する必要があります。

しかし証拠が不十分だと横領が疑われる人物から自白を引き出すことができないばかりか、警察の捜査や裁判を起こすこともできません。最悪の場合は本人が証拠隠滅したまま音信不通となり、賠償金を一円も請求できないおそれがあります。

この記事では、疑わしい人物が横領・着服を認めない場合、犯行を証明するために、必要な証拠や調査方法を解説します。

\24時間365日受付 初動対応のご相談・お見積もり無料/

業務上横領罪とは

業務上横領とは「業務上自己の占有する他人の物を横領すること」と刑法第253条で定義されています。具体例としては「経理担当者が会社の口座のお金を私的に自身の口座に振り込んだ」「配達員がお客様の荷物を自分のものにした」場合などが該当します。

業務上横領罪の量刑は刑法253条に「10年以下の懲役」と明記されています。判例により、横領した金額、示談の有無、横領犯の前科などを加味して決定される傾向にあります。

横領・着服を認めない場合に必要な証拠例

万が一横領犯が業務上横領や着服を認めない場合は、犯行を裏付ける証拠を入手することで、警察や弁護士との手続きや裁判をスムーズに進めることが可能になります。

業務上横領の証拠例は以下の通りです。

  • 横領を示唆するメールや会話記録
  • 出入金履歴
  • 防犯カメラなどの動画
  • 領収書
  • 外付けHDDやUSBメモリ
  • パソコンのファイルデータ
  • オークションサイト等のアクセス履歴
  • 外部機器の接続履歴
  • 商品番号
  • 横領犯の自白
  • 削除されたメール・ファイルデータ

従業員が横領・着服を認めないときの調査方法

法的対応を行う際は、関係者のヒアリングを実施したり、客観的な証拠データを精査・収集して、報告書にまとめましょう。必要な証拠データと社内における具体的な調査方法は以下の通りです。

  • 紙書類(帳簿類・伝票)などをチェックする
  • 監視カメラをチェックする
  • 横領が疑われる社員を監視する
  • 横領・着服の関係者の事情聴取や密告を録音する

紙書類(帳簿類・伝票)などをチェックする

まずは帳簿や伝票など紙書類から、不明な伝票、架空取引の記載がないかチェックを行いましょう。具体的な手口としては、記帳に書かれている数字の桁が多く記載されていたり、資材の発注を多めにしているケースが挙げられます。

監視カメラをチェックする

映像データは重要な証拠品となることが多いです。社内に監視カメラがある場合は確認しましょう。横領をした疑いのある従業員が不審な動きをしている可能性があります。

横領が疑われる社員を監視する

横領・着服を行った人物を証拠不十分な状態で事情聴取すると、横領・着服を認めないばかりでなく、証拠となるメールや書類を削除・改ざんしてしまうおそれがあります。最悪の場合は調査中に関係者が退職し、音信不通となることもあります。

業務分担を複数人で行う、監視ツールを導入するなどして、横領が疑われる社員を監視し、横領・着服の被害を抑えましょう。

横領・着服の関係者の事情聴取や密告を録音する

横領の明確な証拠の一つに犯人からの自白があります。横領の目撃者だけでなく横領犯に文事情聴取を行い、聴取した内容をボイスレコーダーやメモに保存しておきましょう。

ただし、業務上横領の関係者が複数人に及ぶ場合もあります。口裏を合わせられる可能性もあるため、横領犯への事情聴取は予告なく行うことが望ましいです。

業務上横領や着服で従業員を逮捕・告訴するには明確な証拠が必要

業務上横領や着服で従業員を処分するには明確な証拠が必要です。近年の業務上横領の犯行はパソコンの操作履歴やスマートフォンのメッセージが証拠となることも少なくありません。

横領が行われた証拠が不十分な場合、警察に事件として扱ってもらえないだけでなく、裁判で不利となる可能性があります。

  • 横領・着服の証拠がなければ犯人の逮捕や賠償金請求ができない
  • 証拠不十分で従業員を解雇するとリスクが高い
  • 裁判で証拠とするのが難しい証拠もある
  • フォレンジック調査ならデジタルデータを証拠として活用可能

横領・着服の証拠がなければ犯人の逮捕や賠償金請求ができない

横領犯に刑事裁判を起こすには、警察に被害届を提出し、捜査してもらう必要があります。横領を被害届には「いつ、どこで、だれが、何を、いくら、どのように横領したか」ある程度詳細に記載し、警察に受理されなければ捜査が行われません。

