RedLine Stealer(レッドライン・スティーラー)は、ログイン情報や仮想通貨ウォレットの秘密鍵などを盗み出す情報窃取型マルウェアです。2020年以降に確認され、現在では世界各地で感染が拡大しています。
難読化や暗号化によって検知を回避し、パスワード、クレジットカード情報、システム構成など幅広いデータを収集します。個人・法人を問わず、深刻な情報漏えいにつながる危険性があります。
本記事では、RedLine Stealerの特徴、検知回避の手口、被害のリスク、そして適切な対処法について詳しく解説します。
端末に不審な動作が見られる、または情報漏えいの兆候が確認されている場合は、RedLine Stealerへの感染が背景にある可能性があります。状況を正確に把握し、被害の拡大を防ぐためにも、フォレンジック調査に対応した専門機関へ早めに相談することをおすすめします。
\24時間365日 相談・見積無料/
目次
RedLine Stealerとは
RedLine Stealerは、情報窃取型マルウェア(インフォスティーラー)の一種であり、2020年以降に活動が確認されています。主にWindows端末を標的としており、感染後はログイン情報、仮想通貨ウォレットの秘密鍵、ブラウザに保存された認証情報などを自動で収集します。
2024年には、国際的な摘発「Operation Magnus」によって活動が一時的に沈静化しましたが、2025年には再び感染が国内外で拡大し、検出件数の増加が確認されています。
情報窃取型マルウェアの基本的な仕組みや、他の代表的な種類については以下の記事で解説しています。
>インフォスティーラーとは?個人も企業も狙われる情報窃取マルウェアの脅威
出典:Flashpoint
参考資料:ESET/サイバーセキュリティ情報局
RedLine Stealerの特徴
RedLine Stealerは、標的とする情報の範囲、感染の仕組み、拡散の手法において、他のマルウェアと比べて多くの特徴を持っています。複数の手口を組み合わせることで検知されにくく、被害が広がりやすい設計になっています。以下に代表的な特徴をまとめます。
多様な情報を盗み出す
RedLine Stealerは、ログイン情報に加え、仮想通貨ウォレット、ブラウザに保存されたクレジットカード情報、メッセンジャーのトークン、システム構成情報など、広範なデータを収集対象としています。
MaaS(Malware as a Service)による拡散
RedLine Stealerは、MaaS(マルウェア・アズ・ア・サービス)としてダークウェブ上に流通しており、月額制や買い切り形式で誰でも簡単に利用できます。専門的な知識を必要とせず、攻撃者の裾野が広がる原因にもなっています。
セキュリティ検知を回避する仕組み
難読化や暗号化などの回避技術が施されており、多くのセキュリティソフトでは正確な検出が困難です。さらに、C2(コマンド&コントロール)サーバーとの通信では、SOAPメッセージやREST APIが使用され、ネットワーク監視をすり抜けるよう構成されています。
RedLine Stealerの感染経路
RedLine Stealerは、多様な手法を用いて端末へ侵入します。感染経路は他の情報窃取型マルウェアと共通しており、代表的なものにはフィッシングメールの添付ファイル、偽ソフトの配布サイト、マルバタイジング(悪意ある広告)などがあります。
最近では、SNSのダイレクトメッセージ、動画広告、ChatGPTの名をかたる偽インストーラー、ゲーム攻略ツールを装った実行ファイルなども報告されています。正規サイトに似せた偽ページや、有名サービスを名乗るアプリケーションも多く、感染リスクが一層高まっています。
以下の記事では、情報窃取型マルウェアの主な感染経路について詳しく解説しています。

\24時間365日 相談・見積無料/
RedLine Stealerの代表的な検知回避技術6選
RedLine Stealerは、検知や解析を回避するために、複数の高度な手法を組み合わせています。ここでは、代表的な検知回避手法を6つ紹介します。
Luaバイトコードを使ってコードを隠す
RedLine Stealerの一部亜種では、Luaというスクリプト言語を用いてコードをバイトコード化し、難読化の手法として利用する例が報告されています。2024年には、ゲームチートに偽装したZIPファイルにLuaバイトコードが含まれたケースも確認されています。
