ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)は、企業や組織が持つ重要な情報を守るためのフレームワークです。しかし、どれだけ優れた管理体制を導入していても、情報漏洩のリスクを完全に排除することは難しく、実際に漏洩が発生した場合の対処が求められます。この記事では、ISMSを導入している組織が情報漏洩に直面した際にどのように対応すべきか、具体的なステップを詳しく説明します。
目次
ISMSにおける情報漏洩の原因について
情報漏洩は、組織のセキュリティシステムの脆弱性や人為的なミスによって引き起こされることが多く、様々な原因が考えられます。ここでは、代表的な情報漏洩の原因をいくつか挙げ、その詳細を解説します。
セキュリティポリシーの不備
セキュリティポリシーは、組織全体の情報セキュリティを支える基本的な規則ですが、適切に策定されていない場合、情報漏洩のリスクが高まります。特に以下の要素が不備となりがちです。
- 情報の取り扱いに関する明確なガイドラインの欠如
- 定期的な見直しが行われていないポリシー
- 従業員への教育や訓練不足
これらの問題が積み重なることで、組織内でセキュリティに対する認識が低下し、結果的に情報漏洩が発生しやすくなります。
システムの脆弱性
システムの脆弱性は、ハッキングや不正アクセスの温床となります。特に、以下のような要因が脆弱性を引き起こします。
- ソフトウェアやハードウェアの更新が遅れる
- 古いバージョンのセキュリティパッチが適用されていない
- ネットワーク設計にセキュリティが十分考慮されていない
システムの脆弱性は、外部からの攻撃だけでなく、内部の不正行為によっても悪用される可能性があります。
内部不正や人為的ミス
内部の従業員による不正行為や、偶発的な人為的ミスも、情報漏洩の主要な原因です。従業員が意図的に機密情報を持ち出したり、誤って重要なデータを外部に公開してしまうケースが後を絶ちません。これを防ぐには、従業員の行動を監視するだけでなく、教育と意識向上が不可欠です。
外部からの攻撃
サイバー攻撃やハッキングによって、外部から情報が盗まれるケースも増加しています。攻撃者は、システムの脆弱性や従業員のミスを利用して侵入し、機密情報を盗み出します。代表的な攻撃手法としては、フィッシング、マルウェア、ランサムウェア攻撃などがあります。
不適切なアクセス制御
組織内の情報へのアクセス制御が不適切だと、必要のない人が重要なデータにアクセスできてしまい、情報漏洩のリスクが高まります。特に、多くの従業員が同じ権限でデータにアクセスできる状況や、退職者のアカウントが残っている状態は危険です。
サードパーティの管理不備
企業が外部のサードパーティ企業と業務を委託する際、そのパートナーが適切に情報を管理していない場合、情報漏洩が発生する可能性があります。特に、セキュリティ基準が異なる国や企業と提携する場合、注意が必要です。
ISMSに基づく情報漏洩対策の具体的な手順
ISMSは、組織内の情報セキュリティを強化し、情報漏洩を防止するためのフレームワークです。しかし、情報漏洩が発生してしまった場合には迅速かつ適切な対応が求められます。以下では、情報漏洩発生時の具体的な対処手順を紹介します。
速やかな上長への報告
情報漏洩が発生した場合、最初に行うべきことは、速やかに上長や管理者に報告することです。組織内のセキュリティインシデント対応マニュアルに基づき、適切な報告ルートを確認し、事態を正確に伝えることが重要です。
- 漏洩の発生を確認次第、上長や指定の管理者に連絡する。
- 漏洩した情報の種類、規模、影響範囲を簡潔に伝える。
- その後の対応方針について指示を受ける。
情報セキュリティ担当部署への連絡
情報セキュリティ担当部署は、情報漏洩に対する最初の防衛線として重要な役割を果たします。担当部署への早急な連絡により、事態の拡大を防ぐための初動対応が迅速に行われます。
- 情報漏洩が確認された時点で、セキュリティ担当部署に報告する。
- 担当部署からの指示に従い、追加の情報を提供する。
- インシデント管理システムがあれば、速やかにインシデントを記録し、対応の経過を追跡する。
事実確認と影響範囲の特定
情報漏洩の事実関係を確認し、漏洩した情報の範囲や影響を受ける可能性のある関係者を特定します。この段階でリスクアセスメントを実施し、漏洩による影響の深刻度を評価します。
- 漏洩が発生した経路や原因を調査する。
- 漏洩したデータの範囲や内容を特定する。