また賠償金の請求や横領金の返還請求に関しては、社内で示談を行うことも可能ですが、横領が行われた決定的な証拠がなければ、本人に横領を自白させて横領金返還の話し合いをすることも困難です。したがって証拠の収集は警察だけに任せず、社内でも証拠を収集する必要があります。

証拠不十分で従業員を解雇するとリスクが高い

一度きりかつ数千円程度の横領だとしても再犯により、巨額の横領事件に発展するおそれがあります。したがって横領が発覚した際は速やかに重い処罰を下す必要があります。

このような時でも懲戒解雇の適用は慎重に行いましょう。従業員は労働契約法第16条「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」を根拠に権利が手厚く守られています。

つまり従業員を懲戒解雇する際は、就業規則や雇用契約書上にある手続きを踏まなければ、裁判で解雇を無効とされる可能性が高くなるため注意しましょう。

裁判で証拠とするのが難しい証拠もある

業務上横領の明確な証拠となりやすいものが、監視カメラの映像です。しかし監視カメラの映像単体では、事件当時の状況などが考慮された結果、明確な証拠とは認められない場合があります。このように社内で収集した決定的な証拠でも裁判では客観的な証拠ではないと判断される恐れがあるため、証拠は複数個収集する必要があります。

出典 琉球バス事件判決

監視カメラ以上に客観的な証拠として認めることが難しい証拠には、メールの文面のスクリーンショット文書などのデジタルデータがあります。これらは一般的な操作でコピーを取っただけでは、視覚上は同じに見えてもデータ上は別物となってしまいます。したがってコピーのデータを提出しても、元データに削除や改ざんがあることを証明できないため、裁判で客観的な証拠として取り扱うことが困難になります。

このデジタルデータの同一性の問題を解決できる調査方法として「フォレンジック調査」があります。

フォレンジック調査ならデジタルデータを証拠として活用可能

デジタルデータを法的証拠として活用したい場合、横領に使用された端末のフォレンジック調査が有効です。

フォレンジック調査とは、電子機器からデータを証拠として保全し、解析する調査方法です。

具体的な例としては、以下のような情報を解析することができます。

  • アクセスログ:従業員がどのようなWebサイトやアプリケーションを利用しているか、またどのくらいの時間を費やしているかを把握することができます。
  • メールログ:従業員が送受信したメールの内容や宛先、送信日時などを確認することができます。
  • ファイル更新履歴:従業員が作成したファイルの更新履歴を確認することで、どのような作業を行っているかを把握することができます。

業務上横領にフォレンジック調査を活用するメリット

業務上横領に専門家によるフォレンジック調査を活用することで、以下のメリットが生じます。

  • 証拠データをより確実に確保・保全することができる
  • 証拠隠滅されたデータの検出、復元ができることがある
  • パスワードで閲覧できない機器も調査できることがある
  • 調査会社によっては行政機関に提出できる報告書が作成できる

フォレンジック技術を用いて収集した証拠は、調査前に行うデータの保全作業によって、ハッシュ値によるデータの同一性が担保できます。よって裁判所や警察などの法的機関に提出可能となり、裁判でも証拠として用いることが可能です。

しかし、社内でフォレンジック調査を完結させると証拠を改ざんした可能性を疑われ、裁判などで客観的な証拠とみなされないことがあります。したがって裁判や捜査機関に証拠を提出する場合は、第三者であるフォレンジック専門会社に相談することが適切です。

横領・着服の証拠を収集したい場合はフォレンジック調査会社まで相談

DDF

従業員に業務上横領・着服等の疑いがあり、従業員が横領の事実を認めていない場合は、客観的な証拠が必要です。企業内での調査で監視カメラの映像や領収書の取得は可能ですが、横領犯のメールの文面など、横領の事実が明確な証拠は隠滅される可能性が高いです。

加えて、運よくデジタルデータを取得できた場合でも、機器の使用を継続したことにより、データの改ざんや消去が発生する可能性もあります。改ざんされたデジタルデータは証拠として取り扱われない可能性があるため、デジタルデータの証拠の取得にはフォレンジック技術と呼ばれる、デジタルデータの証拠保全に特化した技術が必要になります。

