近年、転職活動の活発化に伴い、退職者や転職者による情報持ち出しトラブルが増加しています。特に、退職後に自社商品に酷似した商品を販売したり、スパムメールやマルウェアが増加するケースが報告されています。
USBメモリやスマートフォンを使ったデータ持ち出しに加え、遠隔操作アプリを使ったサイバー犯罪も発生。顧客情報が流出すると、同業他社で不正利用されたり、ダークウェブで販売されることで、企業の信用や利益に重大な影響を与えます。
本記事では、退職者や転職者による顧客情報持ち出しが発覚した際に企業が取るべき対応方法と再発防止のための予防策について解説します。
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目次
顧客情報持ち出しのリスクとは?
従業員による顧客情報の持ち出しは、企業の信用を著しく損ね、損害賠償や刑事責任につながる重大な問題です。
個人情報保護法違反
顧客の氏名、連絡先、購入履歴などのデータは個人情報に該当します。従業員がこれを無断で持ち出した場合、「個人情報の不正取得・不正利用」として個人情報保護法違反に該当します。
- データを個人的なデバイス(USB、私用PCなど)に保存した時点でアウト
- 転職先でデータを使った場合は「目的外利用」で加重違反
- 法的には懲役・罰金の刑事罰対象にも
不正競争防止法違反
営業秘密である顧客リストを競合先に提供すれば、それは不正競争防止法違反。これは民事訴訟の対象となり、企業から損害賠償を求められる事例も少なくありません。
雇用契約・就業規則違反
企業の就業規則や雇用契約には多くの場合、「在職中・退職後も機密情報を外部に漏らさない」と明記されています。違反すれば懲戒処分や法的責任を問われます。
企業イメージの毀損
情報漏えいが発覚すれば、報道・SNS等で拡散され、企業イメージは大きく傷つきます。長年の信頼やブランドが一夜にして失われることもあります。
訴訟・賠償リスク
企業だけでなく、被害を受けた顧客からも訴訟されることがあります。損害賠償金額が数百万~数千万円規模に達することもあり、企業経営を直撃します。
顧客からの信頼喪失
「情報が流出した」と知れば、顧客は不安になり、サービス解約や乗り換えが発生します。数年単位での損失に直結するリスクです。
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顧客情報持ち出しの調査方法
顧客情報の不正持ち出しが疑われる場面では、適切な証拠保全と高度な技術解析による事実解明が不可欠です。本章では、デジタルフォレンジックを中心とした調査フローについて、実務の流れに沿って詳しく解説します。
初期ヒアリングと調査計画の策定
まず最初に行うべきは、問題の背景と状況を把握するヒアリングです。以下の情報収集がカギを握ります。
- 漏えいが疑われる日時・場所・関係者を洗い出す
- 対象の顧客情報の種類と保管先を特定
- 退職者や異動者など関係者リストの収集
ヒアリングをもとに、調査対象機器、必要なログの種類、調査期間を含む計画を立案し、調査工数やコストも見積もります。
デジタルフォレンジック調査の実施
証拠データの解析には、高度な技術を要するデジタルフォレンジックが用いられます。対象はPC、スマホ、サーバー、NAS、クラウドなど多岐にわたります。
- 削除済みファイルやメールの復元
- USB接続やファイルコピー履歴の解析
- 社内LANや外部送信のログトレース
- 外部クラウド(Google Drive等)のアクセス記録調査
不正なファイル移動や送信履歴が見つかれば、行為者の特定や漏えいタイミングの確定が可能になります。
物理的証拠の確認
フォレンジックと並行して、社内の監視カメラや入退室記録の調査も実施します。
- エントランスや執務室におけるカメラ映像の確認
- USB機器を接続・取り外しする瞬間を特定
- 社内勤怠・セキュリティカードの履歴でアクセス状況を補完
これにより、デジタル証拠との整合性確認や、複数人物の関与可能性の有無を明らかにできます。
証拠保全の徹底
デジタル証拠は改ざんが容易であるため、初動の保全対応が重要です。
- 対象機器の電源をオフにして封印(操作痕跡を残さない)
- ストレージの物理コピーを取得し、MD5やSHA256のハッシュ値を記録
- 調査の経緯・操作履歴を「Chain of Custody」として記録
証拠能力を担保する唯一の手段が、適正なフォレンジック手順の順守である点を強く意識してください。
行為者・経路の特定
集めたログや映像、証拠の整合性を検証しながら、誰が、いつ、どのように情報を持ち出したのかを分析します。