- 影響を受ける可能性のある関係者やシステムをリストアップする。
影響を受ける関係者への通知
漏洩した情報が外部に影響を及ぼす可能性がある場合、関係者や顧客に対して迅速に通知を行い、必要な対応を促します。また、法的な義務に基づき、関係機関への報告も忘れずに行いましょう。
- 影響を受ける可能性のある関係者リストを作成する。
- 通知内容を策定し、関係者へ適切な方法で通知する。
- 法的要件に基づき、必要な関係機関への報告を行う。
再発防止策の検討と実施
情報漏洩が発生した原因を分析し、同様の事態が発生しないように再発防止策を検討・実施します。これには技術的な対策や運用面での見直しが含まれます。
- 漏洩の原因となったシステムやプロセスを見直す。
- セキュリティの脆弱性があれば修正する。
- 従業員向けのセキュリティ教育や訓練を強化する。
フォレンジック調査の実施
ランサムウェアやハッキングなど、犯罪行為が疑われる情報漏洩の場合、社内や個人でフォレンジック調査を行うことは、証拠保全の観点からリスクが高いため、必ず専門のフォレンジック調査会社に依頼するべきです。フォレンジック調査では、どの情報がどのように漏洩したかを特定し、今後の対策に活かすことができます。
- フォレンジック調査会社に連絡し、調査を依頼する。
- 漏洩の経路や手口、影響範囲を明確に特定するための調査を実施する。
- 調査結果をもとに再発防止策や今後のセキュリティ対策を講じる。
ISMSにおける情報漏洩の再発防止策
情報漏洩の発生を防ぐためには、ISMSを効果的に運用し、セキュリティ対策を強化することが求められます。ここでは、再発防止に役立つ具体的な施策について解説します。
セキュリティ教育と従業員トレーニングの強化
従業員がセキュリティに対する意識を高め、適切な行動を取れるよう、定期的なセキュリティ教育を実施することが重要です。また、フィッシング対策やパスワード管理の徹底など、具体的なスキルを養うためのトレーニングを行いましょう。
アクセス制御の見直し
情報漏洩のリスクを減らすために、アクセス制御を強化することが不可欠です。不要な権限を持つユーザーや、退職者のアカウントが残っていないか定期的に確認し、最小限のアクセス権で業務を遂行できるようにします。
技術的対策の導入
暗号化や二要素認証の導入など、技術的なセキュリティ対策を強化することも再発防止に有効です。また、最新のセキュリティパッチを適用し、システムの脆弱性を最小限に抑えましょう。
企業の情報漏えいインシデント対応が義務化されています
2022年4月から改正個人情報保護法が施行されました
2022年4月に施行された「改正個人情報保護法」では、個人データの漏えい、あるいは漏えいが発生する可能性がある場合、報告と通知が法人に義務付けられました。違反した企業には最大1億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
もし、マルウェア・ランサムウェア感染、不正アクセス、社内不正、情報持ち出しのような情報セキュリティ上の問題が発生した場合、まずは感染経路や漏えいしたデータの有無などを確認することが重要です。
ただ、調査を行うには、デジタルデータの収集・解析などの専門技術が必要です。これは自社のみで対応するのが困難なため、個人情報の漏えいが発生した、もしくは疑われる場合は、速やかにフォレンジック専門家に相談し、調査を実施することをおすすめします。
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情報漏えい調査はフォレンジック調査の専門家にご相談ください
情報漏えいインシデントが発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。しかし、自力で調査を行うと、調査対象範囲が適切でなかったり、意図しない証拠データの消失が発生しやすく、不完全な結果になる恐れがあります。
このような事態を防ぎ、適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。フォレンジック調査では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備での端末の調査・解析、調査報告書の提出ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
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