LINEヤフー株式会社は2025年12月、一部サービスで情報の誤表示が発生し、個人情報が意図せず表示される事象があったとして、公式に公表を行いました。
本記事では、LINEヤフーが公開した情報をもとに、発生の経緯や原因、企業の対応について、時系列を交えて分かりやすく解説します。
出典:Yahoo!ニュース
LINEヤフー株式会社が情報誤表示による情報漏えい被害を発表
2025年12月9日、LINEヤフー株式会社が提供する「LINE公式アカウント」において、特定条件下で利用者や企業の情報が誤って表示され、情報漏えいが発生していたことを公表しました。
これは、外部CDNサービスの仕様とLINEヤフー株式会社のデータ処理方式の不一致に起因するもので、すでに対応は完了しており、現時点で不正利用などの二次被害は確認されていないとしています。
2025年9月にLINEヤフー株式会社は情報誤表示による漏えいを把握
本事案は、2025年9月19日に同社が運営する「LINE Security Bug Bounty Program」参加者からの指摘により発覚しました。その後、以下のような時系列で対応が進められています。
- 9月19日:脆弱性の通知を受領し、社内調査を開始
- 9月24日:外部CDNサービス提供会社へ調査依頼
- 9月25日:同社確認後、緊急対応を開始
- 9月29日:一次対応完了
- 10月31日:漏えいが確認されていない経路にも予防措置を実施
- 11月17日:外部CDNサービスによる修正完了を確認
- 12月4日:CVE(脆弱性識別子)が公開され、ゼロデイの懸念が解消
- 12月9日:同社が公式に本事案を公表
CDNの仕様差異と通信処理の不一致により情報が誤表示
今回の漏えいは、いわゆる不正アクセスやマルウェアなどの攻撃によるものではありません。
外部CDN(コンテンツ配信ネットワーク)サービスの仕様と、LINEヤフー側のデータ処理方式の不一致によって、以下のような条件下で誤って情報が表示される現象が確認されました。
- 「LINEチャット」や「LINE公式アカウント」管理画面で、同一通信経路を使った利用者間で、検証実行中に情報が交差的に表示されるケースが発生
- 発生確率は0.001%未満と極めて低いものの、複数の時間帯で発生が確認された
表示された可能性のある情報は以下の通りです。
- 利用者:利用者の名前、内部識別子、プロフィール画像など
- 企業:管理者情報、配信メッセージ情報など
- チャット内容:LINEチャット内の一部テキストメッセージ(画像・動画・ファイルは除く)
LINEヤフー株式会社の対応
LINEヤフー株式会社は、指摘を受けて即座に調査と一次対応を行い、最終的にはCDN提供元と連携して修正プログラムの適用と通信処理の見直しております。加えて、以下のような対応を取りました。
- 同社サービス全体への影響調査と予防措置の展開
- Bug Bounty Programの運用一時停止(不適切な検証手法が行われたため)
- 今後の安全性と実効性を両立させた検証体制の再設計
現在は、問題はすでに解消されており、不正利用などの二次被害は確認されていません。
出典:LINEヤフー
個人情報漏えいによる企業へのリスク
今回のLINEヤフー株式会社のように、外部からの不正アクセスではなく、外部CDNサービスとの仕様の食い違いと社内処理の設計不備によって、利用者の情報が誤って表示されるケースであっても、企業にとっては深刻なセキュリティリスクとなります。
一度情報が外部の利用者に表示されてしまえば、その内容が第三者に保存・拡散される可能性があり、その影響を完全に回収することは困難です。たとえ現時点で不正利用が確認されていなくても、「いつ」「誰に」利用されるか分からないというリスクは残り続けます。
さらに、情報漏えいは利用者や取引先の信頼を大きく損ない、企業としての説明責任や法的責任、社会的評価の低下といった二次的な被害に発展する可能性があります。
今回のような技術仕様に起因する不備は、システム連携設計や運用ルールの見直し不足が原因であることが多く、対応を怠れば、同様の事象が繰り返されるリスクも高まります。
影響範囲や誤表示された情報の正確な特定ができなければ、的確な対応や再発防止策を講じることはできません。したがって、このような情報漏えいが発覚した際には、外部のセキュリティ調査機関による技術的な分析と再検証が不可欠です。
個人情報漏洩した場合の報告義務
2022年4月に施行された「改正個人情報保護法」では、個人データの漏えい、あるいは漏えいが発生する可能性がある場合、報告と通知が法人に義務付けられました。違反した企業には最大1億円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
情報漏えいが発生した際に、企業は個人情報保護委員会へ2回報告する必要があります。それぞれ報告内容と報告期限が定められているため、注意しましょう。
- 漏えい等の事実が発覚したら、3〜5日以内に個人情報保護委員会へ通報
- 発覚から30日以内に被害を調査して個人情報保護委員会へ報告
データ漏えいが発生した場合は、外部の調査専門業者に調査を依頼することが重要です。
特にフォレンジック調査会社は、デジタル機器のデータ保全やアクセス調査に関する専門技術を保有しています。この技術により漏えいの原因や影響範囲を的確に把握し、再発防止策を十分に講じることができます。
また、調査報告書も作成してもらえるため、個人情報保護委員会へそのまま報告することも可能です。
フォレンジック調査とは
フォレンジック調査とは、サイバー攻撃、情報漏えい、データ改ざんなどのセキュリティ関連インシデントが発生した際に、その原因を特定し、被害の範囲や影響を明らかにするための詳細な調査手法です。
もともとフォレンジック調査は、犯罪や事件が起きた時、その現場から犯行の手掛かりとなる「鑑識」を指していました。特にデジタルデータからの証拠収集・分析は「デジタル鑑識」あるいは「デジタル・フォレンジック」とも呼ばれます。
インシデントが発生した場合、内容によっては特定の機関への報告義務が生じることがあります。自社のみで調査を行った場合、報告書の内容が認められないケースもあり、第三者機関による調査が一般的です。
私たちデジタルデータフォレンジック(DDF)は、官公庁、上場企業、捜査機関など、多様な組織のインシデント対応を行ってきた実績があります。
相談や見積もりは無料で、24時間365日体制でご依頼を受け付けています。早期対応が被害拡大防止の鍵となりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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DDFは累計ご相談件数3.9万件以上のフォレンジック調査サービスです
まとめ
本記事では、LINEヤフー株式会社が提供する「LINE公式アカウント」における情報誤表示による情報漏えい事案について解説しました。
本件は設定ミスや攻撃によるものではなく、外部CDNとの連携仕様に起因する不具合によって、利用者や企業情報が一部の利用環境下で誤表示される事象です。
技術的な脆弱性が原因の情報漏えいにおいては、迅速な検出・修正に加え、影響範囲の特定と透明性のある公表が重要です。今後は、外部サービスとのインテグレーションに関する設計・検証体制の強化がますます求められるでしょう。
同様のセキュリティ課題については、以下の関連記事でも詳しく解説しています。ぜひご参照ください。
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