- ユーザーID・ログイン履歴とUSB接続ログを突合
- 退職前の作業履歴やアプリ使用履歴を確認
- 必要に応じて、関係者へのインタビューも実施
調査結果の報告と証拠提示
すべての調査が完了したら、証拠に基づいた報告書を作成します。これは、社内規律や訴訟対応、警察相談の基礎資料となります。
- 行為の内容・時期・使用機器を明記した時系列レポートを作成
- 証拠画像(ログ抜粋やフォルダ構造)を添付
- 再発防止策やセキュリティ改善案も併記
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企業の情報持ち出しの調査は専門業者に相談する

社内不正・横領・情報持ち出し・職務怠慢のような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。
特に、法的手続きが絡むケースや被害が広範囲に及ぶ場合は、専門家の力を借りることで被害の最小化と信頼性の高い証拠の収集が可能です。
>情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務とは?詳しく解説
当社では、インシデント対応のプロが初動対応から、専門設備でのネットワークや端末の調査・解析、調査報告書の提出、ならびに報告会によって問題の解決を徹底サポートします。
フォレンジックサービスの流れや料金については下記からご確認ください。
【初めての方へ】フォレンジックサービスについて詳しくご紹介
【サービスの流れ】どこまで無料? 調査にかかる期間は? サービスの流れをご紹介
【料金について】調査にかかる費用やお支払方法について
【会社概要】当社へのアクセス情報や機器のお預かりについて
デジタルデータフォレンジックの強み
デジタルデータフォレンジックは、迅速な対応と確実な証拠収集で、お客様の安全と安心を支える専門業者です。デジタルデータフォレンジックの強みをご紹介します。
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(※1)集計期間:2016年9月1日~
(※2)集計機関:2017年8月1日~
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(※3)第三者機関による、データ復旧サービスでの売上の調査結果に基づく。(2007年~2017年)
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第三者委員会におけるフォレンジックの重要性
企業不祥事の調査では、表面的なヒアリングだけでは事実関係を十分に把握できないケースも少なくありません。特に、やり取りや操作の記録といったデジタルデータに証拠が残る現代では、専門的な技術と知見が求められます。
日本弁護士連合会の『企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン』でも、「必要に応じてデジタル調査の専門家に調査への参加を求めるべき」と明記されており、フォレンジック調査は、公的にも重要なアプローチの一つとして位置付けられています。
調査の初動段階から、フォレンジックの活用を視野に入れることが、的確な対応への第一歩となります。
フォレンジック調査が有効な場面
フォレンジック技術は、社内不正の“見えにくい痕跡”を可視化し、証拠に基づく判断を支援します。たとえば、以下のような目的で活用されます。
フォレンジック技術でできること | フォレンジック調査の活用目的 |
---|---|
削除済みファイルの復元 | 証拠隠滅を試みた痕跡を追跡 |
メール・チャットの解析 | 内部のやりとりから動機や指示系統を明らかにする |
アクセスログの調査 | 不正操作の実行者や実行時間を特定する |
記録改ざんの検出 | 会計不正や品質データ改ざんの証拠を技術的に裏付ける |
これらはどれも、高度な技術と専門的な解析スキルが求められる領域であり、専門家による対応が不可欠です。
「第三者委員会でフォレンジック調査をどう活用できるのか」について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

近年…
専門調査会社への相談は、早期対応への一歩
当社では、第三者委員会との連携や社内調査の支援など、状況に応じた柔軟な対応が可能です。不正の兆候に気づいたときや、調査の進め方に迷ったときには、まずは専門の調査会社へご相談ください。初動の一手が、被害拡大を防ぎ、組織の信頼を守ることにつながります。