更に裁判でデジタルデータを証拠とするには客観性を証明する必要があるため、社員による調査だけではデータの改ざんが疑われてしまいます。したがって、外部のフォレンジック専門業者と連携して証拠集めを行うことが必要です。

フォレンジック調査会社で業務上横領事案を調査する手順

フォレンジック調査会社に業務上横領事案を調査してもらう場合は、以下の手順で調査が行われます。

  1. ヒアリング
  2. デジタル機器の保全
  3. デジタル機器の解析・分析
  4. 削除されたデータの復元
  5. 調査結果の報告

DDF(デジタルデータフォレンジック)では、国内売上トップクラスのデータ復旧技術を活用し、パソコンやスマートフォンに残されたログの調査や閲覧履歴の復元、マルウェアの感染経路調査を行っています。

お困りの際はDDFまでご相談ください。証拠利用の場合は、法廷資料としても活用できる報告書の作成も承っております。

\24時間365日 相談受付/

企業が横領・着服調査をしないリスク

企業が横領・着服調査を行わない場合は、企業生命を左右しかねない深刻なリスクが発生するおそれがあります。企業が横領・着服調査を行わない場合の最悪の事態は以下の通りです。

  • 会社の資金が使い込まれて倒産する
  • 顧客情報や企業秘密が漏えいする場合もある
  • 無暗に懲戒解雇すると、裁判で解雇が無効となる恐れがある

会社の資金が使い込まれて倒産する

横領の傾向として、横領金は横領犯の遊興費や生活費、借金返済にあてられることが多数です。横領・着服の手口としては数百円から数万円の少額の横領から徐々に金額が増加する場合や、書類を偽造して、定期的にお金を自身の口座に振り込むといったものがあります。

横領は長期化するため、発覚が遅れたり、横領を調査せずに放置すると横領金が数千万から数十億円に及び、最悪の場合は会社が倒産する場合もあります。

また横領が発覚した場合、法人税の仮装、隠蔽行為が行われたとみなされることもあり、重加算税や青色申告が取り消されることもあります。

 顧客情報や企業秘密が漏えいする場合もある

横領・着服は物品も含まれます。特に企業として致命的なのは横領金以外にクレジットカードや住所などの個人情報が記載された顧客リストや企業秘密が持ち出されてしまうことです。流出した顧客リストは秘密裏に売買されたり、他社の営業活動に使用される可能性があります。

日本では2022年より企業が管理する個人情報が流出した場合は、個人情報保護委員会へ速報と確報の報告義務が発生します。報告対象となる個人情報は何点かありますが、流出した個人情報が以下の条件に当てはまった場合は3~5日以内に速報、30日以内に調査の結果を速やかに委員会へ報告しましょう。

  • 病歴や人種など要配慮個人情報
  • クレジットカード番号、口座番号、営業秘密など財産的被害のおそれがある個人情報
  • 不正行為によって持ち出された個人情報
  • 流出した個人情報が1000人以上になる見込みがある
  • 障がいや育児に関連することなど条例要配慮個人情報

横領調査の過程で個人情報の流出が認められた場合、報告義務が発生する可能性があります。調査を怠ってしまうと最大で1億円の罰金が課されるため気を付けましょう。

個人情報保護委員会 報告
情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務とは?詳しく解説個人情報の漏えいが発生した企業、団体は国の個人情報保護委員会へ報告義務が課せられています。 24時間365日受付/法人様は最短30分で初動対応打合せ/即日現地駆けつけも可能。デジタルデータフォレンジック(DDF)は、官公庁・上場企業・捜査機関・法律事務所等で実績多数! 累積32,377件以上のご相談実績をもとに、インシデント原因や被害状況などスピーディーに調査します。 ...

無暗に懲戒解雇すると、裁判で解雇が無効となる恐れがある

横領など重大な不正行為があった場合、懲戒解雇が行われることが少なくありません。しかし、懲戒解雇の実施には厳しいハードルが設けられており、就業規則に記載がない、解雇の手順が適切でないとみなされた場合、裁判となった際に解雇が無効となる場合があります。

解雇が無効となった事例としては、企業の従業員が年8カ月にわたって通勤手当を約35万円不正に受給したことを理由に懲戒解雇されたことについて、裁判となった事件があります。

判決の結果「通勤手当の不正受給は懲戒解雇処分を下すほど悪質とは認められない。企業側の権利濫用」として、解雇処分は無効との判断が下されています。

出典:労働新聞社

横領の調査が不十分な場合、不当解雇で反訴された際に解雇の妥当性を証明できず、解雇が無効となる場合や、未払い分の賃金、賞与及び追加の慰謝料の支払い義務が発生することがあります。

