近年、情報漏洩の問題が増加し、個人や企業に甚大な被害を与えています。その原因の一つがマルウェアです。この記事では、マルウェアによる情報漏洩のリスク、感染経路、具体的な対策について、サイバーセキュリティの専門家が解説します。
目次
マルウェアの種類と目的
マルウェアとは、悪意のあるソフトウェアの総称であり、以下のような種類があります。それぞれの特徴を複数持つマルウェアも確認されています。
マルウェアのほとんどが情報の搾取や、データの削除、暗号化などを目的としており、感染した場合は情報漏洩の可能性が非常に高いです。
ウイルス
ウイルスは、自己コピーして他のプログラムやファイルに感染することを目的としたマルウェアです。
感染したファイルが実行されることでウイルスも同時に動作し、システム内の他のファイルやプログラムに感染を広げます。感染が広がると、ファイルが破損したり、システムの動作が不安定になるなどの被害が生じることがあります。また、一部のウイルスはシステム内のデータを改ざんしたり、削除することも目的としています。
ワーム
ワームはネットワークを通じて自己複製し、感染を拡大させるマルウェアです。ワームの大きな特徴は、他のプログラムやファイルを介さずに自己複製して拡散できることです。
そのため、ネットワーク全体に感染が広がり、ネットワーク帯域を圧迫することでシステム全体の動作を低下させることがあります。特に企業ネットワークに侵入すると、通信の遅延やシステム障害などの深刻な問題を引き起こすことがあります。
トロイの木馬
トロイの木馬は、一見無害なプログラムに見せかけてユーザーのデバイスに侵入し、システム内にバックドアを作成することで外部からの不正なアクセスを可能にするマルウェアです。
トロイの木馬自体には自己複製能力がないため、ユーザーが意図せずインストールする形で感染が広がります。これにより、攻撃者は感染したデバイスに遠隔でアクセスし、情報の窃取やさらなるマルウェアのインストールなどを行うことができます。
スパイウェア
スパイウェアは、ユーザーの行動を監視し、収集した情報を第三者に送信するマルウェアです。主にキーロガーやブラウザの履歴監視機能を備え、ユーザーの入力したパスワードやクレジットカード情報などを盗み取ることを目的としています。
スパイウェアはしばしば、無料ソフトウェアのインストールに紛れてユーザーのデバイスに侵入します。ユーザーに気づかれないように活動することが多く、その結果として個人情報が流出し、金銭的な被害をもたらすことがあります。
ランサムウェア
ランサムウェアは、感染したデバイス内のファイルを暗号化し、復号するための身代金を要求するマルウェアです。ランサムウェアに感染すると、ユーザーはファイルにアクセスできなくなり、攻撃者は暗号を解除するための鍵を提供する代わりに金銭を要求します。
身代金は仮想通貨で要求されることが多く、追跡が困難です。ランサムウェアの感染経路には、フィッシングメールや脆弱なネットワークサービスの悪用が含まれます。企業がランサムウェアに感染した場合、業務停止やデータの喪失といった深刻な被害を受けることがあります。
マルウェアの感染経路
マルウェアは様々な経路を通じてデバイスに感染します。その主な感染経路は以下の通りです。
画期的型メールによる攻撃
マルウェア感染の多くは、悪意のあるメールから始まります。攻撃者は正規の企業を装ったメールを送り、添付ファイルを開かせることでマルウェアをインストールさせます。このようなメールは、リンクのクリックや添付ファイルの開封を促すことで感染を拡大します。
セキュリティの脆弱性を狙った攻撃
ソフトウェアやシステムにはしばしば脆弱性が存在し、それを悪用することで攻撃者はマルウェアを送り込みます。未更新のソフトウェアは特に攻撃の標的になりやすいです。したがって、OSやソフトウェアの定期的なアップデートが重要です。
感染したUSBメモリなどのメディアの利用
USBメモリや外部ハードディスクなどのメディアが感染している場合、それを使用することでマルウェアが拡散します。特に公の場で拾ったUSBメモリを不用意に使うことは非常に危険です。
フィッシングサイトによる情報窃盗
フィッシングサイトは、正規のサイトに見せかけた偽のウェブサイトです。ユーザーがログイン情報などを入力すると、その情報が攻撃者に送信されます。信頼できないリンクはクリックしないよう注意することが必要です。
問題のあるソフトウェアやアプリのインストール
不正なソフトウェアや、信頼性の低いアプリケーションをインストールすることで、マルウェアがシステムに侵入します。公式のアプリストア以外からのアプリのインストールは避けるべきです。
具体的な被害事例
ここでは、マルウェアによる情報漏洩の具体的な被害事例を紹介します。
