企業の不適切会計や不祥事がニュースなどで取り上げられ、よく耳にします。特に、日々会社の金銭を取り扱う経理担当者が横領事件を起こすことは珍しくありません。このような社内不正が表沙汰になると、金銭的被害だけでなく、企業の信頼や評判が失墜する可能性が高まります。
では、社内で横領のような不祥事が発生した場合は企業としてどのように対応すれば良いのでしょうか。今回は、経理担当者による横領の手口や横領が発生した際の対処法について解説します。
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目次
横領とは
横領罪には「単純横領罪」「遺失物横領罪」「業務上横領罪」の3種類があります。
- 「単純横領罪」…自己の占有する他人の物を横領した。または自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した(刑法252条)
- 「遺失物横領罪」…遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した(刑法254条)
- 「業務上横領罪」…業務上自己の占有する他人の物を横領した(刑法253条)
経理担当者による会社の金品の横領は、3つの横領罪のなかでも最も重い「業務上横領罪」にあたります。
業務で金品を預かる立場にある者がそれらを着服・売却した場合、「10年以下の懲役」と現行法で決められています。また、公訴時効は7年であるため、業務上横領が発生してから7年未満であれば、当該従業員が退職していたとしても刑事告訴は可能です。
経理担当者の主な横領の手口
経理担当者の主な横領の手口は下記のとおりです。
会社の口座から不正に送金
会社の口座管理を任されている経理担当者は、会社の口座から自分の口座に不正に送金し、着服することがあります。特にオンライン決済が主流になっている昨今は、経理担当者がネット上で操作することができ、不正を見逃すケースが多くなっています。
「業務をすべて一人でやろうとする」「覚えのない出金履歴がある」など少しでも違和感を感じた場合は、専門の調査会社に相談するのが良いでしょう。
売上金の着服
経理担当者が売上金を着服することがあります。最初は数百~数千円ほどの少額から着服し、徐々に着服額を増額させていくケースもあります。帳尻をあわせるため会計帳簿や取引履歴などを改ざんし、不正な横領を隠蔽します。
こまめに口座履歴をチェックし、少しでも誤差があれば確認するようにしましょう。
請求書の偽造
送金や出金を決定するのに必要な書類を偽装し横領を行う手口です。例えば、請求書を偽造して契約金を横領したり、他の社員から提出された請求書の金額に上乗せして、その差額分を横領したりします。伝票や領収書を捏造し、不正な支払いを正当なものにみせかけるのです。
経理担当者が横領した際に企業がやるべきこと
経理担当者が横領した際は下記のように対処しましょう。
証拠の収集
まずは、従業員が横領を行った証拠を速やかに収集しましょう。金銭の流れや取引履歴などの財務データを詳細に解析し、客観的な視点で現状を把握します。また、監視カメラの映像や領収書、事情聴取の録音データも証拠として有効です。
ただし横領の全容を把握することや、証拠能力の高いデータを収集することは困難を極めます。証拠の収集を表立って行うと、横領した本人や関係者が証拠の隠蔽に動く可能性があるため、第三者である調査機関と連携して調査することをおすすめします。
本人から事情聴取
十分な証拠が集まったら本人から事情聴取を行います。事情聴取を行う際は、聴取した内容のメモや録音を必ず取ってください。これは、後から事実と異なることを主張して、言い逃れするのを防ぐためです。
事情を聴取する場合は、公平でプライバシーを尊重した場所で行い、不正行為について説明を求めましょう。ただし、高圧的な態度で接したり自白を強要したりするのは厳禁です。逆に企業が名誉棄損やパワハラで訴えられる恐れがあります。
賠償金の請求
確実な証拠を収集できた場合は、賠償金の請求に踏み切りましょう。その際は弁護士などに法的なアドバイスを求めて賠償金額を算定し、本人と合意した旨を書面に残しましょう。
万が一横領した金を使い込んで本人に支払い能力がない場合は、民事訴訟や分割払いなどを検討するケースもあります。なお、身元保証書の期限内であれば、身元保証人への請求も可能です。
懲戒処分
