PowerShellはWindows管理に欠かせない正規機能ですが、これを悪用した「PowerShellマルウェア」が深刻な脅威となっています。特に、ファイルレス型攻撃として知られ、感染後もディスクに痕跡を残さず、検知や除去が困難です。
企業ネットワークへの侵入から権限昇格、情報窃取やランサムウェア展開まで、PowerShellが多くの攻撃フェーズで使われており、EDRやSIEMなどの対策がない環境では対応が追いつかないケースも増えています。
本記事では、PowerShellマルウェアの特徴・攻撃手法・代表的な被害例と対策を網羅的に解説します。
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目次
PowerShellマルウェアとは
PowerShellマルウェアは、Windowsに標準搭載されているPowerShellを悪用し、ファイルを介さずに不正コードを実行するマルウェアを指します。補足として、完全にファイルを介さないのではなく、短時間の一時ファイル生成が行われるケースもあります。
外部からスクリプトを読み込み、直接OSのメモリ上で動作させるため、ウイルス対策ソフトの静的検知やファイルスキャンでは見つかることはありません。
このような性質から、「ファイルレスマルウェア」と呼ばれ、企業内ネットワークやEDRのすり抜けを目的に広く利用されています。
主な攻撃手法と悪用されるPowerShell機能
以下は、PowerShellマルウェアの主な攻撃の手口とその特徴となります。
ファイルレス感染とスクリプト実行
PowerShellを利用してメモリ上でのみコードを実行させることで、ディスクに一切のファイルを残さずに感染していきます。これによりウイルス対策ソフトによる検出を困難にしています。
ダウンローダ・ローダ型の使用
PowerShellスクリプトを起点に、外部サーバからマルウェア本体をダウンロード・実行する手法です。多くの場合、後続でランサムウェアや情報窃取型マルウェアが展開されます。
権限昇格・ネットワーク横展開
Invoke-CommandやWinRMなど、PowerShellの正規APIを使って社内ネットワーク内の別端末に接続し、権限昇格や横展開を行います。管理者権限が奪取された場合、全社的な拡散も短時間で可能になります。
ソーシャルエンジニアリングとの併用
「このコマンドをコピーして実行してください」といった偽のエラー表示やメール誘導により、使用者自らPowerShellコマンドを実行させるClickFix型攻撃なども確認されています。
PowerShellマルウェアが使われた主なマルウェアと事例
以下は、PowerShellマルウェアで主に使われたマルウェアと事例になります。
- Emotet：悪性マクロ付きメールの後続処理として、PowerShellでスクリプトを展開
- DarkGate：情報窃取型の新種マルウェアで、PowerShellを通じた初期感染が多い
- NetSupport：正規のリモート操作ツールを悪用した攻撃で、PowerShell経由で設置される
PowerShellマルウェアへの対策と監視ポイント
以下は、PowerShellマルウェアを防ぐための対策と監視のポイントになります。
PowerShellの実行制限とリモート無効化
組織内の端末でスクリプト実行ポリシーを設定し、WinRM、Invoke-Command等のリモートの実行を無効化することで、感染拡大リスクを抑えます。
ログ監視とEDR・SIEM連携
PowerShellの実行ログを収集・監視し、外部接続、長時間のセッション維持等の不審な挙動を、リアルタイムで検知できる体制を構築します。
OSとセキュリティソフトの常時最新化
既知の脆弱性を突かれるリスクを下げるためには、Windows Updateとセキュリティパッチの適用を定期的に行うことが必須です。
教育と権限の最小化
「見慣れない画面での操作は中止する」・「メールのコマンドは実行しない」といった基本的教育を徹底し、権限も必要最小限に抑えることで被害範囲を限定にすることができます。
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