「経理担当の動きが不自然」「お金の帳尻が合わない」といった兆候が見えたとき、まず想定すべきリスクが横領です。社内で発生する不正は、金銭的な損失にとどまらず、信用や組織運営にも大きな影響を及ぼします。
とはいえ、本人を問い詰めたり、独自に証拠を集めるのは危険です。初動を誤ると、証拠となるデータの消失や、会社側の不当対応と判断されるリスクがあります。
本記事では、横領の基本・よくあるパターン・初動の考え方・失敗例など、経営者や管理者が冷静に判断するためのポイントを整理します。
>>職場での横領を調査するには?その手口・証拠・調査方法・費用感まで解説
目次
会社における「横領」とは何か
横領とは、会社から預けられたお金や物を、正当な権限がないまま自分のものにしてしまう行為です。たとえば、経理担当者が小口現金を抜き取ったり、営業が売上金の一部を入金せず流用するケースなどが該当します。
このような行為は、単なる規律違反にとどまらず、刑法上の「業務上横領」として処罰される重大な不正です。横領は個人によるものだけでなく、取引先との共謀や内部の複数人による関与など、発覚しにくい形で行われることもあります。
重要なのは、問題を個人の不正にとどめず、「なぜそれが起きたのか」という社内体制の脆弱性にも目を向けることです。再発防止の観点からも、体制そのものを点検する姿勢が求められます。
会社で起こる横領の代表的なパターン
実際の企業現場では、以下のような横領が繰り返し発生しています。中小企業から上場企業まで、業種や規模に関係なく起こり得るものばかりです。
現金の抜き取り・着服
小口現金やレジ内の現金を一時的に抜き取って返済せずに着服したり、売上金の一部だけを申告して差額を自分のものにしたりする手口です。銀行口座から不正に振込・引き出しを行う場合もあり、日常業務に紛れて発覚しにくい特徴があります。
帳簿を使った架空請求・水増し請求
存在しない取引先を装って架空の請求書を作成し、自分に関連する口座へ振込をさせる方法や、実在する仕入先と共謀して水増し請求を行い、差額をキックバックとして受け取る手口もあります。帳簿や経費申請のチェックが甘いと繰り返されやすい傾向にあります。
金券・切手等の現物流用
会社名義で購入された商品券や切手、回数券などの物品を私的に使ったり、換金して流用するケースです。現金よりも管理が緩くなりがちで、発見が遅れることもあります。形式上の帳簿処理がされていても、実物がなくなっている場合には不正の可能性があります。
横領が発覚したとき会社に起こるリスク
横領が発覚した場合、会社には金銭面・信頼面の両面で大きな影響が及びます。とくに組織内の信頼関係や対外的な評価に直結するため、表面化した後の対応には慎重さとスピードの両方が求められます。
横領による直接的な損失と対応コスト
当然ながら、横領された金額自体が会社の損失となります。さらに、社内調査や専門家(弁護士・会計士)への相談費用、再発防止のためのシステム見直しや社内教育費用など、周辺コストも発生します。問題が大きくなればなるほど、回収不能額と対応コストが膨らむ傾向にあります。
信用失墜と外部からの信頼低下
役員や社員による不正が明らかになると、顧客・取引先・金融機関からの信頼を失うリスクがあります。とくに上場企業や大規模法人では、プレスリリースや有価証券報告書への記載が求められることもあり、企業ブランドに大きなダメージを与えます。
経営判断への影響と監査対応の負荷
大きな横領事件が発覚した場合、内部統制の不備を理由に監査法人から指摘を受けることがあります。また、経営陣の管理責任やガバナンスが問われ、経営判断や組織体制の見直しを迫られる事態に発展することもあります。
横領が疑われるときに会社が取るべき基本姿勢
横領の疑いが生じた段階では、「何をするか」よりも「どう考えるか」が重要です。拙速な行動は、事実解明を難しくするだけでなく、会社側のリスクを高めることにもつながります。
拙速な対応が招くリスク
疑いがあるからといって、すぐに本人を問い詰めたり、周囲に噂を広げたりすると、後にトラブルへ発展する可能性があります。対応の順序を誤ると、証拠が消失する恐れや、不当対応と受け取られるリスクが高まります。
事実確認と証拠保全の重要性
この段階で会社が意識すべきなのは、「誰が悪いか」を決めることではなく、「事実として何が起きているのか」を整理することです。帳簿や取引の記録など、後から確認できなくなる可能性のある情報については、安易に手を加えず、冷静に整理する姿勢が求められます。
具体的な調査や証拠の取り扱いについては、状況に応じて専門的な判断が必要になる場合もあります。
社内だけで抱え込まないという判断
横領の問題は、金額や期間、関係者の立場によって会社への影響が大きく異なります。社内対応だけで判断しようとすると、対応が遅れたり、判断を誤ったりするケースも少なくありません。
「この段階で社内対応を続けるべきか」「外部の専門家に相談すべきか」を見極めること自体が、初動対応の一部だと考えることが重要です。
社内対応を誤った場合の失敗例
