社内不正・労働問題

転職先に顧客情報を持ち出した社員に対する企業の対応と予防策

近年、転職活動の活発化に伴い、退職者や転職者による情報持ち出しトラブルが増加しています。特に、退職後に自社商品に酷似した商品を販売したり、スパムメールやマルウェアが増加するケースが報告されています。

USBメモリやスマートフォンを使ったデータ持ち出しに加え、遠隔操作アプリを使ったサイバー犯罪も発生。顧客情報が流出すると、同業他社で不正利用されたり、ダークウェブで販売されることで、企業の信用や利益に重大な影響を与えます

本記事では、退職者や転職者による顧客情報持ち出しが発覚した際に企業が取るべき対応方法と再発防止のための予防策について解説します。

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退職・転職した社員が顧客情報を持ち出すことは違法

退職または転職した社員が顧客情報を無断で持ち出す行為は違法です。

会社の機密情報や顧客情報、営業秘密などを無断で持ち出し、他の企業に売る、または競争優位を得るために使用する場合、不正競争防止法に違反する可能性があります。

もし情報が不正に持ち出され、企業に損害を与えた場合、民事訴訟を通じて損害賠償を請求することができます。

不正競争防止法上の違法条件

不正競争防止法は、企業間の公正な競争を守るため、商標や商品の模倣、営業秘密の不正利用、信用棄損などの不正競争行為を防止し、損害賠償を規定しています

2024年4月から施行される改正不正競争防止法では、営業秘密保護が強化されます。退職や転職する社員が顧客情報を持ち出して、営業秘密として認められる条件を満たしていれば、不正競争防止法に基づく違法行為となります。

営業秘密として認められる情報は、以下の3つの要件を満たす必要があります。

営業秘密の3要件
  • 秘密管理性
    情報が限られた人物しか閲覧できないように管理されていること
  • 有用性
    有用な営業上又は技術上の情報であること
  • 非公知性
    情報が公然と知られていないこと

顧客情報のリストや自社製品の図面などは、営業秘密に該当する代表的な例です。

民事損害賠償請求

持ち出された情報が企業に損害を与えた場合、企業は民事訴訟を通じて損害賠償を請求できます。

また、次のような民事上の措置も取ることができます。

民事上の措置
  1. 差止請求
    不正競争によって営業上の利益を侵害された、または侵害されるおそれがある者は、侵害者に対して以下の請求を行うことができます。

    • 侵害行為の停止または予防
    • 侵害行為を組成した物の廃棄
    • 侵害行為に供した設備の除却
    • その他、侵害の停止または予防に必要な措置
  2. 損害賠償請求
    故意または過失によって不正競争を行い、他人の営業上の利益を侵害した者に対して、損害賠償を請求できます。
  3. 信用回復措置請求
    不正競争行為によって営業上の信用を害された場合、行為者に対して信用回復に必要な措置を求めることができます。

不正競争防止法に基づく刑事罰

不正競争防止法に違反した場合、以下のような刑事罰が科される可能性があります。

刑事上の措置
  1. 営業秘密侵害罪
    • 個人:最大10年の懲役または2,000万円以下の罰金(海外使用等の場合は3,000万円以下)、またはその両方
    • 法人:最大5億円の罰金(海外使用等の場合は最大10億円)

顧客情報の持ち出しが発覚した場合、企業が取るべき対応

顧客情報の持ち出しが発覚した場合、企業は迅速かつ慎重に対応する必要があります。

警察に相談する前に、まず適切な機関への報告と自社内での調査・証拠収集を行いましょう。警察は民事不介入の原則に基づき、現行犯以外では被害届が必要です。

また、被害届が受理されても他の緊急案件が優先されるため、証拠収集を早期に開始することが重要です。

個人情報保護委員会への報告

2022年4月に改正個人情報保護法が施行され、以下の情報が漏洩した場合、企業は個人情報保護委員会に2回の報告を行い、本人への通知も義務付けられています。

報告が必要な内容
  • 要配慮個人情報が含まれる事態
  • 財産的被害が生じるおそれがある事態
  • 不正が目的をもって行われた漏えい等が発生した事態
  • 1000人以上の情報を漏えい等が発生した事態

情報漏洩が発覚してから3~5日以内に、情報流出の経緯や被害状況を報告する必要があります。

また、発覚から30日以内に詳細な原因調査結果を報告する義務があります。

漏えいした情報の拡散状況や内容について調査する

顧客情報の漏洩が発覚した場合、速やかに以下の内容を調査することが重要です。調査内容を明確にすることで、漏洩の範囲や影響を把握し、適切な対応が取れるようになります。

