情報漏洩や内部不正が疑われるとき、最も重要なのはデータの保全と原因の特定です。その中でも「メールフォレンジック」は、送受信されたメールデータを対象に調査を行い、インシデントの真相解明と法的証拠の収集を目的としたデジタルフォレンジックの手法です。
この記事では、メールフォレンジックの概要から具体的な調査手順、よくあるケース、調査時の注意点までを網羅的に解説します。特に、個人や社内で安易に調査を進めるリスクと、フォレンジック専門企業への相談の重要性についても詳しく説明しています。
目次
メールフォレンジックで解明できること
メールフォレンジックを行うことで、どのような情報を明らかにできるのかを紹介します。
削除されたメールの復元
ユーザーが削除したメールも、サーバーのバックアップやログから復元できる場合があります。特にGmailやMicrosoft Exchangeなど、クラウドメールを利用している場合には、管理コンソールやバックアップデータを通じた復旧が可能です。
送受信日時・送信者の特定
送信者のメールアドレス、日時、件名などは、メールのヘッダー情報から取得可能です。これにより、特定のタイミングで行われた不審な送信を可視化できます。
添付ファイルの追跡
添付ファイルがどこに送信されたか、誰がダウンロードしたかをログから調査できます。社内のファイルサーバーやクラウドストレージのアクセスログも併用して分析します。
社内不正の証拠収集
上司の指示を偽って行われた不正送金や、顧客データの無断送信など、社内での不正を裏付ける証拠としてメール内容を活用できます。
メール転送・自動転送設定の確認
知らない間に外部アドレスに自動転送が設定されていた、という事例もあります。Microsoft365やGoogle Workspaceでは管理者が設定状況を確認・記録できます。
IPアドレス・アクセス元の特定
送信元IPやログイン履歴から、社外からの不正アクセスや、特定端末からの送信行為を割り出せる可能性があります。
メールフォレンジックの具体的な調査手順
メールフォレンジックは、法的証拠として通用するよう一貫したプロセスで実施する必要があります。以下に、各ステップを詳しく解説します。
ヒアリングとインシデントの状況整理
最初に、どのようなインシデントが発生しているのか、誰が関与しているのかを明確にする必要があります。
- 関係者から事実関係をヒアリングする。
- 調査対象のメールアカウント・期間・キーワードを決定する。
- インシデントの再発防止策まで想定しておく。
証拠データの保全
証拠能力を維持するには、「改ざんされていないデータ」をそのまま保管する必要があります。
- 調査対象のPCやメールサーバーを隔離。
- ディスクのイメージ化を行い、原本を保全。
- 操作ログやシステムログも取得する。
メールデータの取得と整備
メールフォレンジックでは、PSTファイルやMBOXファイルなど、メール形式を適切に抽出・解析する必要があります。
- 対象端末からメールファイルを取得する。
- Exchange、Outlook、Thunderbirdなど各形式に応じて整備。
- 削除メールの復元処理を行う。
メタデータ・ログの解析
送信日時・IP・メールクライアントなどの詳細は、ヘッダー情報やログに残っています。
- メールのヘッダー情報を解析する。
- Gmailの「表示元情報」からIPやSPF、DKIM結果を確認。
- ログイン履歴と突合して異常を特定。
証拠抽出と報告書作成
調査で得られた証拠をもとに、法的に有効なレベルで報告書を作成する必要があります。
- 証拠として使用可能なメールの一覧を整理。
- 時系列でインシデントの流れを再構成。
- 調査報告書をPDF形式でまとめ、弁護士や警察への提出準備。
フォレンジック専門企業に依頼すべき理由
個人や社内だけでフォレンジック調査を進めると、証拠能力が失われるリスクが非常に高くなります。また、調査ツールの扱いにも専門知識が求められます。
特に以下のようなケースでは、フォレンジック専門企業に調査を依頼すべきです。
- 退職者による情報持ち出し
- 外部との不正取引
- 横領・業務妨害など刑事事件の可能性がある場合
証拠の真正性を維持し、警察・弁護士に提出できる形に整えるには、専門家の力が不可欠です。

適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。特に、法的手続きが絡むケースや被害が広範囲に及ぶ場合は、専門家の力を借りることで被害の最小化と信頼性の高い証拠の収集が可能です。
当社では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
デジタルデータフォレンジックの強み
デジタルデータフォレンジックは、迅速な対応と確実な証拠収集で、お客様の安全と安心を支える専門業者です。デジタルデータフォレンジックの強みをご紹介します。
累計相談件数39,451件以上のご相談実績
官公庁・上場企業・大手保険会社・法律事務所・監査法人等から個人様まで幅広い支持をいただいており、累積39,451件以上(※1)のご相談実績があります。また、警察・捜査機関から累計395件以上(※2)のご相談実績があり、多数の感謝状をいただいています。
(※1)集計期間:2016年9月1日~
(※2)集計機関:2017年8月1日~
国内最大規模の最新設備・技術
自社内に40名以上の専門エンジニアが在籍し、14年連続国内売上No.1のデータ復旧技術(※3)とフォレンジック技術でお客様の問題解決をサポートできます。多種多様な調査依頼にお応えするため、世界各国から最新鋭の調査・解析ツールや復旧設備を導入しています。
(※3)第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく。(2007年~2017年)
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ご相談から最短30分で初動対応のWeb打合せを開催・即日現地駆けつけの対応も可能です。(法人様限定)自社内に調査ラボを持つからこそ提供できる迅速な対応を多数のお客様にご評価いただいています。
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メールフォレンジックの活用事例
実際にどのような場面でメールフォレンジックが使われるのか、よくあるケースを紹介します。
退職者による顧客情報の持ち出し
退職直前の社員が、顧客情報リストを私的なメールアドレスに転送していたケースです。このとき、メールフォレンジックによって以下のような証拠が明らかになる可能性があります。
- 社内メールログから特定の日時に外部送信された記録を確認。
- メールのヘッダー情報から送信先IPやアカウント名を特定。
- 送信内容に含まれていた顧客リストの内容を精査。
経理部門の内部不正
経理担当者が業務メールを装って不正送金指示を行っていた事例です。メール本文に含まれる不審な取引先口座情報が発見されました。
- 送金指示メールの件名・宛先・本文を抽出。
- ヘッダーから送信元IPを確認し、社内ネットワークからの操作であることを確認。
- 他の従業員アカウントからの類似メールがないか横断検索。
外部取引先との不正契約
社内で許可されていない外部との契約書がメールで交わされていた事案です。添付されたPDFファイルとその送受信履歴が証拠となる可能性があります。
- 送受信メールから添付ファイルのハッシュ値を取得。
- 送信時のタイムスタンプと、契約日との相違を確認。
- 同様の契約に関する他のやり取りも時系列で並べて調査。
まとめ:証拠の保全こそ最優先。迷わず専門家に相談を
メールフォレンジックは、事実解明と証拠収集における最も重要な調査手法のひとつです。ですが、その一方で、証拠の取り扱いを誤ると、証拠能力を失い、訴訟や警察の捜査に支障が出る可能性もあります。
インシデントが発覚した段階で、社内で対処を進める前に、必ずフォレンジック調査の専門会社へ相談することをおすすめします。情報漏洩、不正取引、内部犯行などが疑われる場合は、早期に調査を開始することで被害を最小限に抑えられます。