裁判が長引くほど、敗訴した際に支払う金額は増額するため、企業は従業員を解雇する場合も「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当である」ことを証明するために不正の証拠を集める必要があります。

しかし証拠の中でも電子データは改ざんや消去が容易なため、そのままでは裁判の証拠にならない場合があります。

この場合はフォレンジック調査と呼ばれるデジタルデータを保全する調査方法を用いることでアクセスログやメールを裁判の証拠として活用することが可能です。そして第三者調査機関に依頼することで、証拠の客観性を担保できます。

\24時間365日受付 初動対応のご相談・お見積もり無料/

業務上横領のフォレンジック調査事例

DDFでは業務上横領や着服に対するフォレンジック調査を行っております。実際に弊社に頂いた企業の調査事例は次の通りです。

業務上横領の疑いがある社員の端末調査のご依頼

調査背景

税務調査により、社員が横領を行った疑いが浮上。刑事告訴のための証拠が必要なため、デスクトップパソコンのフォレンジック調査をご依頼。

調査内容

デスクトップパソコンに対し、以下の調査を実施

  • データ保全作業
  • 削除データ復旧
  • 作業報告書の作成

調査結果

削除メールの復旧作業を行った結果、架空請求と思われる請求書ファイルを発見し、ご納品しています。

キックバックに関するフォレンジック調査のご依頼

調査背景

親会社の人物に指示を受けて、自社の社員が下請け企業にキックバックを要求している疑いが発覚。税務調査や業務用パソコンの調査は過去に実施したものの、決定的な証拠の入手には至らなかった。キックバックの証拠となる指示や、関連データの有無を調査してほしい。

調査内容

社員が使用していたノートパソコンに対し以下の調査を実施

  • データ保全作業
  • メール調査
  • 削除されたデータの痕跡調査
  • 外部機器の接続履歴の調査
  • 削除されたメール、ファイルの復旧作業
  • ファイルアクセス履歴の調査
  • ブラウザ情報の解析
  • クラウドストレージの利用調査
  • ウェブメールサービスの利用調査

調査結果

調査により、ノートパソコンから下請け企業との取引資料の削除痕、大量のUSB機器の接続痕とアクセス履歴が確認されました。またウェブの閲覧履歴から情報持ち出しが行われた可能性も確認されました。以上の内容で報告書を作成しご納品しています。

対応機種

対応機種

横領の調査会社への相談方法

インシデントが発生した際、フォレンジック調査を行うか決定していない段階でも、今後のプロセス整理のために、まずは実績のある専門会社へ相談することを推奨しています。

取引先や行政に報告する際、自社での調査だけでは、正確な情報は得られません。むしろ意図的にデータ改ざん・削除されている場合は、情報の信頼性が問われることもあります。

インシデント時は、第三者機関に調査を依頼し、情報収集を行うことを検討しましょう。

DDF(デジタルデータフォレンジック)では、フォレンジックの技術を駆使して、法人/個人を問わず、お客様の問題解決をいたします。

当社では作業内容のご提案とお見積りのご提示まで無料でご案内しております。

解析した結果は、調査報告書としてレポートを作成しています。作成した報告書には、調査で行った手順やインシデントの全容などが詳細に記載され、法執行機関にも提出可能です。

メールで相談する

調査の料金・目安について

まずは無料の概算見積もりを。専門のアドバイザーがお客様の状況を伺い、概算の見積りと納期をお伝えいたします。
機器を来社お持込み、またはご発送頂ければ、無料で正確な見積りのご提出が可能です。
まずはお気軽にお電話下さい。

【法人様限定】初動対応無料(Web打ち合わせ・電話ヒアリング・現地保全)

❶無料で迅速初動対応

お電話でのご相談、Web打ち合わせ、現地への駆け付け対応を無料で行います(保全は最短2時間で対応可能です。)。

❷いつでも相談できる

365日相談・調査対応しており、危機対応の経験豊富なコンサルタントが常駐しています。

❸お電話一本で駆け付け可能

緊急の現地調査が必要な場合も、調査専門の技術員が迅速に駆け付けます。(駆け付け場所によっては出張費をいただく場合があります)