Webサイトの変更による被害
ある企業のWebサイトが不正アクセスを受け、サイトの内容が改ざんされました。これにより閲覧者が特定のサイトに誘導され、ウイルス感染の危険にさらされました。このようなケースでは、Webサーバーの脆弱性を突かれることが多いです。
ランサムウェア「WannaCry」の感染
2017年に大規模に流行したランサムウェア「WannaCry」は、感染したPC内のファイルを暗号化し、復号のために身代金を要求しました。このランサムウェアは、Windowsの脆弱性を悪用して急速に拡散しました。企業だけでなく個人も多くの被害を受けました。
スパムメール送信の踏み台
マルウェアに感染したPCが攻撃者に乗っ取られ、自社の顧客にスパムメールを送信する踏み台にされるケースもあります。このような状況に陥ると、企業の信用が失われるだけでなく、法律的な責任を問われる可能性もあります。
マルウェアによる情報漏洩を防ぐための対策
マルウェアによる情報漏洩を防ぐためには、適切な対策を講じることが重要です。この章では、具体的な対策方法を解説します。
セキュリティソフトの導入と定期的な更新
セキュリティソフトをインストールし、常に最新の状態に保つことで、マルウェアの侵入を防ぐことができます。セキュリティソフトは、リアルタイムでのウイルス検出と除去を行うため、マルウェア対策に欠かせない存在です。
OSやソフトウェアの脆弱性対策(パッチ適用)
ソフトウェアにはしばしば脆弱性が発見されます。これらの脆弱性を悪用される前に、OSやアプリケーションのアップデートをこまめに行い、パッチを適用することが重要です。特にWindowsやMacOSなどのOSは、定期的にセキュリティパッチが提供されています。
不審なメールや添付ファイルの取り扱い注意
不審なメールや添付ファイルを不用意に開かないことがマルウェア感染を防ぐための第一歩です。攻撃者は、信頼できる企業や知人を装ってメールを送信することがあるため、送信元に注意し、内容に心当たりがない場合は絶対に開かないようにしましょう。
信頼できないWebサイトやソフトウェアの利用回避
インターネット上には、悪意を持つサイトやプログラムが存在しています。そのため、信頼できないWebサイトへのアクセスや、不明なソフトウェアのインストールは避けましょう。また、公式のサイトやアプリストアからのみアプリケーションをダウンロードすることが重要です。
従業員へのセキュリティ教育の実施
企業においては、従業員へのセキュリティ教育が必要不可欠です。例えば、フィッシング詐欺の見分け方や、不審なメールの取り扱いに関するトレーニングを実施することで、組織全体のセキュリティ意識を高めることができます。
企業の情報漏えいインシデント対応が義務化されています
2022年4月から改正個人情報保護法が施行されました
2022年4月に施行された「改正個人情報保護法」では、個人データの漏えい、あるいは漏えいが発生する可能性がある場合、報告と通知が法人に義務付けられました。違反した企業には最大1億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
もし、マルウェア・ランサムウェア感染、不正アクセス、社内不正、情報持ち出しのような情報セキュリティ上の問題が発生した場合、まずは感染経路や漏えいしたデータの有無などを確認することが重要です。
ただ、調査を行うには、デジタルデータの収集・解析などの専門技術が必要です。これは自社のみで対応するのが困難なため、個人情報の漏えいが発生した、もしくは疑われる場合は、速やかにフォレンジック専門家に相談し、調査を実施することをおすすめします。
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情報漏えい調査はフォレンジック調査の専門家にご相談ください
情報漏えいインシデントが発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。しかし、自力で調査を行うと、調査対象範囲が適切でなかったり、意図しない証拠データの消失が発生しやすく、不完全な結果になる恐れがあります。
このような事態を防ぎ、適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。フォレンジック調査では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備での端末の調査・解析、調査報告書の提出ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
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