懲戒処分とは、会社内で当該従業員が規則や規定に違反した場合に、違反行為に対して行われる処分のことです。具体的には、減給や一定期間の勤務停止、退職勧奨や解雇などが行われます。
ただし、懲戒処分をする際は、各種法令や就業規則に照らし合わせ、正当な手続きを踏む必要があります。
懲戒解雇
懲戒解雇とは、従業員が横領などの重大な違反行為を犯した場合に行われる解雇のことです。労働基準監督署長から解雇予告除外認定を受けた場合、解雇予告なしで即刻解雇することができ、退職金も支払われません。
懲戒解雇をする場合は、下記の条件を満たしている必要があるため確認しましょう。
- 懲戒解雇は、労契法15条(懲戒)、16条(解雇)の両規制が適用されることになる
- 第1に、「使用者が労働者を懲戒することができる場合」であること、つまり、使用者の懲戒権の前提として具体的な懲戒事由と懲戒罰を定めた就業規則規定が必要とされる
- 第2に、懲戒理由とされた労働者の行為が、懲戒解雇事由に該当する「客観的に合理的な理由」の存在が問われる
- 第3に、当該行為を理由として懲戒権が発生したとしても、その懲戒権の行使が懲戒処分のうち最も重い懲戒解雇とすることが「社会通念上相当」でない場合は無効とされ、罪と罰の相当性、従業員間の平等取り扱い原則、就業規則上の手続き遵守と労働者の弁明の機会の保障などの適正手続原則の観点から相当性が判定されることとなる。
引用:厚生労働省
日本では、一度雇用した従業員を解雇することは非常に難しくなっています。解雇事由が適切でないと判断されると、解雇が無効になる可能性があります。そのため、客観的な証拠を確実に入手することが重要です。
刑事告訴
刑事告訴は、横領した従業員を追求する最終的な手段です。警察に告訴状を提出する場合も、受理してもらうために一定の証拠が必要になります。証拠を収集する際は、裁判でも証拠能力が認められるデータを調査できる、専門の調査業者に相談するのがおすすめです。
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横領した経理担当者を解雇・告訴するには明確な証拠が必要
横領した経理担当者を解雇・告訴するには明確な証拠が必要になります。証言や自白も証拠となりえますが、賠償金の請求や、刑事罰を強く望む場合、犯行を裏付ける明確な証拠を集めておく必要があります。
横領を証明する証拠例
横領を証明できる証拠の例は下記のとおりです。
- 監視カメラの映像
- 会社で計上されていない領収書
- 関係者の証言
- 横領犯本人の自白
- 電子端末から会社の口座へのアクセス履歴
- 横領・キックバックの指示が書かれたメールの文面
- 金額が明らかに間違っている領収書のデータ
- 削除したファイルや文書データ
- その他横領を証明できる写真や動画
裁判所に証拠を提出する場合、デジタルデータのスクリーンショットやコピーだけでは元データに改ざんがないことを証明できません。コピーデータを提出しても、元データと同一であることを証明できないため、客観的な証拠として認められないことがあります。
デジタルデータに証拠能力を持たせたい場合、必要となるのが「フォレンジック調査」です。
デジタルデータの証拠の確保に有効な方法
デジタルデータの証拠の確保には、フォレンジック調査の利用が有効です。
フォレンジック調査とは、パソコンやスマートフォンなどデジタル端末を調査・解析し、電子的証拠を収集する手法です。現状ある証拠を保全するのみならず、特殊なツールや専門技術を用いて削除・改ざんされたデータも復旧することができます。具体的には下記のような情報を収集可能です。
- アクセスログ:従業員がどのようなWebサイトやアプリケーションを利用しているか、またどのくらいの時間を費やしているかを把握することができます。
- メールログ:従業員が送受信したメールの内容や宛先、送信日時などを確認することができます。
- ファイル更新履歴:従業員が作成したファイルの更新履歴を確認することで、どのような作業を行っているかを把握することができます。
経理担当者が横領を行っていた場合、フォレンジック調査では、当該従業員の端末でデータの改ざんが行われないよう保全作業を行い、アクセス履歴やファイルの更新履歴などのデータを収集・解析します。場合によっては故意に削除されたデータを復旧することも可能です。
フォレンジック技術で収集した証拠は、調査前にデータの保全作業が行われるため、データの同一性が担保されます。そのため裁判所や警察機関などの法的機関に提出することができ、裁判でも有効な証拠として扱われます。