企業内で業務上横領を調査する場合の注意点

企業内で業務上横領を調査する場合は以下の点に注意する必要があります。

  • 横領犯に証拠隠滅の時間を与えない
  • 横領の関係者への事情聴取を予告しない
  • 調査対象の電子機器の使用を続けない
  • 市販のデータ復旧ソフトを使用しない
  • 独自にデータのコピーを行わない

横領犯に証拠隠滅の時間を与えない

悪質な業務上横領が行われたために、刑事裁判を検討する場合は早めに証拠を確保することが必要です。警察が被害届を受理した後に、捜査を開始するタイミングは警察の都合に委ねられるため、業務用パソコンやスマートフォンのデータは削除される恐れが高まります。

フォレンジック調査専門業者に相談すれば、削除されたメールやファイル、動画、写真の復元が可能ですが、機器の初期化やフォーマットが繰り返されることで、完全にデータが消去されてしまいます。したがって、横領が発覚したらデジタル機器は早めに専門業者に調査してもらうことが必要です。

横領の関係者への事情聴取を予告しない

業務上横領は上司、部下、取引先など複数人によって組織的に行われる可能性もあります。事情聴取を予告することで、口裏を合わせられる可能性があります。また横領犯本人に横領の事情聴取を予告すると、企業の知りえない証拠を隠滅する時間的猶予を与えてしまいます。

表立って証拠収集を行わない

就業時間中や社員の目につく場所で横領の証拠探しを行うと、社員に不安を抱かせるだけでなく、横領犯が犯行に気づかれたことを悟り、証拠隠滅や情報持ち出しに走る可能性があります。企業用のパソコンやスマートフォンなどが持ち出されると、社内の機密情報や顧客情報の流出といった二次被害が予想されるため、証拠収集は就業時間外に行うか、セキュリティが強固な外部調査会社と協力して証拠収集を行いましょう。

調査対象の電子機器の使用を続けない

横領・着服を行った関係者がデータを削除・フォーマットしても電子機器内にデータの痕跡は残っています。しかし電子機器の使用を続け、データの更新や移動などを行ってしまうと新たなデータが上書きされてしまい、証拠データが完全に消えてしまう可能性があります。

フォレンジック調査であれば、データの証拠を必ず行うため、証拠の確保が可能です。調査対象である電子機器を取得できたら、自身で調査せず速やかに第三者調査機関へ調査を依頼することをお勧めします。

市販のデータ復旧ソフトを使用しない

横領・着服した本人がメール、ファイル、履歴を削除した恐れがある場合、市販のデータ復旧ソフトを使用しないでください。電子機器に破損がある場合、市販のデータ復旧ソフトではデータを復元できません。また復旧ソフトを繰り返し使用することでデータの上書きが発生し、証拠となるデータが完全に削除される恐れがあります。

独自にデータのコピーを行わない

電子データは改ざんや消去が簡単にできるため、データのコピーを行っただけでは、データの改ざんや削除がないことを客観的に証明できず、裁判所や警察に証拠として認められない場合があります。

証拠としてデジタルデータを保全して、公的機関などに提出するにはフォレンジック調査と呼ばれる専門的な手法が必要です。一般的なUSBメモリや外付けHDDへのデータコピーや移動は行わないでください。

またフォレンジック調査が可能な人物が社内に在籍していた場合でも、自社で行ったフォレンジック調査は、裁判で客観性がないことを指摘されて証拠として認められない場合があります。悪質な横領・着服が行われた場合は第三者調査機関のフォレンジック調査会社に調査を依頼しましょう。

メールで相談する

横領・着服が判明した後に企業がとるべき対応

横領・着服の犯人を処罰する際、「懲戒解雇」「民事訴訟」「刑事訴訟」の3つのアプローチから対処することができます。いずれも横領を行った従業員にとっては重い処罰であり、裁判の長期化や反訴のリスクも踏まえて、迅速かつ確実に企業側は証拠を収集する必要があります。

業務上横領が判明した後の対処法の内容は以下の通りです。

  • 従業員が横領・着服を行った証拠を収集する
  • 示談を行い、賠償金を請求する
  • 横領犯を解雇する
  • 民事告訴(損害賠償請求)
  • 刑事告訴(業務上横領罪)

従業員が横領・着服を行った証拠を収集する

企業内で横領・着服が行われた疑いがある場合、速やかに横領・着服が行われた証拠を収集する必要があります。企業側で取得できる証拠には監視カメラの映像や領収書、関係者の事情聴取の録音データなどがあります。

