サイバー攻撃の高度化・巧妙化が進む中、重要インフラを担う企業やその関連事業者には、従来の防御策だけでは不十分となり、より能動的で強固なセキュリティ対応力が求められています。
本記事では、内閣官房などが公開した最新のガイドラインをもとに、「サイバー対処能力強化法」の制度概要、対象となる企業の判断基準、罰則の内容、そして施行前に備えるべき実務対応までを詳しく解説します。
サイバー対処能力強化法とは
本法律の正式名称は、「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」です。2025年5月に成立・公布され、2026年中に政令に基づき段階的に施行される予定です。
近年、ランサムウェアや国家関与が疑われる高度なサイバー攻撃が増加しており、特に電力・通信・交通・医療など、重要インフラを狙う脅威が顕著になっています。従来、日本ではセキュリティ対策が企業任せとなっており、任意の情報共有では限界があることが明らかになってきました。
こうした背景を踏まえ、政府と事業者が連携して能動的に対応するための新たな制度として、「サイバー対処能力強化法」が制定されました。本法は、企業の報告義務や政府の支援・介入を制度化することで、サイバーセキュリティ対策の抜本的強化を図る枠組み法です。
法律の正式名称と施行スケジュール
正式名称は「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」で、一般的には「サイバー対処能力強化法」と呼ばれます。複数の関連法(警察官職務執行法や自衛隊法など)の整備法と一体となって運用され、政府による能動的なサイバー防御の制度基盤となります。
2025年5月に成立・公布され、「公布の日から1年6か月を超えない範囲で政令で定める日」に施行されると規定されており、2026年中に本格的な制度運用が開始される見通しです。
出典:国家サイバー統括室
法律を構成する3つの柱
サイバー対処能力強化法(通称:能動的サイバー防御)は、企業と政府が連携し、攻撃の予兆を察知し、被害を最小化することを目的とした制度です。その中核をなすのが以下の3つの柱です。
① 官民連携の強化(届出・報告・双方向の情報共有)
基幹インフラ事業者などに対し、「特定重要電子計算機」の導入時の届出と、インシデント発生時の報告を義務付けることで、政府と事業者間の双方向の情報連携体制が制度化されます。
政府は報告を受けた情報を分析し、警戒情報として他の事業者にもフィードバックすることで、業界を越えた早期察知と全体最適な対処を実現する仕組みを構築します。
② 通信情報の利用(脅威の早期察知・分析)
インターネットを通じた攻撃の兆候を平時から察知するため、政府は一定の法的要件のもと、事業者の通信に関する情報(通信ログ等)を取得・分析できる制度が整備されます。
取得には裁判所の令状や第三者機関による事前審査が必要とされており、さらに取得対象は機械的フィルタリングによって制限されるなど、プライバシー保護と法的統制のバランスを重視した運用が前提とされています。
③ アクセス・無害化措置(最終手段による封じ込め)
重大なサイバー攻撃が確認された場合、警察庁や自衛隊が、攻撃者が使用するサーバや通信インフラに直接アクセスし、マルウェアの削除や機能停止などを行う「無害化措置」を実施できる制度が整備されます。
この措置は、国家安全保障会議(NSC)による承認や厳格な要件を満たすことが前提とされており、「重大な危害を未然に防止するための最終手段」として限定的に実行されることが想定されています。
加えて、これらの柱を支える基盤として、横断的な「支援組織・専門人材・財政支援」の整備も制度の一部に組み込まれる予定です。企業側にとっても、これらの支援体制を活用しながら平時からの体制整備を進めることが求められます。
出典:国家サイバー統括室
対象となる企業と判断基準
サイバー対処能力強化法は、主に「基幹インフラ事業者」を対象とする法制度ですが、実際にはその関連企業や委託先、ITベンダーなどにも報告義務や体制整備の要請が及ぶ可能性があります。
以下に、自社が対象となるかどうかを見極めるための主な視点を整理します。
基幹インフラとして定義される業種
政府が示す「基幹インフラ」には、以下のような社会的影響の大きい分野が含まれています。
- 電気・ガス・石油・水道などのエネルギー供給
- 通信・放送・データセンターなどの情報通信基盤
- 鉄道・航空・海運・物流などの交通・輸送インフラ
- 金融・証券・クレジットカードなどの金融サービス
- 医療・公衆衛生・行政サービスなど公共機能
これらの分野において、機能停止や障害が社会や経済活動に重大な影響を与えるシステムは、「特定重要電子計算機(TIEC)」として指定され、導入時の届出やインシデント報告義務の対象になります。
サプライチェーン企業への実務的影響
基幹インフラ事業者でなくても、以下のような関係企業には実質的な制度対応が求められる可能性があります。
- インフラ事業者の一次・二次請負企業
- 重要システムを設計・構築・運用・保守するSIer・クラウドベンダー
- セキュリティ監視、脆弱性診断、フォレンジック調査を担う受託企業
契約書や仕様書において「インシデント対応の連携」「一定のセキュリティ基準の遵守」が求められることが多く、委託元の要請により事実上の報告体制構築が必要になる場面が想定されます。
自社が対象企業かどうか判断する方法