横領の疑いがあるとき、社内だけで解決しようと焦るあまり、かえって会社側のリスクを高めてしまう失敗も多く報告されています。とくに証拠が不十分なまま対応を進めると、法的トラブルに発展するおそれもあります。
証拠が不十分なまま本人を追及
証拠がそろわない段階で本人に強く追及した結果、横領の立証に失敗し、逆に「名誉毀損」「パワハラ」「不当解雇」として会社側が訴えられるケースがあります。感情的な対応や、録音・記録のない場面での問い詰めは避け、冷静な事実整理が不可欠です。
内部統制を見直さず同じ手口が繰り返される
発覚した横領を個人の問題として処理し、再発防止策や決裁フローの見直しを行わなかった結果、同一人物または別の担当者によって類似の不正が繰り返され、被害が長期化・高額化した例もあります。横領は「組織の仕組み」が問われる問題でもあります。
横領問題を専門家に相談すべきタイミング
横領の疑いがある場合、すべてを社内だけで判断しきるのは難しいケースもあります。特に、事実関係が複雑な場合や、影響範囲が読めない場合には、早めに専門家の視点を取り入れることが有効です。
>>横領調査の費用はどのくらい?依頼方法や調査内容を専門業者が解説
疑いはあるが事実が複雑で特定できない
帳簿やログを確認しても、証拠が散逸していたり、複数の経路が絡んでいたりする場合には、第三者の視点による整理と分析が有効です。曖昧なまま処分や開示を進めると、逆にトラブルの火種になることもあります。
金額が高額・期間が長期にわたる
数十万~数千万円に及ぶ横領が数年単位で続いていたケースでは、損害賠償や刑事告訴、保険申請など、複雑な対応が必要になるため、社内調査だけでは対応しきれません。調査の客観性や報告書の妥当性も問われます。
懲戒・損害賠償・刑事告訴など法的対応を検討している
懲戒処分や解雇、告訴を検討している場合は、法的証拠として通用する形での証拠収集が重要です。調査の初期段階から弁護士やフォレンジック調査会社と連携することで、後のトラブルを回避できます。
なお、専門家への相談は「いきなり依頼する」ものではなく、社内でどこまで対応すべきかを判断するための材料を得るための手段として活用できます。
会社の横領調査をしたい場合は専門業者に相談する
社内不正・横領・情報の持ち出しなどが疑われる場合、その発生経路や影響範囲を正確に把握するには、専門的な調査が必要になることがあります。特に、被害が長期・高額にわたるケースや、関係者が複数に及ぶ場合は、社内対応だけでの判断は困難です。
フォレンジック調査では、対象となる端末やシステムの操作履歴・通信ログを技術的に解析し、不正の痕跡や証拠データを保全・可視化することができます。調査結果は、裁判所・警察・監督官庁・保険会社などへの提出資料としても活用可能です。
フォレンジック調査を依頼するメリット
会社の横領が疑われるケースにおいて、フォレンジック調査を専門業者に依頼する主なメリットは、次の2点があります。
①専門エンジニアの詳細な調査結果が得られる
自社で調査を進めると、証拠となるデータを見落としたり、記録を誤って消してしまうリスクがあります。フォレンジック専門業者であれば、法的手続きに準拠しつつ、証拠として有効な形でデータを保全・解析することができます。
②公的機関に提出できる報告書を作成可能
調査結果は、専門家が読み解けるだけでなく、社内の意思決定者や社外への説明にも使える形式で報告書として提出されます。公的機関や保険会社への提出資料としても信頼性が担保されます。
デジタルデータフォレンジックでは、お電話またはメールでお問合せいただくと、状況のヒアリングと対応方法、お見積りを無料でご案内いたします。お気軽にご相談ください。
「何が起きているのか分からない」「対応を誤って社内トラブルにしたくない」という段階でも、早期にご相談いただくことで、適切な判断と対応がしやすくなります。
まとめ
社内でお金の不自然な動きが見えたとき、横領の可能性を念頭に置くことは重要です。ただし、拙速な対応は証拠が消失する恐れや、社内トラブルの火種になりかねません。
まずは冷静に記録を整理し、状況に応じて外部の専門家と連携することが、被害の最小化と再発防止につながります。
よくある質問
対応内容・期間などにより変動いたします。
詳細なお見積もりについてはお気軽にお問い合わせください。
専門のアドバイザーがお客様の状況を伺い、概算の見積りと納期をお伝えいたします。
可能です。当社は特定の休業日はございません。緊急度の高い場合も迅速に対応できるように、365日年中無休で対応いたしますので、土日祝日でもご相談下さい。
もちろん可能です。お客様の重要なデータをお取り扱いするにあたり、当社では機密保持誓約書ををお渡しし、機器やデータの取り扱いについても徹底管理を行っております。また当社では、プライバシーの保護を最優先に考えており、情報セキュリティの国際規格(ISO24001)およびPマークも取得しています。法人様、個人様に関わらず、匿名での相談も受け付けておりますので、安心してご相談ください。