企業内での証拠収集は表立って行うと、横領犯本人や共犯者による証拠隠滅や、退職して逃走するおそれがあります。特に関係者の事情聴取を行う際は、横領の関与が疑われる人物には事前勧告せずに行いましょう。

また警察へ被害届の提出や裁判が予想される場合は、第三者調査機関に証拠収集や調査を依頼することをおすすめします。

フォレンジック専門の調査機関であれば、パソコンやスマートフォンのメールやアクセスログなどの調査証拠保全証拠復元が可能です。DDFであれば法廷に提出可能なレポートも作成可能です。

横領・着服を行った本人に事情聴取を行う

横領・着服を行った本人の自白も証拠として有効です。ただし必ず企業内と第三者機関で協力して言い逃れできない証拠の収集を完了させてから本人に事情聴取を行いましょう。

本人の事情聴取を行う際は、事前勧告なしに行い、裁判の証拠とするために聴取した内容のメモと録音をとりましょう。横領を行った本人が事実に反したことを発言した場合、他の証拠と突き合わせることで、言い逃れを困難にできます。

ただし横領犯として決めつけるような言動や、高圧的な態度で事情聴取を行うと企業側が名誉棄損やパワハラで訴えられる可能性があるため注意してください。

本人が横領・着服を自白した場合は、後日賠償金や物品の請求や懲戒解雇などについて話し合いを行う必要があります。

賠償金などの請求を行う

本人が横領・着服を行ったと自白し、収集した証拠で裏付けが取れた場合は、賠償金や物品の請求を行います。支払額と支払い時期を本人と合意して書面に残しましょう。なお横領金を本人が使い込んでしまった場合は、身元保証書の期限内であれば身元保証人へ賠償金を請求できます。

もし本人が横領・着服を行ったことを認めない場合や、賠償金額に不満がある場合は民事訴訟や警察に被害届を提出し、刑事告訴を行うことも視野にいれましょう。

業務上横領罪で警察に被害届を提出する方法はこちら

懲戒解雇

懲戒解雇とは、会社の秩序を乱す規律違反や不法行為を行った場合に行う解雇のことをいいます。一般的に解雇予告なしで即時解雇し、退職金も支払われません。 一般的に職場の懲戒処分は7種類ありますが、懲戒解雇は最も重い処分です。

懲戒解雇は業務上横領を行った従業員にも適用できますが、懲戒解雇を行う場合は2つの注意事項があります。

  • 横領・着服の明確な証拠がある
  • 就業規則の懲戒理由に、横領などの項目が含まれている

以上の2つの注意事項を守らないと不当な解雇として扱われやすく、反訴され不当解雇とみなされると、会社側は解雇した労働者に復職や、未払い分の賃金を支払い続ける義務が生じてしまいます。

民事告訴(損害賠償請求)

民事訴訟は裁判所によると「個人の間の法的な紛争、主として財産権に関する紛争を、裁判官が当事者双方の言い分を聞いたり、証拠を調べたりした後に、判決をすることによって紛争の解決を図る手続」を指します。

従業員の業務上横領によって会社に損害が生じた場合、民法709条「不法行為による損害賠償」の規定に基づいて、会社側は横領した社員に対し、損害賠償請求することができます。

ただし、民事訴訟に警察は原則介入できないため、不正の証拠などは原告側(会社)が用意する必要があります。、具体的には当該社員が端末上で不正な操作を行った記録などを「証拠」として、あらかじめ保全・収集・体系化しておく必要があります

しかし、パソコンのアクセスの痕跡の調べ方や削除されたメールの復元など、デジタルデータを証拠としたい場合は、フォレンジック調査会社に相談し、適切な方法でデータを保全することで、民事訴訟の証拠として活用が可能になります。

データ類から不正を証明するフォレンジック調査については、下記の記事で詳しく紹介しています。

フォレンジック調査
フォレンジック調査のメリット・活用事例・業者選定のポイントを解説フォレンジック調査とはデジタル機器を調査・解析し、「法的証拠」に関わる情報を抽出し、インシデントの全容を解明する調査です。フォレンジック調査会社では、警察でも使用される技術を用いて、サイバー攻撃からハッキング、情報持ち出しや横領などの調査を行います。本記事ではフォレンジック調査の必要性・活用事例・業者選定のポイントを解説します。...

