近年パソコンやスマートフォンが犯罪に使用されることが多いため、裁判では電子端末やデジタルデータ(電子データ)が証拠として認められています。
民事裁判と刑事裁判どちらでも証拠となるため。サイバー犯罪、特殊詐欺、社内不正、企業との労働審判など幅広い裁判にデジタルデータが利用できます。
しかし、デジタルデータは改ざんが容易にできるため、そのまま提出しても確実な証拠として認められず、想定していた裁判結果とならない可能性があります。
本記事では裁判でデータの証拠能力を認めさせる適切な方法を、実例つきで紹介します。
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目次
裁判で使用できる証拠
裁判は大きく分けて刑事裁判と民事裁判に分けられます。両者の特徴は以下の通りです。
- 刑事裁判…刑法違反が疑われる容疑者に刑罰を科すか決定する
- 民事裁判…私人同士の金銭問題や権利義務などの争いを解決する
いずれの裁判でも使用できる物的証拠は以下の通りです。
文書/準文書
裁判で証拠として使用できる文書は「書証(しょしょう)」と呼ばれ、文書以外の「写真、録音、録画、CDなど」は準文書と呼ばれます。
訴訟内容の関連性や、裁判官がどの程度書証を信用するかで、その書証の証拠能力は変化します。特に当事者に利害関係がない第三者が作成した資料や、企業が通常の業務上で作成した文書は、裁判において信用性が高いと判断されるケースが多いです。
また裁判によって証拠の重要性が異なります。民事裁判は相手方よりも有利な証拠が発見できれば、裁判を有利に進めることが可能ですが、刑事裁判は刑を確定させる必要があるため、容疑者が犯人であることが明確になるまで、証拠を揃える必要があります。
デジタルデータ
海外では、eDiscoveryという電子データの開示制度が定められ、既にデジタル証拠の使用が主流となっています。
現在の日本でもデジタルデータは裁判の証拠として認められています。裁判所に提出する際はデジタルデータを電磁的記録媒体(HDDやCD-Rなど)に記録して提出するのが一般的です。
ただし、デジタルデータは一般的な方法でコピーをとると、見た目上は同一ですが、データ上は別データとなります。したがってデータ改ざんの有無が裁判の争点となる可能性があります。
証拠となるデジタルデータ(電子データ)の種類
裁判で証拠となるデジタルデータは、メールの文面や画像・音声データ以外にも存在します。
証拠となるデジタルデータの種類の一部は以下の通りです。
- 電子メールの送受信履歴
- 電子文書の作成・保存履歴
- 画像や動画などのイメージファイル
- チャットアプリのトーク履歴
- パソコンのネットワークアクセス履歴
- パソコンのファイル削除履歴
- インターネットおよび社内サーバアクセス履歴
- USBメモリや外付けHDDなどの接続履歴
- Office 文書のプロパティ情報
- プログラムの実行履歴
以上の証拠は取得するのに、一定の知識が必要になります。加えて法的利用する場合はデータに客観性が求められるため、社内で調査を行うと証拠の改ざんや捏造が疑われてしまいます。
デジタルデータを法的利用する場合は、専門の調査会社まで相談することをおすすめします。第三者の立場からデジタルデータ・端末の証拠保全から調査を行い、報告書はそのまま公的機関に提出が可能です。
デジタルデータ(電子データ)を裁判の証拠として提出する際の注意点
デジタルデータを裁判の証拠として提出し、活用するには2点注意すべき点があります。
デジタルデータ(電子データ)に改ざんがないことを証明することが必要。
デジタルデータは、簡単に削除・修正・改ざんを行える特徴があります。この特徴が悪用されると、裁判を有利に進められるように、証拠隠滅や証拠の改ざんが発生し、適切な判決を下すことができなくなります。
証拠として提出するデジタルデータは、スクリーンショットや外付け機器へのコピーでは、データに変換すると別物となるため証拠としては不十分です。
もちろん、実際の裁判では他の証拠や証言なども加味されるため、一般的なデータのコピーでも証拠能力がある程度認められる場合もあります。
しかし、証拠としての決定力が欠けていると、賠償金の減額や減刑となる可能性もあるため、証拠データに改ざんがないことを事前に証明しておく必要があります。
デジタルデータ(電子データ)が削除/消去されていないことを証明しなければいけない
証拠がなければ裁判に勝つことはできません。したがって、不正や犯罪を行った人物は様々な方法で証拠の隠滅を図ることが予想されます。