Luaは軽量かつ柔軟に使える反面、バイトコード化されると多くのセキュリティツールでは解析が難しくなり、検出の回避につながります。
参考資料:The Hacker News
標準ツールを悪用するLotL攻撃で検知を逃れる
RedLine Stealerでは、Living off the Land(LotL)と呼ばれる攻撃手法が使われています。LotL攻撃は、新たなプログラムを導入せず、システムに備わった正規ツールを使ってマルウェアを実行する方法です。
PowerShell、WMI、タスクスケジューラなどのWindows標準機能が悪用される例が多く、業務でも使われているため、セキュリティソフトで検知されにくく、ログにも正規の操作として記録されやすい傾向があります。RedLine Stealerはこの特性を利用し、長期間にわたって潜伏することが可能になります。
参考資料: CIS(Center for Internet Security)
実行ファイルをパックして正体を隠す
RedLine Stealerでは、自己解凍形式の実行ファイル(SFX)を利用し、複数のマルウェアや補助ツールをまとめて展開するローダーが使われています。インストーラーやアップデートツールに偽装されることが多く、静的解析では検出されにくくなります。
参考資料:Splunk
UACをバイパスして管理者確認を回避する
RedLine Stealerは、管理者権限を取得するためにUAC(ユーザーアカウント制御)をバイパスする動作を行います。実行時には、Windows DefenderやWindows Updateの設定を変更する処理も含まれていたと報告されています。
参考資料:Splunk
他のプログラムに寄生して実行される
RedLine Stealerでは、正規のプログラムに自分のコードを注入し、そのプロセス内で実行される「プロセスインジェクション」という技術が使われることがあります。
感染コードは、explorer.exe や svchost.exe など、日常的に動作している信頼性の高いプロセスの一部として実行されるため、セキュリティ製品による検出が難しくなります。
参考資料:Splunk
C&C通信を暗号化して追跡されにくくする
RedLine Stealerは、C2(コマンド&コントロール)サーバーとの通信において、Base64やXORといった手法でデータを暗号化・難読化し、検知を回避します。
通信はHTTPまたはHTTPSを利用し、通常のWebトラフィックに紛れるように設計されているため、ネットワーク監視やセキュリティ製品でも検出されにくくなっています。
さらに、C2サーバーがダウンしている場合にはマルウェアの動作を停止させるなど、解析環境やサンドボックスでの検出を回避する仕組みも確認されています。
参考資料:Splunk
RedLine Stealerは、難読化、プロセス注入、暗号通信、サンドボックス回避など、複数の手法を組み合わせることで、検知や解析を極めて困難にしています。
紹介したような挙動がシステム上で確認された場合は、すでにマルウェアが活動している可能性があります。感染状況の把握と証拠となるデータ保全のためにも、フォレンジック調査に対応した専門会社への早めの相談をおすすめします。
\24時間365日 相談・見積無料/
RedLine Stealerに感染した場合の被害と影響
RedLine Stealerに感染すると、個人や企業の規模に関係なく深刻な被害が発生します。代表的な影響を以下にまとめています。
ログイン情報や個人データが大量に流出する
ブラウザに保存されたパスワードや通信アプリの認証トークンなど、複数の個人情報を自動で収集します。感染後、収集した情報が短時間で外部に送信され、大規模な情報漏えいにつながるおそれがあります。
社内ネットワークが乗っ取られ、二次攻撃が発生する
企業の端末が感染すると、管理権限を奪われ、社内ネットワーク全体に拡散するリスクが生まれます。結果、ランサムウェアや別のマルウェアが侵入し、システム全体の停止や情報の破壊といった深刻な被害が発生する可能性があります。
金銭的損失や企業の信用失墜につながる
クレジットカード情報や仮想通貨ウォレットの秘密鍵が窃取された場合、金銭的な被害に直結します。また、情報漏えいが発覚した際は、企業の信用や取引先からの信頼が著しく低下する可能性があります。