刑事告訴(業務上横領罪)

刑事告訴とは告訴する側が警察や検察官に犯罪を申し出て、犯罪者の処罰を求めることを指します。

業務上横領を行った従業員を刑事告訴する場合は、企業側で告訴状を作成し、警察に提出する必要があります。告訴状が受理された場合は警察が捜査を行い、容疑者の逮捕が行われます。

その後、検察が起訴相当と判断すれば、1~2か月後を目安に刑事裁判を行い、量刑が決定します。

横領が行われた場合適用される可能性がある主な刑法は次の通りです。

  • 業務上横領罪(刑法253条、10年以下の懲役)
  • 単純横領罪(刑法252条 5年以下の懲役)
  • 特別背任罪(刑法247条 10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)

自身が委託されている他人の所有物を自分のものにした場合は単純横領罪が適用されますが、業務上横領罪の場合は、会社や他人のお金や物を預かる仕事を行う人物が着服した場合に適用されます。

加えて横領などの不正行為が自身や第三者の利益のために、会社の損害を与える目的で行われたことが証明できた場合は特別背任罪が適用できる場合があります。

社内で業務上横領が発生した場合、企業側は横領調査と報告書の作成を行うことをお勧めします。刑事告訴に踏み切る際に、告訴状が警察に受理されない限り、警察は捜査を行えません。対応が遅れるほど証拠隠滅のリスクや被害額が増加するため、証拠収集が困難な場合は、外部の調査機関を利用することも考えましょう。

横領した従業員を告訴・告発する方法と必要な証拠の集め方について専門会社が解説従業員の横領が疑われ、横領金の返済や犯人の逮捕を希望する場合、警察や裁判を巻き込む事態に発展する場合がありますが業務上横領を企業が告発するには確固たる証拠が必要です。 24時間365日受付/法人様は最短30分で初動対応打合せ/即日現地駆けつけも可能。デジタルデータフォレンジック(DDF)は、官公庁・上場企業・捜査機関・法律事務所等で実績多数!累積32,377件以上のご相談実績をもとに、インシデント原因や被害状況などスピーディーに調査します。 ...

社内で横領・着服を防止する方法

最後に、業務上横領を起こさせないためには出入金や社内備品の管理体制を整備する必要があります。社内で横領や着服を防止する方法の一例は以下の通りです。

  • 取引の処理は2人以上で行う
  • 同じ取引の記録を別媒体に別の人物が記入する
  • 定期的に小口現金の金額や物品数を帳簿や通帳と照合して確認する
  • 物品や換金性のある商品の管理者と購入者を別にする

よくある質問

調査費用を教えてください。

対応内容・期間などにより変動いたします。
詳細なお見積もりについてはお気軽にお問い合わせください。
専門のアドバイザーがお客様の状況を伺い、概算の見積りと納期をお伝えいたします。

土日祝も対応してもらえますか?

可能です。当社は特定の休業日はございません。緊急度の高い場合も迅速に対応できるように、365日年中無休で対応いたしますので、土日祝日でもご相談下さい。

匿名相談は可能でしょうか?

もちろん可能です。お客様の重要なデータをお取り扱いするにあたり、当社では機密保持誓約書ををお渡しし、機器やデータの取り扱いについても徹底管理を行っております。また当社では、プライバシーの保護を最優先に考えており、情報セキュリティの国際規格(ISO24001)およびPマークも取得しています。法人様、個人様に関わらず、匿名での相談も受け付けておりますので、安心してご相談ください。

 

 

この記事を書いた人

デジタルデータフォレンジックエンジニア

デジタルデータフォレンジック
エンジニア

累計ご相談件数32,377件以上のフォレンジックサービス「デジタルデータフォレンジック」にて、サイバー攻撃や社内不正行為などインシデント調査・解析作業を行う専門チーム。その技術力は各方面でも高く評価されており、在京キー局による取材実績や、警察表彰実績も多数。

 

電話で相談するメールで相談する
フォームでのお問い合わせはこちら
  • 入力
  • 矢印
  • 送信完了
必 須
任 意
任 意
任 意
必 須
必 須
必 須
必 須
必 須
必 須
簡易アンケートにご協力お願いいたします。(当てはまるものを選択してください) 
 ハッキングや情報漏洩を防止するセキュリティ対策に興味がある
 社内不正の防止・PCの監視システムに興味がある