退職・転職者による顧客情報の持ち出しを未然に防ぐための対策
退職者・転職者による顧客情報持ち出しが過去に発生した場合は、再発防止のための予防策を新たに実施する必要があります。
入社時に身元保証書の提出を義務化する
身元保証書とは、従業員が雇用契約や就業規則に違反した場合、企業に損害を与えたときに、その賠償金を従業員の身元保証人に請求できる書類です。
身元保証書があれば、従業員が不正行為を行い企業が損害を受けた場合、作成日から3年~5年間の間に、従業員に支払い能力がなくても身元保証人に賠償金を請求することができます。
従業員の入社時に身元保証書の提出を義務付け、身元保証人の署名捺印を求めることで、万が一の不正行為による経済的損失を補填できるだけでなく、不正行為の抑止力としても有効です。
従業員と秘密保持契約書を締結する
秘密保持契約書とは、企業が保有する重要な情報を従業員が取り扱う際、情報を第三者に開示したり不正に使用しないことを約束する契約書です。主に企業の秘密情報を守るために交わされますが、従業員の入退社時にも必ず締結することが重要です。
秘密保持契約書を締結する際には、以下のポイントを明確に記載しておくと、後々のトラブルを防止することができます。
- 秘密情報の内容や期間を明確にする
- 情報の公開範囲を明確に定める
- 秘密情報の使用範囲を明確に定める
- 情報の廃棄方法や返還方法について明確にする
秘密保持契約書を締結することで、従業員が企業の秘密情報を不正に持ち出すリスクを減らし、企業の機密を守るための重要な措置となります。
顧客情報・顧客名簿の取り扱い方法を就業規則に明記する
企業内で情報持ち出しが発生する原因の一つとして、社内での情報取り扱いに関する規則が曖昧であることが挙げられます。これを防ぐためには、顧客情報や名簿の取り扱い方法を就業規則に明記することが重要です。
具体的に、以下の内容を規則に追加することを検討しましょう。
- 顧客情報や顧客名簿の社外持ち出しの禁止
- 顧客情報や顧客名簿のコピーやスキャン、撮影の禁止
- 顧客情報や顧客名簿の私用のデバイスへの保存の禁止
- 顧客情報や顧客名簿の廃棄方法
- 顧客情報や顧客名簿の取り扱い規定を破った者への罰則
また、顧客情報や名簿といった機密情報の取り扱いについて、紙媒体と電子データの両方を想定した規定を作成しておくことが重要です。
- 重要機密文書には「㊙」などの表示を付ける
- 顧客名簿などの重要書類は金庫や立ち入り制限区域で保管する
- 機密情報を含む電子ファイルやドキュメント名には「秘密」「重要」などの識別を明記
- 機密情報が保存されている外付けHDDやUSBメモリなどの記録媒体に「㊙」などを記入
- 機密情報のファイルやフォルダにパスワードを設定する
企業のデータや外部機器は全て返却または削除する
顧客情報の持ち出しを防ぐためには、退職者や転職者に対して、会社のデータや外部機器の返却・削除を徹底することが非常に重要です。
退職する社員が使用していた社用パソコン、外付けハードディスク、USBメモリなどの外部機器をすべて回収し、データを安全に削除する手順を明確に定めましょう。さらに、クラウドストレージや会社のメールアカウントに保存されているデータも確認し、不要なデータを削除したうえで退職前にアクセス権限を取り消すことが不可欠です。
データの削除により、意図的・無意識的に顧客情報が外部に流出するリスクを最小限に抑えることができます。
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従業員が注意すべきポイント
情報漏えいの加害者にならないために、従業員個人が意識すべき事項も重要です。
顧客情報を私的に保存しない
会社の許可なくUSBやクラウドストレージに保存する行為は即違反です。仮に善意であっても法的リスクから免れません。
転職先で前職の顧客情報を使わない
新天地で活用したいという気持ちは分かりますが、それは「営業秘密の不正利用」であり違法行為となります。
退職時にデータを完全削除する
会社の端末を返却するだけでなく、私用PCやスマホからもデータを削除しましょう。
- Finderまたはエクスプローラーで関連ファイルを検索
- 外部ストレージ(USB、Dropboxなど)を確認
- データ削除後、ごみ箱やバックアップからも消去
秘密保持契約を理解する
契約書の条項を読み込んでおくことで、思わぬ違反を防ぐことができます。不明点があれば労務・法務担当に事前に確認しましょう。
よくある質問
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