調査すべき内容
  • 漏えいした情報の内容
  • 漏えいした個人情報の人数
  • 漏えいした情報の拡散状況
  • 情報漏えいが発生した経緯
  • 情報持ち出しが発生した原因
  • 情報持ち出しを行った人物

以下の調査手段は社内で行うことができます。

社内で可能な調査手段
  • 関係者への事情聴取
  • 監視カメラの映像の確認
  • 社用パソコンやスマートフォンのアクセスログ調査
  • 不正アクセスの痕跡を調べる
  • 顧客情報などを撮影した写真の調査
  • メールの送信履歴・メッセージ内容の調査

社内で実施できる調査もありますが、不正アクセスの痕跡調査やアクセスログの解析には、専門的な知識が必要です。特に、パソコンやスマートフォンのデータについては、通常の方法でコピーや保存を行うと、データが簡単に改ざんや上書きされてしまい、証拠として適切に扱うことが難しくなることがあります。

証拠保全が求められる場合は、専門的な知識を持った業者に相談することが非常に重要です。専門業者は、データ改ざんを防ぎ、証拠を客観的かつ適切に保全するための手段を提供してくれるので、安心して対応を任せることができます。

社内調査が難しい場合、外部の調査会社に相談する

社内リソースが不足している場合や調査が困難な場合は、外部のフォレンジック調査会社に依頼することをお勧めします。

フォレンジック調査は、デジタルデータを適切に保全し、収集・解析を行う方法です。調査結果が記載された報告書は、裁判や警察でも証拠として使用できるため、法的対応を確実に進めることができます。

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企業の情報持ち出しの調査は専門業者に相談する

社内不正・横領・情報持ち出し・職務怠慢のような問題が発生した場合、どのような経路で、どのような情報が漏えいしたのか、被害の全容を正確に把握する必要があります。適切な調査によって原因究明を行うためにも、フォレンジック調査の専門家に相談することが重要です。

特に、法的手続きが絡むケースや被害が広範囲に及ぶ場合は、専門家の力を借りることで被害の最小化と信頼性の高い証拠の収集が可能です。

>情報漏えい時の個人情報保護委員会への報告義務とは?詳しく解説

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訴訟する時内容証明郵便を送る必要な内容

訴訟を検討する際に送る内容証明郵便には、以下の内容が必要です。

内容証明郵便に記載すべき内容
  • 持ち出した情報の詳細
  • 持ち出しの証拠
  • 損害賠償請求の内容
  • 期限と支払い方法
  • 法的措置の可能性についての警告

持ち出した情報の詳細

退職者や転職者が不正に持ち出した顧客情報や営業秘密について、どのような情報が持ち出されたのかを明確に記載します。情報の詳細を説明することで、その情報が企業にとってどれほど重要であるか、営業活動にどのように関与しているかを伝えることができます。例として、顧客名簿、契約内容、製品データなどを挙げ、情報の重要性を強調します。

持ち出しの証拠

情報の不正持ち出しが事実であることを証明する証拠を記載します。証拠としては、社内システムのログや監視カメラの映像、社内調査結果などが含まれます。証拠を明記することで、相手に不正行為が確実にあったことを強調します。

損害賠償請求の内容

持ち出された情報によって企業にどの程度の損害が生じたかを記載します。具体的な損害内容として、営業活動における競争優位性の喪失、取引先との関係悪化、金銭的損失などを挙げ、その損害額を計算して明記します。

期限と支払方法

損害賠償請求の支払い期限と支払方法を明確に記載します。例えば、「請求書送付後30日以内に全額支払い」など、具体的な期限を設けます。また、支払い方法(銀行振込、その他の支払い方法)も詳細に記載し、期限内に支払いを完了させるよう促します。

法的措置の可能性についての警告

相手が支払いに応じない場合や問題が解決しない場合、民事訴訟や刑事告訴を検討することを警告します。法的措置によりさらなる損害が発生する可能性があることを伝え、問題の深刻さを認識させます。

民事上の損害賠償の予定

内容証明郵便を送る際には、民事訴訟による損害賠償の予定を明記します。過去の民事裁判事例を引き合いに出し、同様の事案で数千万円以上の損害賠償命令が下されたことを示すことで、情報漏洩の深刻さとその結果として発生する損害賠償額を警告することができます。

刑事告訴の予告

情報持ち出しが悪質な場合、刑事告訴を行う可能性があることを内容証明郵便に記載することも重要です。顧客情報などの機密情報を不正に持ち出した場合、業務上横領罪や窃盗罪、不正競争防止法違反、背任罪などが適用されることを伝えます。実際の判例を引き合いに出して、刑事告訴の予告を行うことで、相手に法的リスクの存在を警告します。