社内不正を例にとると、不正行為を行った従業員がパソコンのアクセスログや電子メール送受信履歴を消去し、自身にしかわからないパスワードをかけるといった事例があります。
万が一誤ってデジタルデータが削除/消去された場合、まだ電子端末にデータが残っている可能性があるため、迅速にデータ復旧作業を行う必要があります。裁判利用する場合は、証拠の真正性の観点からデータ復元ソフトの使用は推奨していません。
削除データを復旧して裁判で活用するには、データ復旧に対応している専門調査会社に依頼することが必要です。
デジタルデータ(電子データ)に証拠能力を持たせる方法
デジタルデータを証拠として提出する前に、以下の作業を行うことで、データに証拠能力を付与し、裁判を有利に進められる場合があります。
完全な複製データを作成する
専用のツールを使用して、デジタル機器の完全な複製データを作成し、証拠保全を行うことがデジタルデータを法的利用する上で重要となります。
一般的なコピーアンドペーストでは、完全な複製ではないため特殊な方法で複製する必要があります。
完全な複製データを作成する目的は、調査対象の機器やデータに改ざんがない事を証明することです。複製データの作成が完了したらデータを抽出し、調査・解析を行います。
ハッシュ値を比較し、改ざん・変更がないか確認する
ハッシュ値とは、元となるデータから一定の計算手順によって求められた、規則性のない、一定の長さの数字です。
元データに上書き、削除などの操作を加えると、データと一緒にハッシュ値も変化します。同じデータでなければ同一のハッシュ値が求められないため、証拠データの真正性が一目でわかります。
このように、データが修正・改ざんされていないことを証明するためには、元の機器の複製データのハッシュ値を比較し、値が同一であることを証明する必要があります。
しかし、ハッシュ値はUSBメモリなどにデータをコピーしても数値が変化します。したがって一般的な操作ではクローン作成からハッシュ値の比較まで行うことが非常に困難です。
その場合は民間のフォレンジック調査会社に調査を依頼し、適切な手法で証拠保全からデジタルデータの調査まで一貫して行ってもらう必要があります。
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デジタルデータ(電子データ)の証拠保全・調査を行うフォレンジック調査について
フォレンジック調査とは、電子的な情報やデータを収集・解析することで、事件や犯罪の真相を究明する手法です。従業員の横領が発覚した場合、フォレンジック調査を応用することで、その従業員が使用している端末やネットワークのログや、電子メールのやり取り内容、ファイルの更新履歴などの情報を収集・解析することができます。
具体的には、以下のような情報を収集することができます。
- アクセスログ:従業員がアクセスしたWebサイトやアプリの利用履歴と使用時間
- メールログ:従業員が送受信したメールの内容や宛先、送信日時の履歴
- ファイル更新履歴:従業員が作成したファイルの更新履歴
これらの情報を収集・解析する過程で、端末上のデータの証拠保全が行われます。適切な手順の証拠保全のもとで調査・解析されたデジタルデータは改ざんがないことを証明できるため証拠能力があります。
個人で行うフォレンジック調査は技術的、立場的な観点から裁判で証拠と認められにくくいため、外部のフォレンジック調査会社に相談して、調査報告書といった形で調査結果をまとめてもらうことをおすすめします。
デジタルデータ(電子データ)を証拠として公的機関に提出する場合、専門業者に提出する
マルウェア・ランサムウェア感染、不正アクセスのような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。しかし、自力で調査を行うと、調査対象範囲が適切でなかったり、意図しない証拠データの消失が発生しやすく、不完全な結果になる恐れがあります。
このような事態を防ぎ、適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。フォレンジック調査では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
デジタルデータフォレンジックでは、お電話またはメールでお問合せいただくと、状況のヒアリングと対応方法、お見積りを無料でご案内いたします。法人様の場合、ご相談から最短30分で初動対応のWeb打合せも開催しておりますので、お気軽にご相談ください。
官公庁・上場企業・捜査機関等まで幅広い調査対応経験を持つ専門の担当とエンジニアが対応させていただきます。
フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
インシデントが発生した際、フォレンジック調査を行うか決定していない段階でも、今後のプロセス整理のために、まずは実績のある専門会社へ相談することを推奨しています。
取引先や行政に報告する際、自社での調査だけでは、正確な情報は得られません。むしろ意図的にデータ改ざん・削除されている場合は、情報の信頼性が問われることもあります。
インシデント時は、第三者機関に調査を依頼し、情報収集を行うことを検討しましょう。
DDF(デジタルデータフォレンジック)では、フォレンジックの技術を駆使して、法人/個人を問わず、お客様の問題解決をいたします。
当社では作業内容のご提案とお見積りのご提示まで無料でご案内しております。
解析した結果は、調査報告書としてレポートを作成しています。作成した報告書には、調査で行った手順やインシデントの全容などが詳細に記載され、法執行機関にも提出可能です。
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調査の料金・目安について
専門のアドバイザーがお客様の状況を伺い、概算の見積りと納期をお伝えいたします。
機器を来社お持込み、またはご発送頂ければ、無料で正確な見積りのご提出が可能です。
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緊急の現地調査が必要な場合も、調査専門の技術員が迅速に駆け付けます。(駆け付け場所によっては出張費をいただく場合があります)
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デジタルデータ(電子データ)改ざんが争点となった事例
デジタルデータの改ざんの有無は、実際の裁判において争点となったことがあります。有罪・無罪を決定づけた裁判事例は以下の通りです。
検察官によるフロッピーディスクの証拠隠滅が行われた例
検察官が押収した、フロッピーディスク内に保存された文書ファイルの最終更新日「2004年6月1日1時20分06秒」を「2004年6月8日21時10分56秒」へと改ざんしました。
検察官による証拠の改ざんは、プロパティ情報と操作報告書との間に齟齬が生じたことで、プロパティ情報の改ざんが発覚し、その後逮捕されています。
ファイルに含まれるプロパティ情報は容易に削除・変更することが可能です。しかし今回の場合は、作成者名と文書ファイルを作成したパソコンの使用者名が異なるという齟齬が発生したため、情報の改ざんを発見できました。
この事件は他の証拠と齟齬がなければ、改ざんされたデジタル証拠がそのまま正当な証拠とみなされる危険性を示唆しています。
参考文献 検察庁
メールのヘッダー情報の書き換えが争点となった例
メールのヘッダー情報の書き換えが裁判の争点となった事例もあります。
ストーカー事件の裁判で、共犯者が被告人と共犯者との間で送受信されたメールのヘッダー情報を変更して、なりすましメールを作成したかどうか争われました。
なりすましメールの作成について裁判所は、共犯者の手で技術的に可能であっても、被告人とのメールの送受信を偽装する理由や必要性がないと結論付けました。そして他の証拠からもメールの文面が一致していることから、「メールが偽装されている」という主張は誤りと判断しました。
上記の事例から、証拠データの改ざんは技術的に可能であっても、データを改ざんする理由や必要性についても考慮され、他の証拠との整合性が認められない場合は改ざんの主張が認められないことがわかります。
写真データの撮影日時情報の改ざんの有無が争点となった例
最後に、写真データの撮影日時情報の改ざんが争点となった事例を紹介します。
キリスト教会の主任牧師である被告は、信徒を誤信させて準強姦事件を起こしたという内容で裁判にかけられました。検察側はインターネットの無料ソフトを使用して写真データの撮影日時情報の改ざんを主張しました。
しかし、裁判所は争点となった写真データは警察庁の鑑定書と証言の信頼性を元に、検察側の主張を退け、改ざんの形跡はないとして被告を無罪判決にしました。
この事例から、デジタルデータを裁判の証拠とするなら、具体的な証拠が必要になります。デジタルデータの改ざんがないことを証明する方法の一つにハッシュ値の比較があるため、フォレンジック調査会社などを利用して裏付けを取り、デジタル証拠の改ざんの有無を明らかにする必要があります。
よくある質問
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