ただし、自社でフォレンジック調査を行っても裁判では証拠を改ざんした疑いがもたれ、客観的な証拠としてみなされません。したがって裁判や捜査機関に証拠を提出する場合は、第三者のフォレンジック専門業者に相談することが最も適切です。
フォレンジック調査会社に相談するメリット
フォレンジック調査会社に相談するメリットは主に4つです。
- 証拠データを正しい手続きで確実に保全することができる
- 証拠隠滅されたデータの検出・復元ができる
- パスワードで閲覧できない機器も調査ができる
- 行政機関に提出できる報告書が作成できる
電子データは容易に変化してしまうため保全するのが大変ですが、正しい手順のもと解析・分析を行えば、データの信ぴょう性を担保することができます。このように収集した証拠は法執行機関や行政機関でも信用され、証拠として役立ちます。また行政機関に提出する報告書も作成することができ、複雑なログやデータの羅列を分かりやすく体系化することが可能です。
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経理担当者の横領調査をしたい場合は専門業者に相談する
不正アクセス、社内不正、情報持ち出し、職務怠慢のような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。しかし、自力で調査を行うと、調査対象範囲が適切でなかったり、意図しない証拠データの消失が発生しやすく、不完全な結果になる恐れがあります。
このような事態を防ぎ、適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。フォレンジック調査では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備での端末の調査・解析、調査報告書の提出ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
デジタルデータフォレンジックでは、お電話またはメールでお問合せいただくと、状況のヒアリングと対応方法、お見積りを無料でご案内いたします。法人様の場合、ご相談から最短30分で初動対応のWeb打合せも開催しておりますので、お気軽にご相談ください。
官公庁・上場企業・捜査機関等まで幅広い調査対応経験を持つ専門の担当とエンジニアが対応させていただきます。
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フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
多くのお客様にご利用いただいております
調査会社への相談方法
インシデントが発生した際、フォレンジック調査を行うか決定していない段階でも、今後のプロセス整理のために、まずは実績のある専門会社へ相談することを推奨しています。
取引先や行政に報告する際、自社での調査だけでは、正確な情報は得られません。むしろ意図的にデータ改ざん・削除されている場合は、情報の信頼性が問われることもあります。
インシデント時は、第三者機関に調査を依頼し、情報収集を行うことを検討しましょう。
DDF(デジタルデータフォレンジック)では、フォレンジックの技術を駆使して、法人/個人を問わず、お客様の問題解決をいたします。
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解析した結果は、調査報告書としてレポートを作成しています。作成した報告書には、調査で行った手順やインシデントの全容などが詳細に記載され、法執行機関にも提出可能です。
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経理担当者の横領を防止する方法
経理担当による横領事件が発生した場合、その背景には「一人にお金の管理を任せていた」「社長や役員が帳簿をみることがなかった」ということが多いです。経理担当者の横領を防止する方法を下記に記載したので確認しましょう。
- 金銭の管理は複数名で行う
- 定期的に担当者を変える
- 経営陣が帳簿、小口現金、口座の出入金を定期的に確認する
経営陣が主体となって不正の起こりにくい職場づくりをしていくことが大切です。
よくある質問
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