退職・転職者による顧客情報の持ち出しを未然に防ぐための対策

退職者・転職者による顧客情報持ち出しが過去に発生した場合は、再発防止のための予防策を新たに実施する必要があります。

入社時に身元保証書の提出を義務化する

身元保証書とは、従業員が雇用契約や就業規則に違反した場合、企業に損害を与えたときに、その賠償金を従業員の身元保証人に請求できる書類です。

身元保証書があれば、従業員が不正行為を行い企業が損害を受けた場合、作成日から3年~5年間の間に、従業員に支払い能力がなくても身元保証人に賠償金を請求することができます。

従業員の入社時に身元保証書の提出を義務付け、身元保証人の署名捺印を求めることで、万が一の不正行為による経済的損失を補填できるだけでなく、不正行為の抑止力としても有効です。

従業員と秘密保持契約書を締結する

秘密保持契約書とは、企業が保有する重要な情報を従業員が取り扱う際、情報を第三者に開示したり不正に使用しないことを約束する契約書です。主に企業の秘密情報を守るために交わされますが、従業員の入退社時にも必ず締結することが重要です。

秘密保持契約書を締結する際には、以下のポイントを明確に記載しておくと、後々のトラブルを防止することができます。

秘密保持契約書のポイント
  • 秘密情報の内容や期間を明確にする
  • 情報の公開範囲を明確に定める
  • 秘密情報の使用範囲を明確に定める
  • 情報の廃棄方法や返還方法について明確にする

秘密保持契約書を締結することで、従業員が企業の秘密情報を不正に持ち出すリスクを減らし、企業の機密を守るための重要な措置となります。

顧客情報・顧客名簿の取り扱い方法を就業規則に明記する

企業内で情報持ち出しが発生する原因の一つとして、社内での情報取り扱いに関する規則が曖昧であることが挙げられます。これを防ぐためには、顧客情報や名簿の取り扱い方法を就業規則に明記することが重要です。

具体的に、以下の内容を規則に追加することを検討しましょう。

就業規則に明記すべき内容
  • 顧客情報や顧客名簿の社外持ち出しの禁止
  • 顧客情報や顧客名簿のコピーやスキャン、撮影の禁止
  • 顧客情報や顧客名簿の私用のデバイスへの保存の禁止
  • 顧客情報や顧客名簿の廃棄方法
  • 顧客情報や顧客名簿の取り扱い規定を破った者への罰則

また、顧客情報や名簿といった機密情報の取り扱いについて、紙媒体と電子データの両方を想定した規定を作成しておくことが重要です。

紙媒体の場合
  • 重要機密文書には「㊙」などの表示を付ける
  • 顧客名簿などの重要書類は金庫や立ち入り制限区域で保管する
電子データの場合
  • 機密情報を含む電子ファイルやドキュメント名には「秘密」「重要」などの識別を明記
  • 機密情報が保存されている外付けHDDやUSBメモリなどの記録媒体に「㊙」などを記入
  • 機密情報のファイルやフォルダにパスワードを設定する

規定を明記することで、機密情報であることを明確に示し、規則の認識不足による情報持ち出しを未然に防ぐことができます。

企業のデータや外部機器は全て返却または削除する

顧客情報の持ち出しを防ぐためには、退職者や転職者に対して、会社のデータや外部機器の返却・削除を徹底することが非常に重要です。

退職する社員が使用していた社用パソコン、外付けハードディスク、USBメモリなどの外部機器をすべて回収し、データを安全に削除する手順を明確に定めましょう。さらに、クラウドストレージや会社のメールアカウントに保存されているデータも確認し、不要なデータを削除したうえで退職前にアクセス権限を取り消すことが不可欠です。

データの削除により、意図的・無意識的に顧客情報が外部に流出するリスクを最小限に抑えることができます。

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もちろん可能です。お客様の重要なデータをお取り扱いするにあたり、当社では機密保持誓約書ををお渡しし、機器やデータの取り扱いについても徹底管理を行っております。また当社では、プライバシーの保護を最優先に考えており、情報セキュリティの国際規格(ISO24001)およびPマークも取得しています。法人様、個人様に関わらず、匿名での相談も受け付けておりますので、安心してご相談ください。

この記事を書いた人

デジタルデータフォレンジックエンジニア

デジタルデータフォレンジック
エンジニア

累計ご相談件数39,451件以上のフォレンジックサービス「デジタルデータフォレンジック」にて、サイバー攻撃や社内不正行為などインシデント調査・解析作業を行う専門チーム。その技術力は各方面でも高く評価されており、在京キー局による取材実績や、警察表彰実績も多数。

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