自社が法制度の影響を受けるかどうかを見極めるために、以下の観点で棚卸しを行うことが有効です。
- 自社の提供するサービス・システムが、基幹インフラ分野に関係しているか
- そのサービスやシステムが停止した場合、社会や業界にどの程度の影響を与えるか
- 契約書やSLAに「重要電子計算機」や「報告義務」「セキュリティ対応」などの明示があるか
上記のいずれかに該当する場合は、制度に準拠した体制整備や対応フローの構築を早急に進めることが推奨されます。
本法における罰則と経営リスク
サイバー対処能力強化法では、「特定重要電子計算機」の導入届出やインシデント報告など、法令に基づく対応義務が明文化されており、違反した場合には行政処分や罰金が科される可能性があります。
また、インシデントへの対応を怠ったことによって重大な被害が生じた場合には、企業の経営陣が管理責任を問われるリスクも想定されており、従来以上に「経営課題」としてのサイバー対応が求められます。
報告義務違反などへの罰則
本法における主な違反行為と、それに対して想定される罰則は以下のとおりです。
- インシデント報告を怠った場合:是正命令の対象となり、従わなければ200万円以下の罰金
- 資料提出要求を拒否した場合:30万円以下の罰金
- 行政職員による取得情報の漏えいや不正利用:最大で4年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
経営陣にも問われる「説明責任」
制度上の罰則にとどまらず、インシデント報告体制の不備や責任所在の曖昧さが原因で、経営陣がガバナンス不全を問われるリスクも存在します。
たとえば、以下のようなケースでは、株主代表訴訟や監督官庁からの指導といった事態に発展する可能性があります。
- 報告体制が整備されていなかった
- 外部委託先との責任分界が曖昧だった
- 初動調査の不備により被害の全容把握ができなかった
こうした背景を踏まえ、今後は「サイバーリスクも経営リスク」として明確に認識し、取締役会レベルでの対応方針の策定や、全社的な体制整備が不可欠です。
出典:国家サイバー統括室
施行前に企業が準備すべき対応策
本法の段階的施行に備え、企業は早期に自社の業種・役割を整理し、該当する可能性がある場合は、以下のような対策を段階的に進めることが推奨されます。
CSIRT・SOCなどの対応体制の整備
社内のセキュリティ対応体制として、次のような機能の明確化と運用整備が求められます。
- CSIRT:インシデントの対応・通報・報告を行う内部組織の設置と役割明確化
- SOC:ログ監視・脅威検知を常時行う体制。自社内または外部委託での構築も可
24時間体制の監視やエスカレーションルールを社内規程に落とし込み、訓練(演習)を通じて実効性を高めることが重要です。
フォレンジック・脆弱性診断の導入
重大インシデントが発生した際に、状況を正確に把握し報告できる体制を整えておくことが不可欠です。
- 緊急時に調査を依頼できるフォレンジック会社との連携体制
- 取得すべきログの保存期間、保全方法、ハッシュ管理などの証拠保全手順
- 脆弱性診断・ペネトレーションテストの定期実施と是正プロセス(PDCA)
こうした体制が整備されていれば、インシデント報告の根拠を明確に提示でき、再発防止策の検討もスムーズになります。
インシデント報告フローの整備
政府への迅速かつ正確な報告を行うには、平時からの文書化・役割設計が欠かせません。特に次のような点が重要です。
- 報告先:所管省庁、NISC、警察庁などへの連絡経路と優先順位
- 判断基準:報告すべき「重大インシデント」の定義の明確化
- 書式・資料:報告テンプレート、時系列記録、添付資料の項目設計
これらは社内マニュアルやフロー図として整備し、内部監査・委託元との契約対応にも活用可能な形式にしておくことが望まれます。
なぜフォレンジック調査会社への相談が必要なのか
サイバー対処能力強化法では、インシデント発生時の状況把握、報告義務への対応、さらには再発防止策の策定に至るまで、高度かつ一貫した対応体制が求められます。
こうした対応は、社内リソースだけでは限界があり、外部のフォレンジック調査会社と事前に連携しておくことが重要です。証拠保全や調査結果の正確性は、報告内容の信頼性や取引先・所管官庁への説明責任を左右します。
報告義務・脆弱性対応における第三者調査の重要性
重大なサイバーインシデントが発生した際、政府への報告には発生時期・侵入経路・影響範囲・被害の有無など、正確な事実情報が求められます。
しかし社内調査だけでは調査の客観性や網羅性に不安が残るため、フォレンジック調査会社による第三者視点での証拠保全・ログ解析が不可欠です。
無害化措置後に残る事後調査・説明責任への対応
政府による「無害化措置」によって被害拡大は止められても、攻撃の経路や流出の有無が不明なままになることがあります。
フォレンジック調査会社であれば、痕跡を分析し、攻撃の全体像や再発防止策の根拠を提示可能です。これにより、社外説明・所管庁への報告・監査対応にも備えることができます。
不正アクセスやマルウェア感染といったインシデントの被害を受けた際、フォレンジック調査によって攻撃の痕跡を洗い出し、原因や影響範囲を明確化することが可能です。
信頼できる第三者による調査であれば、法律対応にも耐えうる証拠として活用でき、対外説明の根拠としても機能します。
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