感染に気づかず、被害が長期間続く場合がある
RedLine Stealerは検知を回避する機能を備えているため、異常に気づかないまま使用を続けてしまうことがあります。結果、情報の送信が長期間にわたり行われ、被害が拡大・深刻化するケースもあります。
RedLine Stealerは、気づかないうちに被害を広げるマルウェアです。ログイン情報の流出やネットワークの侵害、不審な挙動が見られる場合は、情報漏えいがすでに発生している可能性があります。
感染の疑いがある場合や被害の拡大を防ぎたい場合は、フォレンジック調査に対応した専門会社へ早めに相談することをおすすめします。
\24時間365日 相談・見積無料/
RedLine Stealer感染の疑いがあるときの対処法
感染が疑われる場合は、セキュリティソフトでフルスキャンを実行し、不審なファイルを削除します。ログイン情報やクレジットカードの情報はすべて再設定し、パスワードの使い回しがないか確認してください。
仮想通貨を管理している場合は、新しいウォレットを作成し、資産を安全な環境に移す対応が必要です。アカウントの乗っ取りを防ぐには、各サービスで二要素認証を有効に設定してください。
感染経路や被害の範囲が特定できない場合は、フォレンジック調査に対応した専門会社へ相談する方法が安全です。
より詳しい対応手順については、以下のページで解説しています。

日常的な予防策は、以下のページをご参照ください

自力で対応できない場合はフォレンジック調査の専門業者に依頼する

ハッキングや不正アクセス、ウイルス感染、情報漏えいなどの問題が起きた際、自分だけでの対応が難しいと感じたら、迷わずフォレンジック調査の専門業者に相談しましょう。
どこから侵入され、どんな情報が漏れたのかを正しく把握することが重要です。特に、被害が大きい場合や情報が悪用された疑いがある場合は、専門家によるフォレンジック調査を実施することで、被害の拡大を未然に防ぐ有効な対策につながります。
信頼できる業者を選び、早めに動くことが、トラブルを最小限に抑えるポイントです。
フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
デジタルデータフォレンジックの強み
デジタルデータフォレンジックは、迅速な対応と確実な証拠収集で、お客様の安全と安心を支える専門業者です。デジタルデータフォレンジックの強みをご紹介します。
累計相談件数39,451件以上のご相談実績
官公庁・上場企業・大手保険会社・法律事務所・監査法人等から個人様まで幅広い支持をいただいており、累積39,451件以上(※1)のご相談実績があります。また、警察・捜査機関から累計395件以上(※2)のご相談実績があり、多数の感謝状をいただいています。
(※1)集計期間:2016年9月1日~
(※2)集計機関:2017年8月1日~
国内最大規模の最新設備・技術
自社内に40名以上の専門エンジニアが在籍し、14年連続国内売上No.1のデータ復旧技術(※3)とフォレンジック技術でお客様の問題解決をサポートできます。多種多様な調査依頼にお応えするため、世界各国から最新鋭の調査・解析ツールや復旧設備を導入しています。
(※3)第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく。(2007年~2017年)
24時間365日スピード対応
緊急性の高いインシデントにもいち早く対応できるよう24時間365日受付しております。
ご相談から最短30分で初動対応のWeb打合せを開催・即日現地駆けつけの対応も可能です。(法人様限定)自社内に調査ラボを持つからこそ提供できる迅速な対応を多数のお客様にご評価いただいています。
デジタルデータフォレンジックでは、相談から初期診断・お見積りまで24時間365日体制で無料でご案内しています。今すぐ専門のアドバイザーへ相談することをおすすめします。
まとめ
RedLine Stealerは、情報の収集、隠蔽、拡散といった複数の機能を備えたマルウェアです。個人の端末だけでなく、企業の業務システムにも深刻な影響を与えるおそれがあります。
被害を防ぐには、感染の早期発見と適切な初動対応が重要です。端末に不審な動作がある、または情報漏えいの可能性があると感じた場合は、フォレンジック調査に対応した専門会社への相談をおすすめします。