サイバー攻撃

CVE-2025-3500とは?Avastに存在する権限昇格の脆弱性と対策を解説

CVE-2025-3500

セキュリティ対策ソフトに内在する脆弱性は、最も信頼されるべき防御ラインに想定外のリスクをもたらします。とくにCVE-2025-3500のように、カーネルドライバに起因するバグは、ローカル権限昇格に直結するため、悪用された場合の被害は深刻です。

このようなゼロデイ脆弱性が悪用されると、SYSTEM権限を奪取される恐れがあり、EDRの回避やバックドアの設置など、さまざまな二次被害へ発展する可能性があります。

そこで本記事では、CVE-2025-3500の概要と脅威レベル、技術的背景、企業が取るべき対処法についてわかりやすく解説します。

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【CVE-2025-3500】とは

CVE-2025-3500は、Avast Antivirus for Windows に含まれるカーネルモードの処理に存在する整数オーバーフローの脆弱性です。この問題により、本来は制限された低権限のユーザーが、SYSTEM権限(最高権限)を取得できる可能性があります。

脆弱性の原因は、IOCTL(入出力制御)リクエストの処理中に、ユーザーが指定した値を正しく検証せず、バッファサイズの計算に使ってしまうことにあります。これにより、整数オーバーフローが発生し、任意のコードがカーネルレベルで実行される恐れがあります。

一部の技術調査では「aswbidsdriver」というドライバとの関連が指摘されていますが、NVDなどの公式情報ではドライバ名までは明記されていません。

この脆弱性は基本的にローカルからの悪用が前提とされていますが、CVEの管理元(CNA)による評価では、AV:N(ネットワーク経由)というスコアがつけられています。これは、ネットワーク越しに対象へアクセスする構成も想定されているためですが、「外部から単独で侵入可能」と断定できる情報は現時点では存在しません。

影響を受けるバージョンは、Avast Antivirus for Windows 25.1.981.6 〜 25.3.9983.922未満です。Avastはこの問題を修正したバージョン(25.3.9983.922以降)を公開しており、早急なアップデートが推奨されています。

出典:NVD-NIST

【CVE-2025-3500】の被害リスク

CVE-2025-3500は「ローカル権限昇格」の足掛かりとして、非常に危険なカテゴリに属します。単体では「一発で外部から侵入される」ものではありませんが、既にマルウェアが存在している環境や、テレワーク端末などの初期侵入後に組み合わせられるケースでは深刻な被害をもたらす可能性があります。

特に次のような影響が想定されます。

SYSTEM権限の奪取による完全支配

攻撃者がこの脆弱性を悪用すると、カーネルレベルで任意のコード実行が可能となり、SYSTEM権限を獲得します。これにより、セキュリティ製品やOS機能そのものを無効化・改ざんでき、OS内部の全制御を奪われる恐れがあります。

EDRバイパスと永続化の実現

SYSTEM権限取得後は、EDRやウイルス対策ソフトのプロセスを停止・バイパスし、バックドアや永続化スクリプトを設置することで、長期的な潜伏が可能になります。これはAPT型攻撃でも多用されるテクニックです。

リークサイト掲載による情報拡散

他の攻撃(ランサムウェアなど)と連携されると、企業内データが盗まれた上で暗号化され、リークサイトに掲載される「二重恐喝」の手段として活用される可能性があります。

出典:NVD-NIST

リスクを高める要因

この脆弱性が深刻な被害につながるかどうかは、組織や端末の利用環境によって大きく左右されます。以下のような条件が揃っている場合、リスクはより高まると考えられます。

  • Avast Antivirus(対象バージョン)がインストールされた端末が多数存在する環境
  • フィッシングやマクロ経由での「初期侵入」が発生しやすいテレワーク・開発端末の多用
  • 攻撃者がわざと脆弱なドライバを導入するBYOVD(Bring Your Own Vulnerable Driver)手法の活用

リスクレベルの比較(環境別)

環境タイプ リスクレベル 理由
個人PC(Avast使用) 中~高 マルウェア感染後に本脆弱性を利用されると、PC全体が乗っ取られる恐れ
企業クライアント端末 SYSTEM権限奪取により、社内ドメイン情報や認証情報の横展開リスクあり
サーバ環境(Avast未導入) 直接的影響はないが、BYOVDによる持ち込みリスクは残る

出典:Threat Radar

リスク低減のための具体策

CVE-2025-3500の悪用を防ぐには、単にアップデートするだけでは不十分です。以下の3点を軸にしたリスク低減策を講じることで、権限昇格や持続的侵害のリスクを最小限に抑えることが可能です。

影響バージョンの完全アップデート

Avast Antivirus を、ベンダーが公開している修正版(25.3.9983.922以降)へ速やかに更新してください。加えて、以下の点にも注意が必要です。

実施手順
  1. 社内で使用中のAvastインストール端末を棚卸し
  2. 古いバージョン(25.3未満)の存在を確認
  3. 残存する旧インストーラや自動配布設定も無効化

権限昇格の検知と初期侵入対策

権限昇格型の攻撃は、既にマルウェアが侵入していることを前提に展開されます。EDRやSIEM製品を活用し、以下のような兆候を監視・検知できる体制を整えましょう。

監視すべきイベント
  1. 不審なドライバの読み込み履歴(aswbidsdriverなど)
  2. SYSTEM権限の取得操作(権限変更・プロセス昇格)
  3. セキュリティ製品のプロセス停止や無効化挙動

また、CVE-2025-3500は「初期侵入(フィッシング、添付ファイル、スクリプト)」の直後に利用される傾向があるため、メールセキュリティやWebフィルタリングの強化も不可欠です。

既侵害の可能性に備えた検証・調査

すでに一部端末が侵害されていた可能性がある場合、以下のような痕跡を軸にフォレンジック調査を実施することが推奨されます。

調査対象ログ
  1. アカウント権限の異常な変更履歴(標準ユーザー → 管理者など)
  2. ドライバの手動インストールや読み込み記録(EventID 7045など)
  3. セキュリティ製品の予期しない停止・再起動ログ

「自組織でどれくらい危ないか」を判断するには、Avastの利用端末の数やバージョンの棚卸し、マルウェアの過去検出履歴、テレワーク端末の管理状態などを踏まえ、優先順位をつけて評価・対応計画を策定することが重要です。

出典:欧州連合サイバーセキュリティ機関(ENISA)

フォレンジック調査による脆弱性診断

CVE-2025-3500のように、カーネルレベルの脆弱性を悪用されると、SYSTEM権限での不正操作や証拠隠滅が行われるリスクが高まります。通常のログやセキュリティツールだけでは、痕跡の全容を把握することが困難です。

フォレンジック調査とは、端末やネットワーク、ログに残る痕跡を科学的・第三者的に分析することで、「実際に何が起きたのか」を明らかにする専門調査です。感染経路の特定や被害範囲の把握、バックドアの有無、内部関係者の関与なども精査可能です。

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この記事を書いた人

デジタルデータフォレンジックエンジニア

デジタルデータフォレンジック
エンジニア

累計ご相談件数39,451件以上のフォレンジックサービス「デジタルデータフォレンジック」にて、サイバー攻撃や社内不正行為などインシデント調査・解析作業を行う専門チーム。その技術力は各方面でも高く評価されており、在京キー局による取材実績や、警察表彰実績も多数。

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